海外旅行傷害保険はクレジットカード付帯のもので良いでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール
  • 海外での診療・治療は高額です。
  • クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険は保険金額を確認しましょう。
  • 基本的には旅行代金等の支払いにカード利用したものが対象です。

 川上 沙紀 さん(仮名 30歳 会社員)のご相談

年末年始休暇に友人と海外旅行に行く予定です。これまで何回か海外旅行に行きましたが、クレジットカードに海外旅行保険が付帯されているので、特に保険会社の海外旅行保険に加入せずにいました。しかし、友人はこれまでも海外旅行保険に加入していたようです。クレジットカード付帯のものではダメですか?

川上 沙紀さん(仮名)のプロフィール

家族構成
本人(30歳 会社員)

高額な治療費など、カード付帯の補償範囲で不安なら海外旅行傷害保険でカバーも

1.海外の病院で診療や治療を受けると、日本とは桁違いの費用がかかります。

川上さん、こんにちは。新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」移行後、海外旅行に出かける人も増え、コロナ以前にほぼ戻ってきているようです。その際、「何となく気にはなっている」という人が多いのが海外旅行保険です。

必ずしも加入する人ばかりではありません。その理由として、

  • ・過去に海外旅行に行っても、いつも特に何のトラブルもなく帰国できているので、自分だけは大丈夫と思う。
  • ・海外旅行の都度加入することを考えると、日数の割に割高感を感じる。
  • ・クレジットカードに付帯されている

などがあります。

ところで、日本では現在、救急車での搬送は無料ですが、海外ではどうでしょう。米国では一般的に基本料金で300~500ドルといわれています。ちなみにハワイ州は、なんと1,600ドル超だそうです。

また、ニューヨークでは、一般の初診料が150~300ドル、入院の場合は、室料のみで1日2,000~3,000ドル程度の請求になるそうです。為替レートにもよりますが、日本とは桁違いの費用がかかるのです。

自分だけは大丈夫と思うかもしれませんが、実は筆者の知人も、海外のビーチリゾートでオプショナルツアーに参加中、足を滑らせて転倒してケガをしました。その時は半日後に帰国便に搭乗予定だったため、本人は我慢して現地の病院に行くことはありませんでしたが、帰国後病院で診察してもらったところ骨折していました。結局1か月近くの入院になりましたが、もし到着したばかりのケガであれば現地の病院で手術・数日入院となっていたかもしれません。その時以降、筆者も、自分だけは大丈夫という考えはやめました。

2.カード付帯の海外旅行傷害保険は補償内容を確認しましょう。

一般的にクレジットカードには海外旅行傷害保険が付帯されていることが多いですが、ゴールドやプラチナカードに比べて一般カードは補償内容もコンパクトというように、カードのランクによって補償内容が異なるのが普通です。自分のカードの補償内容をカード会社のサイトでしっかり確認しておきましょう。
一例を見てみましょう。

【クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険の補償内容概要】(一例)

A社 B社
一般 ゴールド 一般 ゴールド
年会費 無料 11,000円(税込) 無料 11,000円(税込)
傷害死亡・後遺障害 最高2,000万円 最高5,000万円 最高2,000万円 最高1億円
傷害治療費用 50万円 300万円 100万円 300万円
疾病治療費用 50万円 300万円 100万円 300万円
賠償責任 2,000万円 5,000万円 2,000万円 1億円
携行品損害
(免責3,000円)
15万円 50万円 20万円 50万円
救援者費用 100万円 500万円 100万円 400万円
遅延等費用 20,000円
寄託手荷物紛失費用 40,000円

一方、一般の海外旅行傷害保険の補償内容概要(一例)を見てみましょう。

【一般の海外旅行傷害保険の補償内容概要】(一例)

A社 B社
コンパクト 充実 コンパクト 充実
保険料 2,870円 3,940円 2,660円 4,250円
傷害死亡・後遺障害 1,000万円 3,000万円 1,000万円 3,000万円
疾病死亡 1,000万円 3,000万円 1,000万円 3,000万円
治療費用 1,000万円 2,000万円 1,000万円 3,000万円
賠償責任 1億円 1億円 1億円 1億円
携行品損害 30万円 50万円 30万円 50万円
救援者費用 1,000万円 2,000万円 1,000万円 3,000万円
航空機寄託手荷物
遅延等費用
10万円 10万円 10万円 10万円
弁護士費用等 100万円 100万円
テロ等対応費用 10万円 10万円
  • ※ハワイ7日間の例。
  • ※上記はパッケージタイプの例。必要な補償を選択できるオーダーメイドタイプもあり。

クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険は、あくまでカード保有者へのサービスなので、一般の海外旅行傷害保険との補償内容の違いで良し悪しを比較することは意味がありません。ですから、これだけカバーしてもらえれば十分と思えるのであれば、カード付帯の保険のみでもかまわないですし、数千円の負担で安心できるのであれば、加入すれば良いでしょう。
概要も知らないまま、カードを保有しているから大丈夫と思っていると、こんなはずではなかったということにもなりかねません。要はカード付帯の海外旅行傷害保険の概要を理解した上で、別途一般の保険の加入要否を判断することが重要なのです。

なお、カード付帯の海外旅行傷害保険における補償の対象者は、原則、カード保有者です。家族会員は本会員よりも補償が小さくなるのが一般的です。またカード会社やカードのランクにもよりますが、家族特約が付くものもあります。この場合、上級ランクのカードの場合、「本会員の配偶者」「本会員と生計を共にする同居親族」「本会員と生計を共にする別居の未婚の子」など、対象者が比較的幅広くなりますが、もう少し下のランクのカードだと、対象者が「本会員と生計を共にする19歳未満の同居親族」「本会員と生計を共にする19歳未満の別居の未婚の子」など、範囲が狭まります。家族や同伴者がいる場合は、カード付帯の海外旅行傷害保険で、誰がどの程度の補償を得られるのかを確認しておく必要があります。

また、日本では公的医療保険制度(健康保険、国民健康保険等)には海外療養費制度というものがあり、海外旅行中や海外赴任中に、急な病気やケガにより、やむを得ず現地医療機関で診療等を受けた場合、申請すると医療費の一部が払い戻される制度があります。
ただし、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られ、日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に算出した額から自己負担相当額を差し引いた額なので、(海外と国内の医療体制や治療方法等の違いにより)海外での支払総額よりも給付金額が大幅に少ないことがあるということも理解しておきましょう。

3.カード付帯保険の適用可否要件も把握しておきましょう。

もうひとつ、クレジットカード付帯の保険で注意していただきたいことがあります。
クレジットカード付帯の保険には、海外旅行傷害保険だけでなく、クレジットカードで購入した商品の、破損・盗難など偶然な事故による損害を補償するショッピングガード保険なども付帯されています。

ただし、クレジットカード付帯の保険には、保有しているだけで保険が適用される「自動付帯」と、保有しているだけでは適用されず、事前に旅行代金や商品の購入等をクレジットカード決済(利用)しないと適用されない「利用付帯」の2種類があります。最上級クラスのカードでは自動付帯の場合もあるようですが、一般的には利用付帯がほとんどです。出かける前に適用可否の要件等についても確認しておきましょう。


夫が長期の海外赴任となります。届け出や社会保障に関することで注意すべきことはありますか?
海外への転勤も視野に入れて 身の丈にあった保険に変更を考えています
保険を検討したいのですが、どのように考えていけば良いのでしょうか?