たしかに、金利だけでみると固定期間選択型3年ものは各種のキャンペーン金利できわめて低い水準になっています。主要な都市銀行では0.95%〜1.00%の破格の金利で利用できます。高橋さんの場合も、この0.95%のローンを利用されたわけですね。まずは、そのローンにどれくらいのリスクがあるのかをみておきましょう。
もともと固定期間3年ものの店頭表示金利は2.20%で、これがキャンペーン金利として0.95%になっているのに過ぎません。したがって、
3年後の金利が現在の金利水準と変わらないとしても、店頭表示金利からの優遇幅は0.20%に縮小され、
2.00%の金利が適用されます。
この場合の3年後の増額率は9.0%です。3年というタームでみれば、金利アップの可能性も決して低くはありません。
仮に金利が1%上がっていたときには返済額が2割近くの増額になり、
2%アップの場合には3割近い増額になってしまいます。
それでも高橋さんのローンは借入額が2000万円で、返済期間も20年と比較的短くなっているので、この増額幅にとどまっているという点を知っておいてください。借入額が多い人だと、30年返済、35年返済を利用するのが一般的です。そうなると、この金利アップによるリスクはさらに大きくなります。
ケースによって、金利2%のアップでも、3年後の増額幅が4割、5割に達することもあるのです。このため、昨年末には全国銀行協会では、こうした返済額の増額リスクに関しては、ローン契約時に必ずリスクを説明した文書を配布し、確実に説明することを申し合わせています。銀行自身もこのリスクについて消費者に対する説明責任があることを、ようやく自覚し始めたということができそうです。
このリスクをできるだけ小さくするためには、
早め早めに繰り上げ返済していくしかありません。少しでも早くローン残高を減らしておけば、金利上昇による増額幅を小さくすることができます。高橋さんは、今後は家計を切り詰めて年間200万円の貯蓄を目標にしているそうですから、その200万円を毎年繰り上げ返済していけば、3年後のローン残高は約1106万円に減少します。そうすれば、
仮に金利が1%上がったとしても増額率を11%ほどに減らすことができます。
現状のままでは18%のアップですから、かなりの安心感が出てきます。その上で、
3年後からはできるだけ固定期間の長いローンにするのが安心です。毎年約200万円の繰り上げ返済を行っていれば、3年後のローン残高は約1106万円ですから、この段階で固定期間選択型10年ものに切り換えるのが無難です。現在の時点の金利ですが、多くの銀行で3.50%ですが、キャンペーン金利で2.00%〜2.20%程度の金利を適用しているところもあります。現在利用している銀行で、そのキャンペーンの適用を受けるのが難しい場合には、他の銀行への借り換えを考えてもいいでしょう。10年間2.00%〜2.20%程度にフィックスできれば、もうあとはあれこれと悩む必要はないと思います。
ただ、繰り上げ返済には手数料がかかります。
変動金利型は原則的に3150円の手数料ですみますが、
固定期間選択型は銀行によって3万1500円から5万2500円程度になっています。高橋さんが利用されている銀行では、100万円以上1000万円未満の繰り上げ返済には1回当たり3万1500円の手数料がかかります。
毎年1回約200万円ずつ3回にわたって繰り上げ返済すると、都合約92万円の利息をカットできますが、3回分の手数料を差し引くと、実質的にトクする金額は約83万円にダウンします。これに対して、
3年後に約600万円を繰り上げ返済するケースでは、利息をカットできるのは約86万円と若干少なくなりますが、手数料は1回分だけですむので、差し引きしてトクする金額は約83万円とほぼ同じ結果になってしまいます。であれば、毎年こまめに繰り上げ返済するよりは、一定額を手元に残しておきながら、3年後にまとめて繰り上げ返済するほうが安心という考え方もできます。高橋さんが利用されている銀行だと、
固定期間選択型でも100万円未満の繰り上げ返済であれば、手数料は5250円ですみます。それならどうか、毎年約100万円ずつ繰り上げ返済する場合と、3年後に約300万円を繰り上げ返済するケースを試算してみましたが、やはりさほどの違いはないようです。
これは、あくまでも高橋さんの場合の試算結果です。借り入れている金額や返済期間によっては、それでも毎年繰り上げ返済したほうがトクになる場合が少なくありませんし、銀行によって繰り上げ返済手数料が異なっていることもあります。他の皆さんはそうした点を細かくチェックして、実際にどうするのがいいのかを判断するようにしてください。
その際考慮しておきたいのは、
金利タイプによって繰り上げ返済の手数料が異なっているという点です。変動金利型だと原則3150円ですむのですから、
3年の固定期間が終了した時点で、いったん変動金利型にして、そこで繰り上げ返済すれば3万1500円の手数料を3150円に節約できます。その後金利情勢をみながら、どのローンに切り換えるかをジックリと考えればいいわけです。銀行にもよりますが、最近は金利タイプ間の移動が自由なところも増えているので、焦る必要はありません。頭金が多く、その後もセッセと繰り上げ返済する予定の高橋さんの場合には、ローン残高が1000万円強に減っていますから、先にも触れたように他の銀行のキャンペーン商品に借り換えることも可能です。他行も含めて多くの情報を集めて適切な判断をくだしてください。

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購入価格 |
土地・建物2880万円、諸費用200万円 |
資金計画 |
自己資金1080、ローン借入額2000万円 |
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概要 |
借入残高 |
金利 |
返済期間 |
毎月返済額(円) |
返済額アップ率 |
現在のローン |
2000万円 |
0.95% |
20年 |
9万1533円 |
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何もしないときの
3年後の返済額 |
金利が現在のままで推移
した場合(2.20%から0.2%優遇) |
1724万円 |
2.00% |
17年 |
9万9739円 |
9.0%アップ |
金利が1%上がった場合
(3.20%から0.2%優遇) |
1724万円 |
3.00% |
17年 |
10万7966円 |
18.0%アップ |
金利が2%上がった場合
(3.20%から0.2%優遇) |
1724万円 |
4.00% |
17年 |
11万6587円 |
27.4%アップ |
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概要 |
短縮する返済
の回数 |
得する利息 |
手数料 |
実際にトクする金額 |
毎年約100万円繰り上げ返済した場合 |
1年後に約100万円繰り上げ返済 |
13回 |
191,705円 |
5,250円 |
186,455円 |
2年後に約102万円繰り上げ返済 |
12回 |
158,920円 |
5,250円 |
153,670円 |
3年後に約104万円繰り上げ返済 |
12回 |
140,906円 |
5,250円 |
135,656円 |
合計 |
35回 |
491,531円 |
15,750円 |
475,781円 |
3年後に約300万円繰り上げ返済した場合 |
3年後に約300万円の
繰り上げ返済 |
38回 |
474,758円 |
5,250円 |
470,531円 |
繰り上げ返済手数料との差引 |
5,250円 |
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概要 |
短縮する返済
の回数 |
得する利息 |
手数料 |
実際にトクする金額 |
毎年約200万円繰り上げ返済した場合 |
1年後に約200万円繰り上げ返済 |
26回 |
373,088円 |
31,500円 |
341,588円 |
2年後に約207万円繰り上げ返済 |
26回 |
311,825円 |
31,500円 |
280,325円 |
3年後に約205万円繰り上げ返済 |
25回 |
239,940円 |
31,500円 |
208,440円 |
合計 |
77回 |
924,853円 |
94,500円 |
830,353円 |
3年後に約610万円繰り上げ返済した場合 |
3年後に約610万円の
繰り上げ返済 |
76回 |
85,7826円 |
31,500円 |
826,326円 |
繰り上げ返済手数料との差引 |
4,027円 |
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