みなさんに万が一のことがあったときに備えて入るのが保険です。もし保険に入っていると、何かあったときにお金などがもらえるようになっています。
一般的に、「モノ」や「財産」などにかける保険を損害保険と言い、偶然の事故や災害によって生じた損害に対して保険金が支払われます。それに対して、「人の命」にかける保険を生命保険といい、原因は何であれ、基本的には死亡すると死亡保険金が支払われます。それぞれ歴史は異なりますが、困ったときに役に立つために加入する、という点では同じです。今回は保険について考えてみたいと思います。
保険はいつごろできたのか。~保険のはじまり~
さて、保険はいつごろにできたのでしょうか。「損害保険」と「生命保険」それぞれの歴史についてお話しましょう。
損害保険の歴史は中世ヨーロッパの船の貿易の話しにさかのぼります。ヨーロッパの商人たちは1回船で品物を運ぶと、大儲けをすることができました。そこで、お金を持っている人が船を買い、荷物を運ぶという商売が行われていたのです。
ところが、無事に帰って来ることができれば良いのですが、当時の航海には危険も多く、何隻かで運んだうちの1隻は行方不明になってしまう、或いは海賊に襲われてしまうなどということもありました。せっかくたくさんお金を出して船を買ったのに、なくなってしまうと大損をしてしまいます。そこで保険屋さんが登場しました。
保険屋さんは、例えば「投資したお金の3%だけお金を払えば、もし船が帰ってこなかったときに投資したお金を返してあげますよ。ただし、無事に着いたときには、支払ったお金は保険屋さんがそのままもらいます。」という商売を始めました。船に投資をした人にとってみれば、無事に船が戻ってきてくれさえすれば、何倍ものお金が儲かったので、投資の3%なんてたいしたことありません。そこで、船に投資をした人たちは喜んで保険をかけるようになりました。つまり、世界の最初の保険は海上保険だったのです。
一方、生命保険のはじまりは色々な説がありますが、中世ヨーロッパの都市で「ギルド」という同業者の人同士が集まり、生活に困ったときにお互いに助け合うために作られた組合が最初と言われています。例えば、農家であれば、親が亡くなっても農地さえあれば商売を続けていけるため、それほど問題は起きません。しかし、商人や職人だと農家のようにはいきません。そこで、商人や職人など、同じ仕事をしている仲間どうしで、仕事がうまくいかなくなった時のお金の援助や、病気・死亡のときなどいざというときにお互いに助け合うため、みんなでお金を出し合っていたのでした。具体的には、お葬式代の他にも遺族の生活するためのお金、事業に失敗した人に対しての原料を買うお金など、補償の範囲は広かったようです。
どんなときに保険が必要なの?
ところで、日本ではどれくらいの割合で保険に加入しているかご存知でしょうか。以下が生命保険の世帯加入率になります。保険の加入率は近年下がりつつありますが、それでも9割近い家族が生命保険に加入しているという計算になり、ほぼ10人のうち9人が加入している計算になります。
このデータからも私たちの生活と保険は密接に結びついていることがわかります。
生命保険の加入率推移
では、保険はどんな場合に必要になるのでしょうか。
まず、私たちの生活の中には、色々な危険がいっぱいあります。例えば、交通事故や病気というものは、いくら自分で気をつけていても、普通に生活していれば誰にでも起きる可能性があります。また、火災や地震によって大きな損害が出てしまうこともあるかもしれません。このように私たちは、じつは毎日危険と隣り合わせで生活をしているのであり、もし万が一そのことが起きてしまったときに、膨大なお金がかかる可能性があるのです。その万が一のために保険というものがあるのです。
下の図を見てみましょう。
これは、保険において、事故の起きる確率と、起きてしまった場合にいくらぐらい必要になるかのイメージ図です。例えば右下にあるように「友達のカメラを壊した」場合というものは、日常でも比較的起きやすい出来事ですが、起きてしまった場合にかかるお金も比較的安く、貯金で充分支払いができるとしましょう。この場合は、保険に入らなくても貯金で対応できるので保険には入らない、という方法があります。(もちろん保険に入っても良いのですが)。
それに対して、「火災」や「自動車で人を死亡させてしまった」ということは、滅多に起きないですが、起きるととても自分では支払えないぐらいの大きなお金を請求されてしまいます。例えば、家が燃えてしまった場合は数千万円の被害になりますし、自動車で死亡事故を起こしてしまった場合は、場合によっては1億円以上かかってしまうことも考えられます。
つまり、ケガや友達のモノ(カメラなど)を壊したなどについては、保険に加入していなくても生活が一気に苦しくなることは考えにくいので、貯金・保険のどちらでも対応ができますが、火災や自動車の死亡事故などは、よっぽどのお金持ちでない限り、貯金で支払うことはできません。そこで、特にこのような「発生確率はとても低いけど、発生してしまった場合は支払えないぐらい大きなお金が必要となる」場合においては、保険をかけておく必要があるのです。
生命保険(つまり人の保険)についても同様です。日本人の平均寿命は男女とも75歳以上ですので、40歳や50歳で亡くなってしまうことは確率としては低いのですが、それでも事故や病気で亡くなってしまう場合も無いとは言い切れません。例えば、お父さんが40歳ぐらいでお母さんが働きに出ていない場合は、もし子供がまだ小さければ、お父さんに万が一のことがあった場合は収入がなくなってしまいます。そこで、生命保険に入っておくと、お父さんに万が一のことがあった場合にもお金をもらうことができるのです。
いったいどんな保険があるの?
今は色々な保険が用意されています。
損害保険の中で一番身近なのは、自動車保険でしょう。
万が一事故を起こした場合、車に乗っている相手の人や自分と一緒に乗っていた人、壊してしまったガードレールや、相手に傷をつけてしまった車などの補償をしてくれます。
また、火災保険も同様に身近な保険です。火事になって自分の焼けてしまった場合や、風水害にあったときなど、被害の状況に応じて保険金を受け取ることができます。
それに対して、生命保険は人の命に関わる保険となります。
生命保険の中で、一番代表的なものは死亡保険です。死亡保険は、死亡或いは高度障害になってしまった場合に補償してくれる保険です。それ以外にも、長生きをするとその分だけ生活費としてお金が必要になりますので、死亡するまで生活費の一部としてもらい続けることができる保険もあります。そのほかにも、貯金ができるもの、あるいは病気になって働けなくなったときに、その期間の収入分を補償してくれる保険など、様々な保険が用意されています。
保険にはたくさん入っておいた方がいいの?
保険は万が一のときに備えて入るもので、お金を儲けるための手段ではありません。当然のことながら、保険は多めに申し込むとその分保険料が高くなってしまいますので、「万が一のため」の保険で儲けようと思わないほうが賢明です。また、保険金のために人やモノをわざと傷つけた場合は、保険金がもらえないどころか、処罰の対象となる場合もあります。自殺についても生命保険の一般的なルールでは、加入してから2年(保険によっては3年)以内に自殺をした場合は、保険金の支払いは行われません。
大切なことは、まず保険に入るときには、万が一のときにどれくらいのお金が必要になるかをしっかり把握しましょう。また、自分が加入している保険についてよく理解しておくことも大切なことです。他人に勧められたままの場合、内容をよく把握していないことがあるからです。
最後に、保険には必ず見直しが必要となることを覚えておきましょう。なぜなら、万が一のときに必要とされるお金は、家族の状況など、その時々によって違ってくるからです。自分で保険を定期的に見直す自信がないという方は、何かあったときに相談にのってもらえるような、信頼できる保険の営業マン、あるいはファイナンシャルプランナーを見つけておくと安心です。
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。