第12回:神様がくれたご褒美~8万時間の“自由時間”を楽しむコツ


退職をした後、老後にどれぐらいの自由時間があるかを皆様は考えたことがあるでしょうか。2006年の簡易生命表によると、平均寿命は男性が79歳、女性が85歳ですから、60歳以降を「老後」とすると約20年という時間があり、老後の1日あたりの自由時間を食事や睡眠の時間などを除いた「11時間」として計算すると、約8万時間の自由時間があるのです。サラリーマンが20歳から60歳まで働いた場合、1年に働く労働時間を2000時間として計算すると総労働時間が同じく8万時間ですから、老後の自由時間は40年間サラリーマンが働いた時間にも匹敵するのです

サラリーマンの総労働時間=8万時間、老後の自由時間=8万時間

退職をした人は「余生をどう過ごすか」が重要なテーマとなりますが、「余生」と呼ぶにはあまりに膨大な自由時間なのです。この老後の時間を楽しんで生きることができるかどうかが、人生を楽しく生きるうえでとても大切であることは言うまでもありません。今回は、老後の自由時間をいかに有効に使うかということについて考えてみたいと思います。

プランのない老後は悲劇が待っている

老後の時間が8万時間もあるわけですから、その時間を有意義に過ごすためには、それなりの準備が必要であり、退職後のプランをしっかり立てないと、そこから一生退屈な日々を送ることになりかねません。例えば仕事だけに全てを打ち込み、老後のことを考えてこなかった人が会社を退職すると、生きがいを失ってしまった状態になり、何をして良いのかわからなくなるケースがあります。この場合、物忘れがひどくなる、うつ病になってしまう、あるいはいざ退職して家庭に入っても居場所がなく、また家族とどう会話してよいかわからない、などという人も少なくありません。また、このことが原因で熟年離婚につながるケースも増えています。このように老後プランのない生活は悲劇を招く恐れがあり、手遅れになる前に、老後の準備を進めておくことが重要なのです。

老後に準備すべきものは何か

では、老後の準備というと何を準備すれば良いのでしょうか。よく「老後の準備」と聞くと、お金だけが語られますが、それだけでは不十分なのです。老後は以下の3つが揃って初めて楽しい老後を送ることができます。

1. お金
2. 健康
3. 生きがい

上の3つ全てを手に入れるためには、60歳からでは間に合いません。このうちお金に関しては、ほとんどの人が60歳になる前の早い段階から準備しますが、健康・生きがいについては後回しにしてしまう人が多いのが実情であり、この2つについてもお金と同様、早い段階での準備が楽しい老後を送る上でとても大事なことなのです。まず健康面では、食事と運動に気を配る必要があります。喫煙・飲酒・カロリーの取りすぎは、いずれも体に負担となって蓄積していくため、生活習慣病になる確率も高くなります。食事に気をつけながら、定期的な運動を心がけると良いでしょう。普段運動する機会がないという人は、毎日の通勤で1駅分遠くから歩くなどを心がけてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、生活習慣病が不安だからという理由で医療保険に加入される方がいらっしゃいますが、この場合も備えることができるのはあくまでお金の側面だけです。一度病気になってしまうと老後の生活を楽しむための貴重な時間が失われてしまいますし、家族や友人などにも迷惑がかかることにもなってしまいます。本当に生活習慣病の不安を解消するのであれば、本来は「病気になったときのお金の備え」よりも、「病気にならないための備え」を考えるべきであり、せっかく医療保険に加入しても生活習慣を改めなければ楽しい老後を送ることはできなくなってしまいます。お金の心配ももちろん大事ですが、喫煙・飲酒・カロリーの取りすぎを控え、運動を定期的に行うことも忘れないように心がけましょう。

