最近、いろいろな食べ物の値段が上がっています。 食べ物が上がっている一番の理由は、いろいろな食べ物の材料となるお米や小麦、とうもろこしや大豆などの穀物の価格が世界的に値上がりしているからです。
例えば、小麦の値段が上がると、小麦を使って作られるパンやうどん、スパゲッティなどの麺類などの値段も上がります。以下の図を見てください。
目次
(図1)
(出所:農林水産省「世界の農産物価格の動向」)
小麦の値段は2006年には1トンあたり100ドル前後だったものが、現在では3倍の約300ドルにまで上がっています。また、お米は特に2008年に入ってから急激に上がっていることが分かります。このほか、小麦や米以外にもとうもろこしや大豆などの値段も小麦やお米と同じように値上がりの傾向にあります。
では、いったい何が原因でこのように穀物の値段が上がっているのでしょうか。
穀物が値上がりする4つの理由
穀物の値段が上がった理由として、大きく分けて以下の4つの理由が挙げられます。
- 世界的な異常気象により、収穫量が大きく減った。
- アメリカがバイオ燃料に力を入れ始めた。
- 中国やインドで肉を食べる人が多くなった。
- 原油価格が上がった。
1.世界的な異常気象による影響
ここ数年、世界的に干ばつや洪水などが近年ひんぱんに起きており、農作物の収穫に大きな影響を与えています。特に、日本で消費する小麦の約20%を輸入するオーストラリアでは、2006年、2007年に2年連続の大干ばつが起きて世界の農作物価格に大きな影響を与えました。以下の図をご覧下さい。
(図2)オーストラリアの小麦収穫量
(出所:オーストラリア農業資源経済局)
オーストラリアでの小麦の収穫量は毎年2,000~2,500万トンで推移をしてきましたが、2006年には例年の半分以下の980万トン、そして2007年は2006年より回復したものの、例年の約半分の1,310トンとなっています。このため、日本だけでなく他の国も輸入できなくなり、値段が上がりました。
2.アメリカのバイオ燃料政策
アメリカ合衆国では、2005年に「エネルギー政策法」を定め、バイオ燃料というに力を入れはじめました。では、なぜアメリカはバイオ燃料に力を入れ始めたのでしょうか。実は、これは環境問題と深く関わっているのです。
今、世界では排気ガスによる地球温暖化の問題が大きくなっています。特に車社会のアメリカでは自動車から二酸化炭素をたくさん出しており、このままいくと地球温暖化に大きな影響を与えてしまいます。そこで、これからは石油を使わなくても車が走れるように、トウモロコシなどを原料とした「バイオエタノール」というものに力を入れ始めたのです。
バイオエタノールの場合は、トウモロコシを育てている間は光合成をし、二酸化炭素を吸収して酸素を出すので、二酸化炭素の全体量も石油を使った場合と比較すると少なくすることができます。また、石油は使い続けているといつかなくなってしまいますが、トウモロコシであれば種をまけばどんどん作ることもできるのです。
ただし、いいことずくめに思えるこの政策ですが、このことによりトウモロコシが大量に必要となったため、トウモロコシの値段は大きく値上がりをしました。また、トウモロコシをたくさん作る必要がでてきたので、大豆を作っていた農家までもがいっせいにトウモロコシに作物を替えました。このことにより、大豆の値段も上がってしまいました。
3.中国やインドでの食生活が変わった
インドや中国の人口をあわせると、全世界の人口66億人のうちの約4割を占めます。いままでは、インドや中国の食べ物は農産物が中心でしたが、人々の生活水準が上がり、最近は牛肉や豚肉などを食べるようになってきました。
では、肉を食べるとなぜ穀物の値段が上がるのでしょうか。普通ならば、穀物の食べる量が少なくなれば価格も下がりそうなものですが、実はそうではありません。
なぜなら、肉を食べるための動物を育てるのに大量の穀物が必要となるからです。
以下が1kgの肉を生産するために必要な穀物の量になります。
・鶏肉 1kg | ⇒ | 穀物 4kg |
・豚肉 1kg | ⇒ | 穀物 7kg |
・牛肉 1kg | ⇒ | 穀物 11kg |
1kgの肉を生産するために、穀物は4kg、豚肉だと穀物は7kg、牛にいたっては11kgもの穀物が必要になります。いったん動物に穀物を食べさせ、その肉を人が食べるというのは大変ぜいたくなことなのですね。
つまり、中国やインドでたくさんの人が牛や豚などを食べるようになったということは、家畜を育てるための餌としての穀物が大量に必要になったということなのです。
4.石油価格の上昇
石油は世界的に値段が急速に上がり、5年前の2003年には1バレルあたり30ドル前後だったのが、たったの5年で2008年6月現在、$132ドルと、4倍以上になっています。
例えば、農作物などをスーパーに運ぶときにはトラックを使います。ところが、石油の値段が上がるとトラックで運ぶためのガソリン代も上がりますから、食べ物の値段を上げないと儲けが出ないため、結局食べ物の値段が上がってしまうのです。
以上、4つの理由により、食べ物の値段は上がっているのです。 また、最近ではこのように穀物が値上がりを続けているため、食べる目的ではなく、お金儲けのために穀物に投資をしている人が世界中に増えました。
このように食べ物として必要としている以外の人も穀物を買おうとするので、どんどん値段が上がってしまっているのです。
年間で35万円もかかってしまいます。このお金は車を持っているだけでかかるお金ですので、実際はガソリン代や高速道路代など、さらにお金がかかることになります。
食べ物が足りなくなる時代がやってくる!?
では、今後も食べ物の値段は上がり続けるのでしょうか。
以下のグラフをご覧下さい。
(図3)世界人口の推移と推計値
<出所:総務省 統計局>
世界的な人口は増え続けています。日本では少子化が問題となっていますが、世界は逆の傾向にあり、1日20万人という驚くべきペースで増え続けているのです。50年前までは世界の人口は現在の半分の約30億人でした。ところが、今では2倍以上の66億人。このままいくと、50年後には90億人にも達してしまいます。
つまり、食料は今の1.5倍ぐらいは必要になるということになり、必要な食料の量はどんどん増えていきます。一方で、アフリカなどでは今すでに食糧が足りておらず、これに加えて、先ほどのインドや中国のみならず、世界中の多くの人が牛肉や豚肉を食べるようになれば、さらに多くの穀物が必要となります。そういった意味では、食料が世界的に足りなくなる時代がやってくるかもしれません。そうなれば、食べ物の値段が上がるのはもちろんのこと、もしかしたら高いお金を払っても買うことができない、そんな時代が来るかもしれないのです。
日本は、食べ物の自給率は39%となっており、残りの60%以上を外国からの輸入に頼っています。今はまだたくさん食べ物があるので外国は日本に輸入を続けてくれていますが、世界的に食べ物が少なくなれば、将来は外国が日本に食べ物を輸出する余裕がなくなるかもしれません。
今、日本の政府が一生懸命に農業の政策を考えているのは、こうした深刻な問題があるからなのであり、わたくしたち日本人も一人ひとりが農業に対して真剣に考えていく必要があるのです。
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信会社に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。