第5回:株の投資【子供に話すお金の話】


株の投資について

前回のテーマ「お金を殖やす」で、株の投資について少し触れました。
しかし、そもそもこの株の投資って一体何なのでしょう。「株」と聞くと、お金儲けとかギャンブルとかを想像する人もいらっしゃるかもしれません。ここ数年間は、ホリエモンや村上ファンドを始めとして、株の買収などで話題になることも珍しくありません。今回は、株の投資に焦点を絞ってお話をしたいと思います。

株とは

株とは正確には「株式」と言います。一般の会社は、ビジネスを始めるときにお金を集めるため、「株式」というものを発行します。この株式を発行してお金を集める会社を「株式会社」と呼びます。日本の有名な企業は、ほとんどがこの「株式会社」です。

そして、株式と引き換えにもらったお金で商売をし、儲かったら株を持っている人に対して、利益を分配するという仕組みになっているのです。

世界で初めての株式会社

この株式会社は、17世紀の始めにオランダの東インド会社という株式会社が作られたのが始まりです。当時は大航海時代と言われ、オランダやイギリスなどのヨーロッパ諸国が船で航海し、植民地をどんどんと手にいれていった時代でした。当時は、船でアジアから香辛料を持って帰ってくれば莫大な利益を得ることができました。
しかし、船を作るには巨額のお金が必要でしたし、航海の途中で嵐にあったり海賊にあったりすることもしばしばだったので、せっかく船を作っても大損してしまう可能性もありました。

そこで、大勢の人からお金を集めて船を何隻か作り、香辛料を無事に持って帰ってくることができたら、その得られた莫大の利益を、協力してくれた人に分配するという方法を思いつきました。このときに、お金と引き換えに渡されたものが「株式」と言い、この株式を発行することでお金を集める会社を「株式会社」と呼びました。

こうして東インド会社は、他の人からお金を集めることによって、嵐や海賊に遭ったときに損することを防ぐことができ、一方株式(通常は「株」といいます)を買った人は東インド会社が香辛料で儲けたお金の一部を手にすることができたのです。

株ってどうやって買えるの?

では、果たして株はどうやったら買うことができるのでしょうか。
この株というものは、「証券取引所」というところで売買されています。ただし、一般の人は証券取引所で直接取引をすることはできません。そこで、証券会社を通して株を売買するのです。大まかな流れは左の図のとおりです。

売買するためにはまず購入するためには証券会社に口座を作り、そこにお金を振り込み、売買の取次ぎを証券会社が行ってくれるというわけです。昔は、電話もしくは店頭でないと取引ができず、しかも手数料も高かったため、一般の人たちには馴染みがあまりなかったのですが、インターネットの普及とともに手数料も大幅に下がり、またパソコンや携帯電話から気軽に取引できるようになったことから、一般の利用者が一気に増えました。

さて、それでは株で得する方法というと、一体どんなものがあるのでしょうか。
図:株の売買の仕組み

株で得する第3の方法 -株主優待はお得!

株で得する方法は3つあります。先月のお話では、既に「値上がり益」と「配当」の2つをお話しました。軽くおさらいしましょう。

値上がり益とは、株の値段が高くなったときに売って、お金を儲ける方法です。例えば、株を100万円で買った株が120万円に値上がりすれば、20万円の利益になります。ただし、株の値段が下がる可能性もあるため注意が必要で、その会社やライバル会社なども含め、よく勉強する必要があります。

もう一つは、配当でお金を殖やす方法です。投資した会社に利益が出た場合、その一部を株主に分配するもので、銀行で言うと利息のようなものです。ただし、配当は全ての会社が行なっているわけではなく、儲かっていない会社や設立されたばかり新しい会社、或いは成長著しい会社などでは、将来のためにお金が必要なので配当を出さない場合もあります。配当で殖やしたい場合は、過去にその会社が配当をどれくらい出していたか、或いは会社の売上や利益が伸びているか、などをチェックする必要があります。

このほかに、もう一つ「株で得する方法」をご紹介します。それは、「株主優待」というものです。この制度はどのような制度かというと、株主になってくれた人に対して、自社の製品やサービスをプレゼントしてくれる、というものです。この制度は日本独特のもので、諸外国ではほとんど例がありません。また、全ての会社で行っているわけではありませんが、自分の欲しいものと合致するのであれば、かなりのお得感があります。どのような会社がどんなサービスを提供しているか、一例を見てみましょう。

会社名 株主優待の内容 株主優待
(金額換算)
配当金 株価※ 実質配当
利回り
カゴメ 1000円相当の自社製品(年2回) 2,000 1,000 189,300 1.58%
伊藤ハム 5000円相当の自社製品 5,000 4,000 533,000 1.69%
ぴあ ギフトカード(100株以上 2,500円相当) 2,500 0 177,700 1.41%
オリエンタルランド 1デーパスポート(年2回)
(東京ディズニーランド又はディズニーシー)
11,000 5,500 644,000 2.56%
シダックス カラオケ15000円分(年2回) 30,000 1,500 111,000 28.38%
ソフマップ 3000円相当の優待買物券 3,000 0 31,800 9.43%

※株価は2007年6月15日の終値

皆様におなじみの会社を選んで表にしてみました。これを見ると、配当金はあまりなくても、株主優待が充実しているところもあります。例えば、東京ディズニーリゾートを持つオリエンタルランドでは、644,000円で株を購入すると1Dayパスポートを年間2回もらうことができ、配当金以外にも実質的に11,000円分得したことになります。シダックスに至っては、111,000円で株を買えば、1年で30,000円分もの優待券がもらえるため、シダックスによく行く人であればとてもメリットが大きいと言えます。(2007年6月15日現在。現在の優待内容の詳細については、ご自身で確認されますようお願い申し上げます。また、投資に関する最終決定は皆様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。)

株を投資する際に株主優待という観点も入れると、より株式投資を楽しむことができるでしょう。

ちなみに、株主優待については様々なホームページで紹介されているので、一度調べてみると良いでしょう。

様々な投資

ところで「投資」というと、株式投資を想像される方も多いかと思いますが、実際はそれだけではありません。大辞林によると、確かに元々の意味は「利益を得る目的で事業・不動産・証券などに資本を投下すること」と書いてあるのですが、その他にもう一つ意味があり、そこから派生して「将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと」という意味もあるのです。

例えば、「Jリーグの選手になりたい」という夢を持っているのであれば、一生懸命練習をして技術を身につけたり作戦を覚えるために勉強をしたりすることは、「自分の将来を見込んで力をつぎ込む」ことであり、自分の夢に対して投資をしているのです。

「将来を見込んでつぎ込むもの」つまり「投資」は、何もお金である必要はなく、「時間」や「情熱」だっていいのです。

投資という考え方をお金や株式だけに限定するのではなく、自分のやりたいことや夢を見つけ、そして「自分への投資」についても自分なりに考えてみてはいかがでしょうか。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。