節約・ライフプラン

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達人の視点

第11回:老後の生活と土地有効活用

日本では、高度経済成長以来、数十年続いてきた常識が大幅に変わりつつあります。経済が右肩上がりの時代であれば実現できた以下のような常識が、ここ十年で根底から覆されてきました。

給料は勤続年数に応じて上がる ⇒ 成果主義導入により、給料が減る可能性もある
一生同じ会社で働くことができる ⇒ リストラされる可能性がある
老後は年金をもらって悠々自適 ⇒ 年金制度により、支給される額が減る方向に

これに加えて、土地を持っていれば必ず値上がりするという常識も過去のものとなりました。このような状況の下で、老後に備えることを考えたときに、不動産をどのように考えればよいのでしょうか。最近では、「家を買う」「賃貸に住む」という以外に、第3の選択肢を取る人も増えてきました。では、いったいそれはどのような選択肢なのでしょうか。今回は老後の生活と土地の有効活用という観点からお話しをしたいと思います。

「土地を借りて家を建てる、という発想」

平成4年に「借地借家法」が改正されました。 それまでは、例えば土地を借りて家を建てた場合には、土地の借り手保護の観点から、地主の都合で土地を返却してもらうことは不可能でした。しかしこの法律改正により、お互いの都合に合わせて柔軟に貸し借りの取り決めをできるようになり、地主も土地を貸しやすくなりました。

一方で、「土地を借りて家を建てる」という発想は、“家は自分のものなのに土地は借りもの”ということで中途半端な印象があり、利用者は依然としてそれほど多くはありません。しかしながらメリットは大きいのです。その仕組みを見てみましょう。

1.一般定期借地権
老後を考えたときに、賃貸か持ち家かで悩む人も多いのではないでしょうか。持ち家であれば自由に家を建てることができますが、土地の価格と家の建設費を合わせると値段は高くなります。それに対して、賃貸であれば短い期間であれば有利ですが、長く住むとトータルでは大きな額になりますし、また家を好きなように設計あるいはリフォームをする、などというわけにもいきません。そこで、「価格を低く抑えながら、自分の好きな家を建てられる」という定期借地権が有利になります。借地期間を50年以上のある期間に取り決め、満了すると土地を返却する必要のある「一般定期借地権」を利用した場合、費用面ではどれくらい違うのかを見てみましょう。

上の表は、土地3,000万円、建物2,000万円の物件を購入した場合と、一般定期借地権の上に建築した場合の35年間での比較です。保証金とは、土地を借りる際に地主に支払うもので、契約が終了した時点で返還されるものであり、ここでは土地の価格の20%の600万円を保証金として計算します。それぞれ頭金1,000万円、ローン金利3.5%を35年固定、地代を毎月5万円とした場合、土地を購入した場合と比較して、なんと2,283万円もの差が出ます。(ちなみに保証金の600万円は50年間経過した後に返還されることになります。)

住んでいる分には土地を購入した場合と借りた場合での違いは特にありません。約2,300万円があれば、老後も含めかなり余裕のあるプランを描くことができるのではないでしょうか。

2.つくば方式
先ほどの一般定期借地権の場合は、契約期間が終了すると更地にして地主に返却する必要があります。この場合、長生きをすればするほど、老後の不安は大きくなるというデメリットがあります。この問題を解消するために「つくば方式」というものが考え出されました。

この制度は、30年以上経過後に建物を地主が買い取ることのできる「建物譲渡特約付き定期借地権」を応用したもので、契約が満了した後も住み続けることができ、この方法は旧建設省建築研究所(茨城県つくば市)と民間企業が開発した方式であることから通称「つくば方式」といわれています。例えば30年の定期借地権の上に建物を建てた場合、30年後には地主に土地を返却しなければなりませんが、建物自体は土地の賃借人のものであるため、建物を返却時に地主に買い取ってもらうという契約にするものです。具体的には以下のようになります。

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上の図は、土地3,000万円、建物2,000万円の物件をつくば方式で契約した場合の例です。 保証金を600万円とし、頭金600万円、ローン2000万円、ローン金利3.5%(30年固定)、地代を毎月5万円とした場合、最初の30年は住宅ローンの9万円と地代5万円を合わせた毎月14万円を支払います。そして、30年経過した後に土地を返却しなければなりませんが、その際はまず保証金が600万円返還されます。また、契約終了時に建物を地主が買い取る契約となっているため、建物が新築時の時価の1/5とすると、買い取り価格は400万円。合計で1,000万円を地主から受取る権利ができます。通常は1,000万円のようなまとまったお金を地主が用意することは難しいため、地主は2.8万円/月を30年間にわたり、分割で支払うことにします。

