南海トラフ地震に関連するニュースが増えてますが、『地震保険』には加入したほうが良いのでしょうか。


今回、回答いただく先生は…
 
髙柳 万里先生(たかやなぎ まり) プロフィール
  • 地震による火災および延焼・拡大損害等は、火災保険の補償対象外です
  • 地震保険の目的は、生活再建のための経済的負担を軽減することです
  • 各種割引制度が適用されるか確認しましょう

 大野 健さん(仮名)のご相談

最近、南海トラフ地震に関連するニュースを目にする機会が多かったため、6年前の住宅購入時に加入していた火災保険の契約内容を確認したところ、地震保険に加入していなかったことに気づきました。毎月の住宅ローンの支払いがあるため、なるべく保険料の負担を増やしたくないのですが、近年地震が頻発していることもあり、急に心配になってきました。我が家の場合は加入すべきなのかアドバイス頂けたらと思います。また、そもそも地震保険とは、どのような状況の時に受け取れるものなのか教えてほしいです。

ご相談者プロフィール

家族構成 住まい等の状況
大野 健さん(本人 41歳 会社員) 6年前、千葉県内に新築一戸建て住宅購入
住宅ローン:返済期間35年(大野さん70歳まで)
火災保険契約あり
地震保険加入なし
子2人

地震大国である日本に暮らす上で、地震保険は重要視すべき保険です。

大野さん、この度はご相談ありがとうございます。

今まで、地震保険への加入について検討されたご経験がないとのことですので、ぜひこの機会に十分ご検討されることをお勧めします。まずは地震保険の概要からご説明します。

地震保険とは?

『地震保険に関する法律』
第1条 この法律は、保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする。

地震保険は、上記法律に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同で運営している制度です。地震災害による被災者の生活の安定に寄与することを目的とし、保険料は各社共通となっています。地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失によって、保険の対象である建物または家財が損害を受けた場合に保険金を支払う保険です。保険金は、実際の修理費ではなく、損害の程度に応じて、地震保険金額の一定割合を支払うこととなっています。

地震保険の対象

地震保険の対象となるのは、居住用建物または家財です。建物・家財ごとに火災保険の保険金額の30~50%に相当する額の範囲内で、地震保険の保険金額を設定します。なお、建物5,000万円、家財1,000万円が限度となります。

保険金の支払い

保険金は、ご加入の保険金額や損害の程度によって異なります。一般的には、損害の程度に応じて、全損、大半損、小半損、一部損の割合で保険金が支払われます。

地震保険の支払金額

【地震保険の支払金額】

損害の程度:全損、建物:地震保険金額の100%(時価が限度)、家財:地震保険金額の100%(時価が限度)。損害の程度:大半損、建物:地震保険金額の60%(時価の60%が限度)、家財:地震保険金額の60%(時価の60%が限度)。損害の程度:小半損、建物:地震保険金額の30%(時価の30%が限度)、家財:地震保険金額の30%(時価の30%が限度)。損害の程度:一部損、建物:地震保険金額の5%(時価の5%が限度)、家財:地震保険金額の5%(時価の5%が限度)。

火災保険で地震による火災を補償しない理由は、大地震発生時には通常よりも火災発生件数が増加するだけでなく、消防能力の低下等により焼失面積も著しく大きなものとなるため、火災保険で想定していない大規模な火災損害が発生することから、火災保険の補償からは除外して、政府のバックアップのある地震保険で対応することとしています。また、地震保険の保険金額が、火災保険の保険金額の50%までしか契約できない理由は、巨大地震が発生した場合でも保険金のお支払いに支障をきたさない範囲内での引受とするためと言われています。

地震による火災は、火災保険だけでは補償されません

令和6年能登半島地震の際は、地震による火災のために約300棟が延焼した甚大な被害が報じられました。特約などのプランにもよりますが、原則として、地震による火災は火災保険では補償されませんのでご注意ください。地震による損害への備えは、地震保険で備えるのが合理的です。

地震保険の加入目的

地震保険のご相談を受けた際に『自宅を再建できるほどの保険金が出ないなら、地震保険に入っていても意味がないのでは?』と聞かれることが度々ありますが、そもそも地震保険とは『生活再建の為の当座の資金』を補償するためのもので、政府が関与している保険です。地震で自宅を失っても住宅ローンは免除されませんので、住宅ローンの返済中である大野さんには、特に地震保険のご検討をお勧めします。

火災保険と地震保険はセットで契約するのが基本です

原則として火災保険とセットで契約するため、地震保険単体のみでは契約できません。通常、火災保険の保険期間中であれば、途中から地震保険を付帯することが可能です。取扱保険会社や保険代理店に確認しましょう。

『免責』にはご注意ください

免責金額(自己負担金額)とは、保険金が支払われる事故や災害が発生した場合において、免責金額として設定された金額については保険会社から保険金が支払われず、契約者が自己負担する金額のことです。

(例)地震により屋根が破損して修理代金が20万円かかった場合
免責金額を5万円に設定している人は、20万円―5万円=15万円
が、保険会社から支払われる保険金額となります。

この場合、受け取る保険金額は少なくなりますが、免責金額を設定することにより、保険料が安くなるというメリットがありますので、保険料の負担をおさえたい場合は検討してみましょう。ただし、実際に災害時に地震保険を使う際に、申込当初、免責金額を設定していたことを契約者が忘れているケースが多く見られますので、思っていたよりももらえる保険金が少なかったとガッカリしたくなければ、免責0としておくのが良いでしょう。

各種割引制度や所得控除制度をもれなく活用しましょう

地震保険の割引制度について

割引制度として、「建築年割引」と「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」の4種類が設けられており、建築年または耐震性能により、居住用建物およびこれに収容される家財に対し10%~50%の割引が適用されます(重複不可)。詳しくは、各損害保険会社の相談窓口または代理店にご相談ください。

【地震保険の各種割引制度】

割引制度:免震建築物割引、割引の説明:対象物件が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「免震建築物」である場合、保険料の割引率:50%。割引制度:耐震等級割引、割引の説明:対象物件が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)または国土交通省の対定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に定められた耐震等級を有している場合、保険料の割引率:耐震等級3-50%,耐震等級2-30%,耐震等級1-10%。割引制度:耐震診断割引、割引の説明:対象物件が地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合、保険料の割引率:10% 、割引制度:建築年割引、割引の説明:対象物件が昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合、保険料の割引率:10%。

地震保険料所得控除制度について

平成19年1月より、地震災害による損失への備えに係る国民の自助努力を支援するため、従来の損害保険料控除が改組され、地震保険料控除が創設されました。これにより、所得税(国税)が最高5万円、住民税(地方税)が最高2万5千円を総所得金額等から控除できるようになりました。

※参考(2024年9月24日時点)国税庁 地震保険料控除

地震保険とは、地震大国である日本で暮らす私たちにとって、優先順位の高い保険の一つと言えます。大野さまの現在のご家庭の状況に合わせて、早急に地震保険の付帯を検討されることをおすすめします。

 

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