■アドバイス |
![]() 31歳と30歳というお若いご夫婦が老後の夢も視野にいれながら、マネープランをしっかり立てて暮らしていこうという姿勢は素晴らしいと思います。ただし佐藤さんは転勤族。もう1人お子さんを出産する予定もあります。また10年後、20年後にはご両親の介護の問題に直面するということもあるかもしれません。環境やライフスタイルがどんどん変わっていくことが予想できる佐藤家のマネープランは「柔軟性を重視」して、生活・経済情勢の変化ごとに見直していくことが重要です。 ![]() 支給額は確認しても細かいところまではじっくり見ない給与明細書ですが、実はとても重要です。マネー記事では「貯蓄は手取り月収の○%が目標」などというアドバイスをよく見かけますが、手取り月収を正確につかむことは「毎月いくら貯蓄したらいいか」「住宅ローンはいくらまでなら無理なく支払っていけるか」等、マネープランを立てる上での第1歩となります。 多くの方は給与明細の「差引支給額(口座に振り込まれる金額)=手取り月収」と考えているようですが、その金額を基準にマネープランを立てることはできません。「差引支給額」に「天引きの貯蓄金額(持ち株会を含む)」「天引きの生命保険料」「天引きの損害保険料」を加えた金額が、マネープランを立てる上で基準になる「手取り月収」ということになります。 手取り月収=差引支給額+天引き貯金額+天引き保険料 この金額をもとに、目標貯蓄金額、住宅ローンの支払額、保険料の適正な金額などを考えていきます。佐藤さんの場合22万円(差引支給額)+5万円(天引き貯蓄額合計)+2万3000円(天引き保険料合計)+3万2000円(天引きの社宅代)の合計、約33万円を手取り月収の金額として、毎月の支出を点検していきます。 ![]() 佐藤さんは「毎月の貯蓄は天引きの5万円のみ」とお考えのようですが、毎月約1万円の保険料を支払っている養老保険も貯蓄性の高い商品なので、貯蓄に含めて考えます。毎月6万円の貯蓄は手取り月収33万円の約18%にあたります。同世代の平均貯蓄率は20.8%(注1)なので、ほぼ標準額といえます。結婚4年目でこれだけ頑張っていることをまずプラス思考で考え、今後のやり繰りの励みとしてください。 (注1) 平成12年家計調査年報「世帯主が30〜34歳の家庭の平均貯蓄率。 ![]() まだ具体的ではないマイホームプランに向けての貯蓄を、財形やつみたてくん(住宅金融公庫の住宅債券)で始めているのに、必ず支出することになる教育費への備えがゼロということが気になります。まずは児童手当(毎月5000円)を教育費の積み立てに回します。加えて教育費として毎月1万1000円ずつの積み立てを開始します。すると18歳までに約307万円(高校進学資金として100万円、大学進学資金として200万円)貯めることができます。貯蓄する金額の捻出方法はアドバイス5をご参照ください。 第1子が中学校に進学するのは約10年後です。もし私立中学に進学ということであれば、ちょうどその頃満期を迎える養老保険の満期金を入学金などにあてるといいでしょう。 お子さんの教育費にどのくらいお金をかけるかは、その家庭の価値観や教育方針で大きく差がでてきます。終身雇用制度が崩れて実力社会となった今、子どものためになる教育はお金をかけたから得られるというものではなくなりました。これからは子どもが自分で将来の目標を持ち、経済的に自立できるような環境作りと教育が大切です。そうした現状をふまえて夫婦でよく話し合って、今後の進学プランをどうするかを話し合っていくことをお勧めします。お子さんが小学校に入学後は、将来の進路や進学費用などについて、お子さんも交えて親子でオープンに話し合っていくといいでしょう。職業教育にもなります。 ![]() 佐藤さんは4〜5年後に車を買い換えたいとのご希望です。デフレの今は、現金で買えるようお金を貯めていきたいもの。