第26回:国債【子供に話すお金の話】


サブプライムローン問題が引き金となって世界経済は急激に悪化しています。そのため世界中で景気対策の議論がさかんになっており、日本でも定額給付金や高速道路の値下げなど、様々な景気対策を政府が考えています。定額給付金や高速道路の値下げを実施すれば、当然のことながら政府はお金が必要になります。しかし、近年日本政府はお金が足りない「赤字」の状態が続いているため、例年以上にお金が足りないことになります。

では、お金が足りなくなったとき、政府はどこからお金を集めるのでしょうか。実は「国債」というものを発行してお金を集めているのです。そこで今回は国債についてお話をしたいと思います。

国債ってなに?

では、国債とはいったいどんなものなのでしょうか。

まず国債のお話をする前に、毎年どうやってお金を集めているのかを説明しましょう。政府のお金はどこから来るかというと、国民や企業などから集めた「税金」が大部分を占めます。以下の表をご覧下さい。

平成20年度の予算は1年間で83兆円ですので、税金が83兆円あれば問題ありません。ところが税金による収入は54兆円しかなく、税金以外の収入を合わせても58兆円。つまり、残りの25兆円は赤字なのです。この赤字を穴埋めするために25兆円を借りてこなければなりません。そこで日本政府が「国債」というものを発行して、お金を借りるのです。わかりやすく言えば国債は「国の借金」になります。

借金であれば、お金を返すときには利子を支払わなければなりません。したがって、国債も当然利子のことながら利子がつきます。2009年4月15日に発行予定の個人向け国債は、5年固定金利型であれば0.71%/年、10年変動金利型であれば最初の半年は0.5%/年で、その後の金利は物価などにより変動します。国債の利回りは銀行の定期預金よりは高めの金利設定となっているのが一般的です。

日本の国は借金だらけ!?

このように日本政府にはお金が足りなければ、国債を発行してお金を集めるということができるのです。しかしながら毎年お金を借りていたら、借金だらけになってしまうのではないのでしょうか。その通りです。これまでに日本政府は国債をたくさん発行してきたので、日本は今、膨大な借金を抱えているのです。

財務省が発表したデータによると、国の借金は2008年3月末時点でなんと849兆円にものぼります。以下の日本の借金残高推移をご覧下さい。

1997年の借金残高は355兆円でしたので、なんとこの10年で2倍以上に膨れ上がってしまったことがわかります。では、一体なぜ日本の国はこんなに借金が膨らんでしまったのでしょうか。以下の図をご覧下さい。

まず左側の表を見ると、先ほどお話した通りで税金などによる国の収入(歳入といいます)は約58兆円。それに対して、支出の合計が83兆円となっており、内訳を見ると、一般歳出が47兆円で、この他に借金を返すための国債費が20兆円、地方を支援するための地方交付税が16兆円となっています。

これを一般の家庭の1か月分に置き換えてみると右側の表のようになります。毎月40万円の給料に対して、毎月使っているお金は合計で58万円。毎月18万円の借金をしているのと同じなのであり、つまりこのように日本の財政は大変厳しい状況にあるのです。積もりにつもった借金合計は2008年3月末で849兆円にものぼり、1年間の利子だけでも6兆円も支払わなければならないのです。

最近話題の「無利子国債」ってなに?

このように日本政府は利子の支払いだけでも大変厳しく、しかも金利が上がってしまうと毎年支払っている6兆円の利子は更に増えてしまうかもしれず、何とか借金や利子を減らそうと必死です。そのため、最近では「無利子国債」というものを発行しようという議論が政府で話し合われているようです。ではこの「無利子国債」とはいったい何のことなのでしょうか。そもそも利子がつかないのになぜわざわざ国債を買う人がいるのでしょうか。

実はこの国債は、相続する場合には相続税がかからないという特典があるのです。例えば5億円を現金で持っているお年寄りがいるとしましょう。妻がいなくて子供が1人だった場合、このお年寄りが亡くなると、息子は財産を相続するのですが、その際に1.7億円の相続税がかかります。ところが、この5億円の現金で無利子国債を買っておけば相続税は支払わなくて済むというものなのです。

一方、日本政府の立場から考えると、通常の国債であれば利子を支払わなければならないため、利子を支払わずにお金を借りられるので日本政府にとっては大きなメリットです。

無利子国債の発行は、国民・政府の両者にとってメリットがあり良いことづくめのような気もしますが、欠点もあります。それは何かというと、政府は利子の支払いはなくなりますが、将来的には相続税が減ってしまうため、結局将来さらに税金が減ってしまうことになります。一方、国民の方はというと、よほどお金持ちでない限り相続税はかからず、相続税を支払わなければならない人は全体でも約5%。そのため、一部のお金持ちにしかメリットがないため、「金持ち優遇措置の政策だ」との批判も出ているのです。このため、今話題になっている「無利子国債」の実現性は低いというのが今の現状のようです。

 

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信会社に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。