前回は、株取引がいかに個人に向いていないかをお話ししました。
では、個人は投資に向いていないかと言われれば違います。実は凄く向いています。
でも、何故か個人は機関投資家やヘッジファンドに勝負を挑み負けてしまいます。
では、何で勝負すれば良いのでしょうか?それは個人が持っている特性を利用します。そうするとほぼ負けることはありません。実に簡単な方法なのですが、最低限の知識はやはり必要となります。そこで、今回からしばらく知っておきたい最低限の経済知識を話して行きます。
毎日のようにニュースでは色々な経済指標が発表されますが皆様は理解できますか?
経済指標は難しく一体何を意味しているのか、さっぱり分からないという人も多いのではないでしょうか?今回は、まず運用する上で一番覚えて欲しい国内総生産(GDP)を解説して行きます。
経済成長ってなに??
例えば、ある農家がミカンを1個栽培したとします。そして、そのミカンを50円でジュース屋さんに売ったとします。農家がミカンを50円でジュース屋さんに売った瞬間に、日本の国内総生産(GDP)は「50円」が計上されます。
次に、ミカンを買ったジュース屋さんが、ミカンを材料にしてジュース一つ作ったとします。そしてそのジュースを200円で販売したとします。つまり、ミカンを仕入れた50円に、150円を上乗せして、合計200円で販売したのです。ジュース屋さんの儲けは、売値(200円)から仕入れ値(50円)を引いた150円です。この時ジュース屋さんは「150円の付加価値を生み出した」と見なされます。
つまり、「付加価値を生み出す」とは、「仕事をすることで、元(ミカン)の材料の価値を上げることなのです。ミカンを仕入れて、搾る仕事に、150円の価値があるということです。
そして、ジュース屋さんがジュースを200円で売った瞬間に、日本の国内総生産(GDP)に150円が計上されます。
今、農家がミカンを栽培することで生み出した付加価値50円と、ミカン屋さんがジュース
をつくることで生み出した付加価値150円で合計200円が日本の国内総生産(GDP)に計上されます。
そして、農家の生み出した付加価値50円とは、農家が受け取ったお金の金額50円のことです。
ジュース屋さんが生み出した付加価値150円とは、ミカンを仕入れるために50円払い、ジュースを売って200円を稼いで手元に残った150円のことです。
このように、「付加価値」とは、「国内の誰かが稼いだ収入(所得)」と同じになります。
国内総生産(GDP)とは、「一定期間の間に国内で生み出された付加価値の合計金額」のことです。つまり、国内総生産(GDP)は、「国内の人々や企業の所得合計金額」とも言えます。
国内総生産(GDP)を見れば、日本国内の人々の所得の合計がいくらなのか、人々の所得の合計が減っているのか、それとも増えているのかが分かるのです。
国内総生産(GDP)が、なぜ最も重要な経済指標なのか、これでご理解いただけたと思います。
では、貴方に質問です。GDPが下がっている日本国で投資しますか?
GDPが成長するとはどういう事でしょうか?
例えば、前の年より農家が頑張って、去年の2倍の量の2個のミカンを作ったとします。
すると、農家はミカンを今年は2個作ったので昨年の倍の100円分の売り上げです。
そして、ジュース屋さんはその2個のミカンを昨年の倍の100円を払って仕入れて、去年の2倍の量のジュースを作ります。すると去年は1杯のジュースを200円で売っていたのに対して、今年は2杯のジュースを同じ値段で売るので合計400円分が売り上げとなります。
では、国内総生産(GDP)はどのように変わるでしょうか。
今年の国内総生産(GDP)は、
農家の生み出した付加価値(ミカン)の100円
ジュース屋さんの生み出した付加価値(ジュース)は400円-100円=300円
で全体では400円になります。
去年の国内総生産(GDP)は200円でしたので、国内総生産(GDP)は2倍になったということです。
「名目GDP」と「実質GDP」
ここで、別のケースを考えてみましょう。農家が、去年と同じ量のミカン1個しか作っていないのに、値段を50円から100円に値上げしたとします。
そして、ジュース屋さんは100円でミカンを仕入れて、ジュースを作ります。仕入れが2倍になったので一杯のジュースでも去年の2倍の値段400円でジュースを売ったとします。
この時も、お金の金額の上では、国内総生産(GDP)は400円になり、「国全体の経済は2倍に成長した」ということになります。
この2倍の量の物を作って経済が2倍に成長したケースと、作った物の量は変わらないのに値段を2倍に上げることで経済が2倍に成長したかのように見えるケース、この二つを同じに見るのはおかしな話です。
そこで、このような場合は、「値上がりによる見かけの経済成長」と、「作った物の量が増えたことによる本当の経済成長」を分けて考えることが適切といえます。
そこで、
「値上がりによる見かけの経済成長も含んだ経済成長」を「名目GDP」
「作った物の量が増えたことによる本当の経済成長」を「実質GDP」
と呼びます。
名目GDPだけでは2倍の量作った場合も、作った量は同じなのに値段を2倍にしただけの場合も同じではおかしな話です。
そこで、実際の経済が成長したかどうかがわかる指標「実質GDP」を求める必要が出てきます。
「実質GDP」とは、ミカンやジュースを2倍つくったケースの400円でありますが、実はこの場合の「名目GDP」も同じ400円となります。なぜなら、このケースでは値上げが無かったので「実質GDP」と「名目GDP」が同じになるのです。
次に、作った量は同じなのに値段を2倍にしたケースです。
この場合は、「値上がり」によって、GDPがかさ上げされた分を調整して「実質GDP」を計算します。
「名目GDP」が400円でした。そして、値上がり率は2倍でした。この場合、400円÷2=200円という計算をして、「実質GDP」は200円となります。
ここで、注意してほしいのは、一年前との比較です。
去年のGDPは200円でした。そして今年の実質GDPも200円です。
去年と今年では、作った物の量は同じ(ミカン1個とジュース一杯)ならば、実質GDPも同じになるのです。
つまり、物価上昇はなかったことになります。
このように、「実質GDP」とは、値上がり分でGDPがかさ上げされた分を調整して「実質的にGDPはどれだけ増えたのか(減ったのか)」を見るための指標です。
名目GDPは、「値上がりによる見かけの経済成長も含んだ経済成長」
実質GDPは、「作った物の量が増えたことによる本当の経済成長」です。
執筆:チームM 代表 松井信夫(ファイナンシャルプランナー)CFP®
株式会社ウィム 代表取締役。NHK文化センターをはじめ、全国各地で年100回以上のセミナーを行う人気ファイナンシャルプランナー。
“プロのノウハウを分かりやすく”をモットーに、ジェスチャーを混じえて説明するセミナーは、笑いあり、涙あり、飽きさせない語りが評判です。
顧問契約のお客様へのコンサルティングでは、リーマンショック、ギリシャショックなど数々の金融危機の中でも、お客様の資産を増やし続けてきた実績が有名。
著書に、『金融時事用語辞典』(共著、金融ジャーナル刊)、『銀行では絶対に 聞けない資産運用の話』(書肆侃侃房刊)がある。
チームMの本部は銀座6丁目の株式会社ウイム内にあり、毎月全国からFPや金融関係者が知識向上、スキルアップ等の為に集まり、相互研鑽を行っています。