毎月2万円ずつ、ボーナスから5万円ずつ貯めれば、5年後までに170万円貯めることができます。170万円以上の車を買う(積み立てた貯金でお金が足りない)場合は、ローンを組まずに、他の貯蓄から現金で支払いましょう。 ![]() 転勤したことで住宅費は下がりましたが、帰省という新たな費用が発生しています。また総務庁の家計調査年報(平成13年度)によると、東京都区部の消費支出は大阪府の消費支出の平均より15%高いという統計結果となっています。帰省費用の発生に加えて、物価も割高な環境へと変わったわけですから、住宅費が下がった分の全額を貯蓄に回せないのは仕方のないことです。今は「住宅費が安くなった差額分を貯蓄に」という考えに縛られるよりも、現状の家計で「教育費」や「車の買い替え費用」を無理なく貯めていく方法について考えていく方が合理的&現実的かと思います。 ![]() お中元・お歳暮や帰省費は「交際費」として、年間予算の中でやり繰りするようにしましょう。毎月2万5000円ずつ貯めて、年間30万円の予算とします。車検代としては毎月6500円ずつ貯めていけば2年間で15万6000円貯まります。被服費は毎月2万円、ボーナスから3万円ずつ貯めて年間30万円の予算とし、ご主人のスーツ代などもそこから支払うようにしましょう。 ・ 毎月の支出の見直しプラン
各種積立をおこなっても、現在の「その他の支出」や「クレジット」の合計金額と比べると、2万1160円のゆとりが生まれます。差額の2万1160円で、雑費や医療費などをまかない、赤字がでないよう調整します。少しゆとりを持つことが、ストレスを溜めずに家計を新しい軌道にのせるコツです。小さな赤字は「携帯電話代を減らす」などの工夫も含めて解消しましょう。 交際費や被服費の30万円(合計60万円)は思い切って現在の貯蓄の中から取り分けて、今後1年の予算とします。1年後に予算が余ったら、翌年の交際費や被服費に繰り入れたり、レジャー費に回したり、やり繰りの成果として「自分へのおこづかい」としてもいいでしょう。その他の積立金は1年以内に使うお金ではないので、目標に向かって貯めていけばOKです。 交際費や被服費のために60万取り分けることは、一時的には貯蓄が減ってしまうような気がするので(実際には1年間に使う分だけ同ペースで貯めていくので、実質的に貯蓄が減るわけではありません)、勇気が必要かもしれません。でも「毎月何となくお金がなくなってしまう」というストレスから開放されますし、年間予算を立てることでやり繰りの工夫をするようになるのでトータルの費用を抑えることにもつながるハズです。「頑張れば自分へのご褒美を買ったり、レジャー費に回せる」という前向き思考なら、家族みんなにガマンを押し付けず、明るく生活しながら節約に取り組める可能性が大です! ・ ボーナスの支出の見直しプラン(55万円×年2回)
貯蓄は十分なので、残ったお金はレジャー費など、ゆとりの使い道に回しましょう。家計に余裕がなく、どうしても苦しいようなら天引き貯蓄の金額を減らして調整します。 ![]() 佐藤さんは、天引き貯金とつみたてくんの合計で、年間130万円のペースで貯金をしています(養老保険を除く)。このペースが60歳まで続けば、元本だけで3770万円貯めることができます。また退職時には退職金が入ることも考えれば、老後は悠々自適です。老後はご主人様といろいろなところに旅行に行くのが夢という佐藤さん。余暇活動に要する費用の平均額は図の通りです。ご参照ください。 佐藤さんが転勤族であること、そしてデフレで不動産価格が下がっていていることを考えると、当面マイホームを購入することは得策とは思えません。とりあえず今のペースで貯蓄を続けて、生活や経済情勢の変化ごとにマネープランを見直していってはいかがでしょうか。 ・余暇活動の費用の平均額(上位5種目)
(平成12年度・余暇開発センター調べ)
|
![]() |
|
![]() |