節約・ライフプラン

節約・ライフプラン

節約とやりくり
内田さん顔写真 FP:内田ふみ子

家計簿は、5年10年あるいはそれ以上先にある目的を達成するために有効なツールです。
ゴールを確認したらまず資金計画。今の貯蓄ペースで実現できるか、難しければやりくりできるかをチェックします。ゴールは一つとは限りません。今しなければならないことや、先のことでも大事なことなど、優先順位を考えながらアドバイスさせていただきます。


■ご相談者
相談者(仮名)
貴田 公子さん
43歳、主婦。45歳のご主人(会社員)と14歳、11歳になるお子さんとの4人家族。
娘2人を短大まで行かせたいのですが、貯蓄では2人分の教育費に足りません。今からローンを組んで手元にお金を残した方がよいのか、大学で教育ローンを組んだ方がよいのか、迷っています。
長女が高校受験の真っ最中で、もし私立に進学すれば、年間110万円程かかる見込みです。子ども2人は短大まで行かせる予定ですが、高校が私立だと貯蓄が足りません。長女は教育ローンを組んで、社会人になってから自分で返すといっています。高校の授業料を貯蓄から出すと、手元の残高に不安があり、高校で教育ローンを組んだ方がよいのか、大学に行ってからの方がよいのか迷っています。
なお不況になって収入も減ったため、気を引き締める自覚がでましたが、毎月の貯蓄はほとんどできません。祖父母からお祝いなど多めに現金でいただくので、それはできるだけ貯蓄しています。


・家計状況
 平均的な月収(税金・社会保険料を除いた可処分所得)
 夫 337,000 円
 月間支出
 住宅ローン 50,000 円
 管理費 17,500 円
 駐車場代 9,000 円
 水道光熱費 24,000 円
 電話代(携帯含む) 15,000 円
 学校給食費等 20,000 円
 ピアノ(2人分) 15,500 円
 食費・日用雑貨・洋服代 93,000 円
 雑費(ガソリン代、
 通勤定期代、諸会費等
 不定期な支出)
25,000 円
 夫の小遣い(昼食代含む) 30,000 円
 保険料(年払分含む) 28,000 円
 こども保険(長女分) 10,000 円

 ボーナス(年間)
 夫 813,000 円
 ボーナス支出(年間)
 住宅ローン
 (ボーナス払い)
280,000 円
 固定資産税 80,000 円
 生活費補填等 268,000 円
 損害保険料 25,000 円
 貯蓄 160,000 円
 貯蓄残高
 預貯金 4,900,000 円
 こども保険お祝い金
 (中学・高校分)
700,000 円
※こども保険の内容
 育英年金付き・満期22歳・満期金60万円
 お祝い金
  <大学入学時>50万円
  <高校入学時>40万円
  <中学入学時>30万円
  <小学校入学時>20万円(受け取り済み)
 <<希望・予定>>
  • 子ども2人は短大まで進学させたい。
  • 高校はできれば公立。
  • 夫は55歳で定年。その後アルバイト等で引き続き雇用になると思う。
 <<住居>>
  • 分譲マンション(住宅ローン残高:1320万円、返済期間:残り20年)
■アドバイス
切れ目なく9年間続く教育費の支出。教育ローンは返済のことも考慮し、計画的に利用しましょう。

大学は教育ローンを使って自分で返すとおっしゃるお嬢さんは、将来の目標をもったしっかりした方ですね。
基本的にほぼ全入といわれる高校の費用は、年間収支の中でまかないたいところですが、収入が以前のままであれば私立でも大丈夫だったのでしょう。余裕のあるときに貯蓄をしてこなかったのが悔やまれますが、高校を浪人させるのは避けたいですし、これから下のお子さんの短大卒業まで9年間を親子で協力して乗り切っていくことが必要です。

教育ローンを使うなら、下のお子さんの高校入学と重なって負担の重くなる大学時で使うのが順当でしょう。ただし、いくらお子さんが自分で返すといっても、教育ローンの返済計画に無理は禁物です。

まず、教育費の支出を時間軸にそってチェックしてみましょう。その間の不足額から、貯蓄の取崩しや教育ローンの借り入れ額を検討します。

年度 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
ご主人
の年齢
45 46 47 48 49 50 51 52 53
長女 高校1
110万
(34万)
高校2
110万
(34万)
高校3
110万
(34万)
大学1
109万
大学2
80万
       