一方、30年経過した後に、今までの借地人だった人は、今度は借家人として住みます。家賃を仮に8万円とすると、分割の2.8万円を差し引いた5.2万円/月で次の30年間もそれまでと同じように住み続けることができ、変わったことと言えば、立場が借地人から借家人になったことだけです。

この制度は貸す側の方にもメリットはあります。かつては、土地を手放すということは許されないこととされてきました。そのため、一度自分の土地を貸してしまうと自分の手元に戻ってこないというリスクがあるため、そのまま土地として持っておくしかありませんでした。その点、この制度であれば契約期間が終了すれば土地は戻りますので、もし今現在使うことがない土地であれば、有効活用して収入も得られるということでメリットは大きいのです。

住みながらにしてお金を得る方法

以上の2例では、土地を持っていない人が借地人となることで価格を抑える方法をご紹介しました。それでは、土地を持っている人はどのような活用方法があるのでしょうか。特に近年では、年金の受取総額が減少傾向にあり、老後への貯蓄、或いは毎月得られる収入を求める声が大きくなっています。そこで、「住みながらにしてお金を得られる方法」の例をご紹介いたします。

1.賃貸併用住宅
自分の敷地に二世帯住宅を建てるという方法がこれにあたります。二世帯住宅というと、親子二世帯で住むというのが一般的ですが、隣りに住む人を子供世帯に限定せず、他人に賃貸として貸す形態も近年は増加傾向にあります。二世帯住宅であれば、家を2軒建てるよりも安く済みますし、最近では玄関を分けて建てることで、普段生活をしていても顔を常に合わせるということなく、プライバシーが確保されるように設計することも可能です。

ただ家に住んでいるだけの場合は収入を得ることはできませんが、自分の住んでいる空間の一部を人に貸すことによって、家に稼いでもらおうという発想です。この賃貸部分は、子供と一緒に住みたくなったら子供に提供しても良いですし、親世帯が亡くなった後は、今度は子供世帯が他人に貸して、賃貸収入を得ることも可能であり、親世帯にとっても子供世帯にとってもこの土地から収入を得ることができるというメリットがあります。

2.リバースモーゲージ
持ち家はあるのだが毎月の収入が少なく、どうしても定期的にお金が必要になる、という方には、リバースモーゲージという方法が考えられます。この方法は、持ち家を担保にして、自治体や金融機関から定期的にお金を受取り、死亡した際に担保物件とそれまで借りたお金を一括返済するというものです。

この制度は、住みながらにして「収入を得られる」わけではなく、「自宅を担保にお金を借りる」という形態ですが、住む場所を変えることなく定期的にお金を受取ることができるという点では大きなメリットです。

ただし融資額が限度額に近づくと、それ以上融資してもらえない可能性があります。したがって、長生きするとその分生活費がかかるため、老後の不安の要因になるかもしれません。また、持ち家の担保価値が下がる場合もあり、将来にわたって確実に決まった額が受取れるという保証はありません。またリバースモーゲージは全ての物件が対象となるわけではなく、金融機関などによって、ある一定の物件価値以上のものに限定する等の制限があるので、詳しくは取扱金融機関や自治体で聞いてみる必要があります。

では、参考にどれくらいのお金をもらえるのでしょうか。

あくまで一例ですが、70歳の男性が評価額4,000万円の物件を担保に借りた場合、融資限度額を物件価値の70%(つまり2,800万円)、年利3.5%で15年間毎月受取るとすると、15年間にわたって毎月受取れる額は約12万円となります。

土地を持っていながら収入が少なく、生活が苦しいという方は一つの選択肢として検討すると良いかもしれません。

土地の有効活用がカギ

「土地や家を貸して収入を得る」という考え方は日本にも昔からあります。 しかしながら、土地が値上がりし続ける時代は、「持っている土地をあとで売れば、必ず儲かる」ので、土地の活用を考える必要など無かったのです。 しかし、現在は「土地が必ず値上がりする」という常識が通用しない時代に突入し、ただ住むだけではお金を生み出しません。むしろ、固定資産税などがかかり、活用しなければ家計上はマイナスに影響してしまうのです。

また、逆に土地を持っていない人は、土地を活用して貸したいという人がもっと出てくれば、これからの時代はあえて土地を購入する必要はないかもしれません。年金問題や医療費値上げの検討など、老後の生活に不安を覚える人も多くなっており、老後を過ごすにあたり、老後も含めてお金のプランを立てることはますます重要になってきています。

これからの時代は、土地を持っていない人は「うまく借りる」コツを、そして土地を持っている人は「うまく貸す」コツを持つことが、老後の将来設計を考える際に重要になってくるのではないでしょうか。


執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。
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