節約・ライフプラン

節約・ライフプラン

貯める・殖やす
伊藤さん顔写真 FP:伊藤美和

貯蓄や投資を始めてしばらくすると、誰の頭にも思い浮かぶのが1000万円という夢の数字。「1000万円お金を貯める」ということはハードル走に似ています。100万円、300万円とハードルをクリアするごとに貯まるスピードはどんどん加速していきます。この「貯める・殖やす」のコーナーでは、皆さんがハードルを楽に越え、早くゴールにたどりつけるよう、お手伝いができればと思います。何でもお気軽にご相談ください。
■ご相談者
相談者(仮名)
大坂真由さん

28歳、会社員。42歳会社員の旦那様と2人暮らしのDINKS。
年齢差の大きい夫婦の貯蓄プランをアドバイスしてください。
夫婦で年齢の差があるため、老後資金を平均より多く準備したいと考えています。また2年以内に出産をと考えていますが(子どもは1人の予定)、子どもの教育費がかかる時に夫が定年退職となるため、高校・大学の教育費も用意しておく必要があります。教育費と老後資金で、夫が定年退職するまでにいくら貯める必要があるのでしょうか?


・ 収支の状況
 収入
 手取り月収(夫) 420,000 円
 手取り月収(妻) 220,000 円
 ボーナス手取り(夫) 1,200,000 円 X年2回
 ボーナス手取り(妻) 720,000 円 X年2回
 貯蓄残高
 普通預金 3,000,000 円
 定額貯金 3,200,000 円
 養老保険 2,000,000 円
 毎月の主な支出
 住宅ローン 120,000 円
 駐車場代 10,000 円
 管理費・修繕積立費 10,000 円
 水道・光熱費 12,000 円
 食費(外食込み) 70,000 円
 貯蓄 130,000 円
(定額貯金 30,000円
通常貯金 60,000円
養老保険 40,000円)
 ボーナスのおもな支出
 住宅ローン 1,000,000 円
(500,000 円X年2回)
 貯蓄 10,000,000 円

・ マンション(平成15年3月購入・物件価格2900万円)
  • 頭金500万円
  • 住宅公庫ローン2400万円借り入れ(平成25年に返済終了予定)
    (返済は毎月12万円。ボーナス50万円×年2回)

・ 大坂さんの今後の予定
  • 平成16年 第1子誕生
  • 平成20年 車買い替え(350万円)
  • 平成27年 マンションを売却し、夫の実家を建て替えて引越し(2000万円)

・ 大坂さんのライフプラン
  • 夫は1人っ子なので持ち家と財産は1人で相続の予定。
  • 夫は65歳まで働くことが希望(定年退職は60歳)。
  • 夫の退職金は推定で3000万円ほどになりそう。
  • 妻は出産で一時的に休職するが、夫の定年退職まで(妻46歳)働き続ける予定。
  • 妻の退職金は退職年齢によりかなり差がでるので、アテにしていない。
  • 子どもの進学は、高校までは公立、大学は場合により私立と考えている。
■アドバイス
年の差夫婦のマネープランは柔軟性を第一に

奥様がまだ28歳とお若い今から、老後も見据えてマネープランをしっかり立てて暮らしていこうという姿勢には大賛成です。ただしこれからの大坂さんは、出産、育児休業、職場復帰、育児・・・とライフスタイルがどんどん変わっていきます。また奥様が60歳になるまでは32年、本価格的な老後を迎えるまでには約40年もあるので、その間には経済情勢も大きく変化していくことと思います。なのでマネープランも柔軟性を第一として、生活・経済情勢の変化ごとに見直すことが重要です。

子育てにかかるお金は「夫婦の考え方次第」

子どもの教育費にどのくらいお金をかけるかは、その家庭の価値観や教育方針で大きく差がでてきます。一般的には親は「子どもにはお金の苦労をかけたくない」と考えるものですが、終身雇用制度が崩れて実力社会となった今、子どものためになる教育はお金をかけたから得られるというものではなくなりました。もう親が教育費を全て用意する時代は終わったのではないでしょうか。ご主人様が定年退職となる頃、お子さんはまだ高校生という大坂家の場合はなおさらです。