次女 小学6 中学1 中学2 中学3 高校1
110万
(34万)
高校2
110万
(34万)
高校3
110万
(34万)
大学1
109万
大学2
80万
こども保険
祝金等
70万     50万       60万  
教育費の
過不足額
−40万
(+36万)
−110万
(−34万)
−110万
(−34万)
−59万 −190万
(-114万)
−110万
(−34万)
−110万
(−34万)
−49万 −80万
私立高校は長女の進学する可能性のある学校の場合。私立高校の年間学校教育費平均は約79万円。公立高校は約34万円。大学は入学金と年間授業料の平均値。
括弧内の数字は、公立高校に入学した場合
現在かかっている教育費との差額ではありません

2人とも私立高校に進学した場合の不足額合計は、858万円となり、2人とも公立の場合は402万円。私立の場合は大学だけでなく、9年間通して年間収支ではまかないきれない支出が続きます。
貯蓄は少なくとも半年分の生活費相当額250万円程度は残しておきます。ただし55歳定年という条件を考慮すると、本来は老後資金も準備したいところなので、ぎりぎりの金額です。
いずれにしても、貯蓄の取り崩しだけでは足りませんので、教育ローンの利用を視野に入れることになります。

教育ローンの借入は、返済額を考慮して、ひとり200万円以内に抑えましょう。

日本育英会などの奨学金は月々の支給のため、まとまった授業料等の準備には教育ローンを利用します。国民金融公庫のいわゆる「国の教育ローン」のうち一般教育貸付は、授業料等を対象に学生ひとりにつき200万円を限度として貸付を行っています。
国の教育ローンは、一般に銀行のローンより低利で、借入後10年以内で返済しますが、在学中は元金を据え置き、利息のみの支払いも可能です。仮に200万円借り入れて短大卒業後に返済を始めても、毎月2万円以上の返済額となりますので、社会に出たばかりでは負担は決して軽くないはずです。

また高校から借り入れてしまうと、社会人になってからの返済期間も短くなり、その分毎月の返済額の負担も重くなります。借り入れるのは、大学の資金と考えるのが妥当です。
銀行ではもっと貸付の上限が上がりますが、お子さん自身が返していくなら、200万円が限度ではないでしょうか。
借り入れる場合は、卒業後の進路もしっかり見据えてよく検討しましょう。

(参考) 国民金融公庫 http://www.kokukin.go.jp/

公立高校に進学した場合でも、毎月の支出は増えます。家計のやりくりを見直すと同時に、授業料などで学校を選択することも。

試験は結果がでてみなければわかりません。もし上のお子さんが公立高校に進学できれば、下のお子さんの高校受験も多少余裕をもって見守ることができるでしょう。
仮に2人とも私立に進学するなら、さらに借り入れることは避けられないでしょう。できるだけ借り入れ額を減らす努力もしなければなりません。
公立高校に進んだとしても、中学校のときより月2万円程度の教育費の上昇は見込んでおく必要があります。ですから日頃の家計管理をもう一度チェックしておきます。
家計の中で見直すとすれば、まずひとつの項目にまとめられている、食費・日用雑貨・洋服代を分けてみましょう。とくに洋服代は季節によって変動があるので、季節毎に予算を立てていきます。

お子さんたちもファッションに関心を持ち始める年頃なので、難しいときもあると思いますが、下のお子さんの高校が決まるまでは気は抜けません。
何に使ったか1か月間細かく書き出してみると、お金の使い方の癖がわかったり、金額はわずかかもしれませんが、減らせるものも出てくるでしょう。
また上のお子さんは既に受験を済ませていますが、これから受ける大学や下のお子さんの高校は、受験校を決めるときに学費を参考にせざるを得ないでしょう。できるだけ希望はかなえてあげたいですが、上のお子さんが私立高校に進んだ場合、貯蓄の取崩し可能額はすでに使いきっています。
お子さんたちが手の離れるころ、ご主人も定年が近づいています。高校の教育費までローンを組むと、確実に両親の老後資金にも影響します
これからお子さんたちと将来について話し合う機会は増えるでしょう。今は社会に出てから勉強する人も増えています。親がしてやれることには限界があります。それを受け入れて、お子さんたちが自分の足で立っていけるようにしてやるのも大切な親の役目かもしれませんね。



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