■アドバイス |
![]() ![]() 結婚1年にも満たない若奥様の南さんですが、いろいろ模索しながらやり繰りを頑張っているご様子が、家計簿から伝わってきます。25歳同士の新婚家庭だというのに、将来を見据えて貯蓄に励んでいる姿勢には大賛成です。 ライフプラン通りとなれば、これから数年間は出産、奥様の退職、再就職と生活環境が次々と変わっていく時期となりますが、今の調子でやり繰りしていけるなら、大きな心配はないと思います。 ![]() 出産を控えている家庭の場合は、身の丈に合った暮らしを心がけ、ご主人の月収の範囲で赤字を出さないことが重要です。奥様が退職した時に備えて「必要最小限の生活費」を手取り月収に収めながら、やり繰りしていくことが最優先課題となります。 今の南さんの家計はその点をすでにクリアできています。現在は毎月11万円の貯蓄ができているので、もし奥様がバイトを辞めても4万円ほどの余裕があります。育児費の出費が1万円増えても、3万円は貯蓄することができるでしょう。 20〜30代で住宅ローンを返済しているご家庭の平均貯蓄率は15〜19%ですが、子どものいる専業主婦世帯では手取り月収の10%以上貯めることができていれば◎です。 <毎月の支出の分類>
![]() 南さんの貯蓄ポリシーは「無駄なお金は1円でも節約し、地道にコツコツと確実に貯蓄を増やしていきたい」とのこと。そんな南さんにお勧めなのが「まとめ払い」の活用。南家の年間保険料はトータルで26万4000円ほど。もしまとめ払いすることにより4%保険料を節約できれば、年間1万560円のトクになります。これは現在、大手都銀の普通預金に10億5600万円を1年預けた場合の利子の額に匹敵します!早速加入している保険会社に年払い保険料の試算を依頼し、支払方法の変更を検討してみてはいかがでしょうか。 ![]() ![]() 年間マネー予定表で、臨時支出を管理していけば、不意に交際費がかさんだ時や家電製品が壊れた時などに慌てずにすみますし、生活を楽しみながら節約を続けることができます。「臨時支出」とは、毎月コンスタントにかかる生活費ではなく、不定期な支出のこと。 臨時支出に月単位で対応していると、貯蓄のペースが崩れるもととなります。南さんは毎月5000円ずつを積み立てていて、その中から計画的に交際費を支出している点がすでに◎。さらに他の臨時支出についても年間マネー予定表でチェックして、お金の手当てを考え、備えを万全にしていってはいかがでしょうか。 ![]() ![]() ![]() 南さんは預金の全額が普通預金。堅実といえますが、長期のライフプランを見据えながらもっと効率よくお金を増やしていくには、お金の使い道・使う時期をはっきりさせることが大切です。大きく分けて(1)イザに備えるお金、(2)夢をかなえるお金、(3)老後に備えるお金、(4)投資の勉強のためのお金の4つを意識して預け分けを考えてみましょう。「預け分け」といっても急にいろいろな金融商品に投資しなさいという意味ではありません。最初は普通預金を目的別に4つに分けることからスタートしてもOKです。 本来は(2)の夢をかなえるお金を最優先で考えたいところですが、不況や低金利、社会保険料・医療保険の自己負担が増えている今は、まず(1)の確保が必要です。毎月必要な生活費の6か月分(南さんの場合は150万円)をイザという時のための貯金とします。また「いつ子どもができるかわからない」ということなので、出産のためには50万円ほど確保しておきましょう。 少子化で将来的に年金の削減が現実となりつつある現在は(3)の重要性も増しています。また老後用に貯めたお金や退職金を自己責任で守り有効活用できるかどうかは、運用の知識と経験の差にかかってくることを考えると、少額でもいいから(4)にもお金を振り分けていくことも大切かと思います。 目的別の貯金というと「住宅の頭金」「車の買い換え用の積立」「海外旅行用の貯金」など(2)にばかりお金が集中しがちですが、優先順位を考えながら(1)、(3)、(4)にも冷静にお金を振り分けられるかどうかが、穏やかで豊かな老後を迎えられるかどうかの分かれ道となりそうです。 <目的別・金融商品選びのポイント>
![]() もしもの時のために150万円、出産用に50万円を確保すると、合計額で200万円。トータルの貯蓄額が210万円の南さんが今後も堅実に家計運営をしていくつもりなら、現在車の頭金に回すことのできるお金はありません。ローンで車を購入した場合の返済の試算をしてみました。 <ローン返済の試算(1):頭金140万円・ローン175万円/5年ローン>
<ローン返済の試算(2):315万円の5年ローン>
出産をして奥様の収入(月7万円)がなくなると、毎月の貯金は11万円→4万円にペースダウンします。そこからローンの支払い(頭金を入れる場合/月3万円ほど)を差し引くと、残りは1万円ほどとなります。維持費(自動車保険料・ガソリン代・税金・車検代など)がアップし、育児費の出費もかかるようになると、毎月の収支は赤字になります。現在の家計自体に大きな無駄がないことを考えると、ローンを組んでいるうちに出産・退職となると家計は一気に大ピンチになる可能性が大です。頭金を入れないでローンを組めば毎月2〜3万円は確実に赤字になるでしょう。 5年間で支払う金利の合計額も確認してください。「無駄なお金は1円でも節約し、コツコツ確実に貯蓄を増やしていきたい」という南さん本来の健全なポリシーとは相いれない無駄な出費です。諸状況を考慮すると、いまローンで車を買うことはお勧めできません。 「でもやはり今車が欲しい」ということでしたら、出産はローン返済後まで待った方がいいと思います。共稼ぎを続けながら2〜3年でローンを繰り上げ返済しましょう。そして次の車はお金を貯めてから現金で買うように資金計画をたてましょう。 「車も赤ちゃんもどちらも早く欲しい」なら、出産後も奥様が仕事を続けていきましょう。ただし保育園代、育児費、自動車ローンの返済、食費や光熱費のアップ分、自動車維持費の増加分を差し引くと「貯蓄は2〜3万円できればいい方」という収支になる可能性が大です。また出産後の南さんや赤ちゃんの体調次第では、復帰が遅れたり、仕事を辞める可能性もあるので「状況次第では車を手放す」覚悟も必要です。 平成14年度の個人の自己破産は過去最高の22万2681件で、ここ10年ではのべ100万人の大台を突破しました。バブルの頃は派手な生活やギャンブルのための借金で破産する人が多かったのですが、最近は住宅ローンや生活のために借りたお金を返せなくなって破産する人が圧倒的に多くなってきたということです。自己破産はもはや特別の人の問題ではありません。「周りの人は、簡単に車を買い換えているように見える」と安易にローンを組むのは危険です。今の堅実な家計運営を明るい未来につなげていくために、何を優先して人生を歩んでいくか、ご夫婦でもう一度話し合われてみてはいかがでしょうか。 |
![]() |
|
![]() |