生活をしていくためにはお金が必要です。たとえば、ごはんを食べるためには食材を買わなければなりませんからお金が必要ですし、また、洋服を買うときにもお金が必要になります。皆さんが生活していけるのは、お父さんやお母さんがお仕事で働いて稼いでいるからですが、では、働いていないおじいちゃんやおばあちゃんは、お仕事をしていないのにどうやって生活ができるのでしょうか。実は、お年寄りの人たちは、働かなくても国から「年金(ねんきん)」というお金をもらうことができるので生活できるのです。では、この年金とはどんなものなのでしょうか。そこで今回は、年金をもらえるしくみについてお話をしたいと思います。
目次
年金ってなに?
さて、では年金とはそもそもいったいどんな仕組みでもらえるのでしょうか。
日本では、ある事情で仕事ができずにお金をかせぐことができない人たちに対して、国からお金が支払われるようになっているのです。国からもらえる年金は大きくわけて以下の3つがあります。
1.お年寄りになるともらえるお金(老齢年金といいます)
2.病気やけがなどで体が不自由になるともらえるお金(障害年金といいます)
3.お父さんなどが亡くなったときにもらえる年金(遺族年金といいます)
おじいちゃんやおばあちゃんが働かなくてももらえるのは、1の「老齢年金」という年金をもらえるためであり、お年寄りになって仕事をしなくてもお金がもらえるのです。
では、お年寄りがもらえるお金は、誰が支払っているのでしょうか。
実は、働くことのできる若い人たちからお金を集めて、それをお年寄りに支払っているのです。20歳から60歳までの人は原則全員、年金のためのお金を国に納めなければなりません。そしてそのお金を、65歳以上のお年寄りに「年金」として支払っているのです。こうして私たちは、働けなくなった後でもお金に困ることがないように、社会全体で助け合いをしているのです。
最近、ニュースで年金が取り上げられるのはなぜ?
さて、家を選ぶ際にはもう一つ大事なことがあります。それは、家を「買う」か「借りる」かを決めることです。
では、家を借りるのと買うのでは、どちらの方が良いのでしょうか。これも人によって違いますので、それぞれの特徴を見てみましょう。
年金はここ数年、ニュースで大きく取り上げられるようになってきました。では、なぜ年金のニュースが大きく取り上げられるようになってきたのでしょうか。
主な3つの年金の問題を挙げてみましょう。
1.将来、子供が少なくなるのでもらえる年金が少なくなる
2.国の年金の記録がいい加減だった
3.国民の義務である国民年金保険料を支払わない人が増えている
1.将来、子供が少なくなるのでもらえる年金が少なくなる
私たちがお年寄りになると、現在と比べてもらえる年金は減ってしまうといわれています。ではそれはなぜなのでしょうか。一番大きな原因として、生まれてくる子供の数が減り、お年寄りの数は増えていくからです。以下の図をごらんください。
1950年ごろは、1家族に3人以上の子供がいることが多かったのですが、だんだん子供の数は少なくなり、最近では平均1.2~1.3人となっていることがわかります。
以下の図をみてわかるように、
子供は2人の親から生まれますので、子供が3人であれば将来の人口は増えていきます。2子供が2人の場合だと人口は変わりません。子供が1人だと、日本の人口は減っていくことになります。1家族あたりの子供の平均が1.2人ということは、1家族に1人の子供の家庭が多いということですから、つまり将来の人口は減っていくことになります。しかも20年たてばその人は20歳になるため、20~60歳の若い人の人口が減ることになります。そのためお年寄りに払うためのお金もあまり集まらなくなってしまいます。一方で、お年寄りはどんどん増えていくので、国が支払う年金の総額も増えていき、その結果ますますお金が足りなくなってしまいます。したがって、将来は1人あたりがもらえる年金額が減らされてしまうことになります。
2.国の年金の記録がいい加減だった
お年寄りになってからお金をもらうためには、若いときにきちっとお金を国に納めることが条件になっています。そのため、お金を納めたかどうかを国はしっかりと管理をすることが重要です。ところが、なんと5000万件もの記録がまだ管理できていないことが2007年に政府が発表されました。しかもこれ以外にも実際にお金を納めたにもかかわらず、その記録が残っていない、という人がいることもわかり、あらためて国の年金に対する管理がいい加減だったか、ということがわかったのです。そのため、自分が支払ったお金はちゃんと記録されているだろうか、本当に将来年金は支払ってもらえるのだろうか、と国民は心配になっているのです。
3.お金を納めない人が増えている
20~60歳の人は原則全員、年金のためにお金を納めなければなりません。サラリーマン(お給料をもらっている人)であれば、お給料から自動的に支払われるため、全員がきちっと納めています。ところが、それ以外の人は実際に支払っていない人がとても多いのです。例えば、サラリーマン以外の人(例えば自営業の人やアルバイトで生活している人など)で、お金をちゃんと納めている人は全体の約64%。3人に1人は決められたお金を国に支払っていない計算になります。これにはさまざまな理由が考えられ、最近の不景気で仕事がなくて働けない人が増えており、このような人たちはお金がないので納めることができません。ところが、特に生活に困っていない人であっても、先ほどお話した通り「将来もらえるお金が減らされる可能性が高く、ひょっとするともらえないのではないか。あるいは損をしてしまうのではないか」と考える人や、あるいは「国の管理がいい加減だからちゃんとお金を納めても、将来お金をもらえるのか信用できない」という人も多いのです。こうした年金への不安や不信感からお金を支払わない人が多いのです。
本当に支払わない方がトクなの?
では、本当に国にお金を納めないほうが得なのでしょうか。これは得になることはまずありません。むしろ、お金を支払わないと後で大変なことになる可能性があるのです。まず、お金を納めないと老後にお金を受け取れないだけでなく、体が不自由になったときなどの際に、お金を受け取れなくなってしまいます。また、そもそもお金を納めるのは国民の義務ですので、悪質な場合は強制的に持っているお金や貯金などを差し押さえされてしまう可能性もあります。
年金の制度は日本の社会全体での助け合いの制度でもあります。「国の管理がいい加減で信用できないから支払いたくない」という気持ちはよくわかりますが、それは法律違反であり、得することはありません。年はだれでも取るものです。私たちが将来おじいさんやおばあさんになったときに助けてもらえるのですから、みんなが安心して生活できるように国民みんなで助け合っていきたいものですね。
執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信会社に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。