3つ目の生きがいは、20年の老後のプランを支える中心といえるものです。この生きがいについては人それぞれであり、ある人にとっては趣味であり、またある人にとってはボランティア活動かもしれません。しかし、趣味にしてもボランティア活動にしても、60歳になってからいきなり始めても簡単に身につくものではなく、最初のうちは気のおけない仲間に出会うまでに時間がかかるかもしれません。またどんな活動でも本当の面白さ、奥深さを知るためにはある程度時間をかけて、知識を身につける、あるいはスキルレベルを上げるという努力が必要となるでしょう。ただ、このことは裏を返せばある程度自分が上達し、少しでもその活動を他の人に伝える、あるいは教えることができるレベルになれば、仲間からも頼りにされるようになり、自分の活動にも誇りを持つことができるでしょう。そのためにも退職前からしっかりと準備をしておくことが大切です。

老後を楽しむコツとは

では、老後のプランをどのような形で立てると良いでしょうか。まず、プランを立てる上で重要なことは、「誰とどのように過ごすか」ということについて考えることです。例えば夫婦や友人と田舎に住む、海外に住む、あるいは子供と一緒に住む、など、具体的にイメージすると良いでしょう。せっかく老後のプランをあれこれ考えても、自分のパートナーや仲間と意見が違うと計画は台無しになりかねません。老後は田舎に暮らしたいと思って普段から本や雑誌で勉強していたのに、いざ退職して田舎暮らしを妻に打ちあけると、「田舎暮らしはイヤ。都心で便利な生活を続けたい。」といわれてしまえば水の泡です。そのためにも、まずは“誰とどこで過ごしたいか”を考え、そしてパートナーと事前にじっくり話し合いをしましょう。

その上で次に、20年という時間を真ん中で区切って、60~70歳のまでの「前半プラン」と70~80歳の「後半プラン」プランに分けて考えることを私はお勧めします。

まず、60~70歳の「前半プラン」は、老後とはいえどもまだまだ体が自由に動く人が多いでしょう。スポーツや旅行などのアクティブな活動を楽しむことができます。この時期はなるべく外に出かけて仲間とスポーツをしたり、あるいは夫婦で楽しめるような場所やお気に入りのお店などを見つけたりして、自分の大切にしている仲間や夫婦とで語り合い、楽しみを共有します。

70~80歳の「後半プラン」になると、前半プランのときと比べて、だんだん活動できる範囲も狭くなってきます。そこで、前半プランで共有した思い出やこれまでの人生の思い出などを振り返りながら、悠々自適に過ごします。先ほど、「誰とどのように過ごすかが重要」と申し上げましたが、特に後半プランではこの点が重要になってきます。内閣府「国民生活に関する世論調査」から「老後は誰と暮らしたいか」というアンケートにおいて面白いデータがありましたのでご紹介します。

内閣府「国民生活に関する世論調査」から「老後は誰と暮らしたいか」というアンケートにおいて面白いデータがありましたのでご紹介します。

老後は誰と暮らしたいか

このデータを見ると、若い頃は「子供と別々に暮らしたい」と思っていても、年齢とともに「子供と一緒に暮らしたい」と思うようになり、70代になると60%を超えることがわかります。プランを立てる時点では、「子供と一緒に暮らしたい」とは思わなくても、歳をとってくると不安なことも多くなり、いざというときに家族はやっぱり頼りになるものなのです。このように考えると、普段からの子供とのコミュニケーションも重要なのかもしれません。

老後の20年は神様がくれたご褒美

老後の20年間は、人生を楽しむ最大のチャンスです。20歳~60歳の総労働時間と同じだけの時間があり、しかも仕事も子育ても考えなくて良い、神様がこれまで長い間一生懸命に生きてきた人生のご褒美として用意してくれたプレゼントなのです。ただしこの膨大な自由時間を満喫するためには、60歳から準備をしたのではとても間に合いません。「お金・健康・生きがい」を早い段階から準備できるよう、普段から夫婦や子供、仲間とのコミュニケーションを大事にしながらしっかりしたプランを事前に立てることが、充実した老後を送る上でとても大事なことなのではないでしょうか。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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