子どものためには、お金を準備するだけではなく、自立を促す金銭教育をしていくことが大切

これからは子どもが自分で将来の目標を持ち、経済的に自立できるような環境作りと教育が大切です。親も子もお互いに経済的に自立した関係を作るためには、子どものためのお金をどこまで準備するか決めて、できる範囲で区切りをつけることが大切。お子さんが生まれたらすぐ夫婦でよく話し合って、今後どうするかを決めることをお勧めします。その上で、お子さんに早いうちから自立を促す金銭教育をしていくことが必要です。といっても難しいことではなく、将来の進路や進学費用などについて、親子でおりにふれオープンに話し合っていけばいいと思います。

教育費を貯める具体策

低金利の今は利息をあてにせず、積立元金のみで目標額をクリアできるよう積立計画を考えることが現実的です。またお子さんの進路は「基本的には公立で」とお考えのようですが、親の希望通りにいかないのが教育費の常です。高校に備えて100万円、大学入学に備えて400万円ほどというのが目標額の一つの目安です。

大坂さんの場合は共稼ぎのうちはボーナスの手取額にかなり余裕がある(夫と妻の合計で192万円×年2回)ので、教育費はお子さんが小さいうちに集中して貯めるというのも一つの手。子どもが0歳から毎月5万円、ボーナスから20万円を積み立てていくと、5年で500万円貯まります。大学4年間にかかるお金は私立文系で322万円、私立理系で423万円が平均なので(文部科学省平成13年度の平均)、一般的な進路なら十分な金額かと思います。ご主人が定年後再就職しない場合は、奥様が退職を延期したり、お子さんにも奨学金をとってもらうなど、家族全員で協力して乗り切っていきましょう。

夫との年の差が大きい妻が、豊かな老後を送りたいと希望するなら、できるだけ長く働くことが一番の対策。

貯蓄には「これだけあれば、絶対に安心して暮らせる」という明確な答え(金額)はありません。経済情勢や貨幣価値、社会保障など、世の中の情勢は常に移り変わるものだからです。またお金は貯めこむばかりだと有効な使い方を忘れてしまったり、お金以外の自助努力(趣味や生きがい、人的ネットワーク作り、健康への配慮etc)がおろそかになってしまったり、という弊害がおきやすくなります。

夫との年の差が大きい大坂さんが、豊かな老後のためにできることは、
(1)できるだけ長く収入を得る
(2)貯蓄と平行してインフレに負けない資産運用術を勉強し身につける
(3)ご主人が定年後の第2の人生を豊かにするための準備のサポートする
の3点だと思います。

生命保険文化センターの調べによると、60歳以降の男性が老後生活を不安に思う要素としては「いざという時頼れる人がいない」「友人がいない、できない」「熟年離婚」「適当な再婚相手がいない」など人間関係にかかわる項目が多くなっています。起業・趣味・ボランティアなどなど・・・リタイア後にご主人様が自分で楽しく自立した生活を送れるような生きがいを見つけ、豊かな人間関係を築くことができれば、奥様はご主人様の定年を機に退職する必要性も薄れ、ライフプランの選択肢が広がることと思います。奥様がより長く働いて収入を得るチャンスも増えることにつながるので、ぜひご主人さまの準備のサポートに協力してみて下さい。

奥様がより長く働けば、インフレ時にも有利です。運用次第である程度インフレに備えることは可能ですが、資産の分散が十分でないと資産はどんどん目減りしてしまいます。また実際問題として、一般の方がインフレに対応した資産運用することは非常に難しいですし、プロでも失敗することもあります。奥様が46歳で退職し平均寿命まで生きた場合、37年間もあります。やはり年の差のある夫婦の場合、老後のマネーリスクを減らす一番有効な対策は「奥様が一日でも長く勤めて収入を得ること」といえそうです。

老後のお金を準備するには、貯蓄と並行して、インフレに負けない資産運用を勉強しましょう。

インフレを考えると収益性を重視した商品への投資が必要ですが、収益性が高いということはリスクも伴います。リスク商品への投資金額は全体の3割を上限としましょう。ゼロ金利や株安が続く今、安全で利回りの高い投資先を見つけるのは困難ですが、運用の勉強をすぐ始めることが大切です。入門商品としては、予想配当利回り2%台の電力株や5%台の不動産投信、米ドル・ユーロMMFなどが有力候補といえるでしょう。

表に、大坂さんの貯蓄・運用プランの一例をまとめてみたので、参考にしてみて下さい。ただし資産運用や商品選びに絶対はなく、経済や金利の状況次第で対応を変えていく必要があります。プランを参考にご夫婦でよく話し合い、実際の運用を考え、定期的に見直していくことをお勧めします。

チェック! <大坂さんの資産運用・貯蓄プラン>




 ▲ INDEX 


Copyright(C) NTT IF Corporation