税金と聞くと、なんとなくお金を持っていかれてしまうようであまりいい印象を持っていない人も多いのではないでしょうか。でも、税金は私たちが生活をしていく上で、無くてはならない大切なものに使われているのです。
例えば、ごみの処理は税金を使って行われています。また、道路を新しく造ったり補修したりするお金にも税金が使われております。このように、税金によって私たちは生活をする上で便利なサービスを受けることができるのです。そこで今回は「税金」について考えてみたいと思います。
税金には2つの種類がある
私たちが支払っている税金はゴミや道路以外にも、警察や消防など、人々の生活を安全に守るためにも使われています。つまり、税金のおかげで私たちは便利なサービスを国や地方自治体から受けることができているのであり、見かたを変えれば「税金」とは、みんなで集めたお金を、自分たちの生活が困らないように有効に使う、いわば国民同士での「助け合い」の役割を担っているのです。
では、税金は誰がどのようにして支払っているのでしょうか。
税金には大きく分けて、「直接税」と「間接税」という2つの種類があります。2つの税金の定義は以下の通りです。
- 直接税…税を払う人が、直接納税先(国や地方自治体)に納める税
- 間接税…税を払う人が、別の人(或いは会社)を介して間接的に納税先に納める税
ちょっとわかりづらいので、実際に例を挙げて説明します。
まず、直接税の代表例として、所得税を考えてみましょう。
サラリーマンを例にとると、給料をもらったときに一定の割合を「所得税」として税金を納めています。この税金は、税を払う人(=サラリーマン)が、直接納税先(国や地方自治体)に支払っているので、直接税に分類されるのです。直接税には、所得税の他に法人税や固定資産税などがあります。
次に、間接税の代表例として、消費税を考えてみましょう。
消費税は、例えばお店で商品を買った際に、商品の代金以外に5%を支払う税金のことです。税を支払う人(=商品を買った人)が、人や会社(=お店)を介して納税先に支払っていることになりますので、消費税は間接税に分類されます。
これは、お店で商品を買うたびに5%分の税金をいちいち国や地方自治体に支払っていたらとても面倒なので、お店の人が商品の代金とあわせて税金としての5%分も一緒にもらい、お店を介して一緒に国や地方自治体に納税をしているためです。間接税には、消費税の他にたばこ税や酒税などがあります。
主な税金を直接税、間接税の区分に分けると以下のようになります。
直接税 | 間接税 |
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直接税と間接税の特徴
さて、この2つの税金ですが、実は以下のような大きな特徴があるのです。
- 直接税 → お金持ちに厳しい税金
- 間接税 → 貧しい人に厳しい税金
一見すると、納税の方法が違うだけの2つの税金。でもどうしてこのような特徴があるのでしょうか。
まず直接税の場合は、収入(会社の場合は利益)のうち一定の額を税金として支払うため、収入(利益)が多ければ、支払う税金も多くなるようになっています。つまり、直接税の場合は稼げば稼ぐほど、それだけ税金の負担も多くなるため、お金持ちには厳しい税金になるわけです。
それに対して、間接税の場合は商品代金に対して一定の率(消費税だと一律5%)を税金として支払うため、買ったものが高価であるか、或いはたくさんものを買うと、税金の負担が多くなります。つまり、収入の多い少ないにかかわらず、買った人全てに同じ額の税金がかかってくるということになります。例えば、100万円のものを買うときには、5万円の消費税を払わなければなりませんが、これは給料が高い人も給料の安い人も同じ値段を払うことになります。ところが、同じ5万円でも、給料の高い人と安い人とでは負担の感じ方が違い、収入の少ない人にとっては負担が大きく感じてしまいます。このように、間接税の場合は、収入に関係なく、買うモノに対して支払う税金となるため、貧しい人にとって厳しい税金ということになります。
直接税は、収入の多い人からは多くの税金を取り、収入の少ない人からはあまり税金を取らないので、貧富の差を小さくするという効果があります。ただし、直接税を重くすると、収入の多い人から見れば、せっかくたくさん稼いだとしてもあまり税金を多く取られてしまうと、一生懸命働く意欲がなくなってしまうという危険性もあります。
それに対して間接税は、誰でも同じ商品を買えば全員同じ額の税金を支払うことになるので、その点では平等といえるでしょう。また、収入の多い人が働く意欲をなくす心配もありません。しかし間接税を重くすると、実質的にモノやサービスの値段が上がることになるので、収入の少ない人にとって生活は更に厳しくなってしまいます。
例えば、消費税率を5%から上げるべきかどうかについてはここ数年政府で議論されていますが、もし税率が上がるとモノやサービスの値段が上がってしまうために国民の生活への影響も大きく、特に収入の少ない人々への影響が大きいため、国民からの反発が強いという事情があるのです。
では、国民の反発が大きいにもかかわらず、なぜ政府は消費税を上げることを検討し続けているのでしょうか。実は今、日本政府は税金が足りなくて困っているのです。次の章で詳しくみていきましょう。
税金が足りない!日本政府の苦しい台所事情
今、日本の国は借金大国であることを皆さんはご存知でしょうか。2007年6月25日に財務省が発表したデータによると、国の借金は2007年3月末時点でなんと834兆円にものぼります。以下が平成19年度予算の歳入(国の収入)の内訳になるのですが、1年間に約83兆円のお金が必要なのに対して税金は53兆円しかなく、25兆円あまりを国債などの「公債金収入」、つまり借金に頼っているという状況なのです。 ※財務省ホームページより
借金を少しでも減らすためには、2つの方法が考えられます。一つは税金を増やす方法で、もうひとつは支出を減らす方法になります。
ところが、もし税金を増やそうとして、所得税や法人税などの直接税を重くすると、税金の安い国に移住、或いは会社の拠点を移してしまうかもしれなくなり、結果として税金を納めてくれる人や企業が少なくなるかもしれません。また、消費税を始めとする間接税の引き上げも国民の生活を圧迫することになるため、反発が予想されます。
では支出を減らす方法を考えようとすると、これも難しい状況にあります。19年度予算の歳出(支出)を見てみると、社会保障費が21兆円と膨大な金額がかかっていますが、これから高齢化社会を迎えるにあたり、ますます医療や介護などにお金がかかることになり、社会保障費などはむしろ増えていく傾向にあるため、支出を減らすという方法も大変難しいというのが今の日本の現状なのです。
このように今の日本は毎年25兆円ものお金が足りず、毎年の借金が積み重なって合計800兆円以上、国民一人あたりの借金は650万円以上という借金大国なのであり、なんとかしてこの借金から抜け出さないと、どんどん借金が膨れ上がってしまうのです。
みんながハッピー!?国の税収を増やす方法
では、国民も企業も苦しむことなく国の税金収入が増える、そんな魔法のような方法はないのでしょうか。実はあるのです。それは、「景気が良くなること」です。
日本の景気がよくなれば、自然に会社の利益も増えるので税収が増え、サラリーマンなども収入が増えるため、支払う税金も増え、さらには国民も収入が増えるとたくさんモノやサービスを買うことになれば消費税も増えることになりますので益々税金による収入が増えることになります。
つまり景気を良くするということは、法人税や所得税、さらには消費税等が自然に増えるという魔法のような方法なのです。現在の政府は何とかして国民の生活を苦しめないように「景気回復」の方法を一生懸命考えています。
一番手っ取り早く景気を良くする方法としては、減税が考えられます。税金を減らせば、それだけ国民はたくさんモノを買うことができるようになり、国民がモノをたくさん買うようになれば、企業も儲かるので景気がよくなっていきます。ただし減税を行うということは、一時的には税金が減ってしまうことでもあるのです。そのため、日本政府は減税と増税のバランスを取りながら、いかに景気を良くしていくかという大変難しい舵取りを迫られているのです。
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。