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学生ですが、夫も子もいます
保険、教育資金など家計をどう組み立てればいいのでしょう?
山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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松田陽子さん(仮名)のご相談
お互い貯蓄もないまま結婚・出産。
夫の月給に変動があり、家計をどうしていいかわかりません。
まだまだ私自身子供なので、無知過ぎて税金やら保険やらわけがわからずにいます。
実の父をすでに亡くし、母がパートで学生の妹を養っている状態なので、実家には頼れません。私自身も来年の春まで学生なので、学費の45万円を母に借りたままで、いずれ返さなくてはなりません。
子供を育てるにあたってもこれからどう節約して、どう教育資金をつくっていいのか…
不安だらけです。
どうか宜しくお願いします。
松田さんのプロフィール 22歳、学生。22歳の会社員の夫とお子様(1歳)との3人暮らし。
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支出項目別に適正な額まで節約し、 貯蓄を増やして余裕資金を確保
家計支出の見直しで貯蓄を増やす(表1)
まだまだ遊びたい年頃で、子育てしつつ、家計をやりくりするのは大変ですが、随分頑張っていらっしゃいますね。全体的に見て上手に家計運営されています。お母様の苦労を見ていらっしゃるので、堅実に暮らしていらっしゃるのでしょう。少し見直せば、家計運営も楽になると思いますので、安心してください。
<松田さんの家計のいいところ>
- 住宅費が手取り年収の21%と負担が小さい。
- 住宅ローン以外のローンがない(母親からの借入は除く)。
- 天引き貯蓄をしている。
- 毎月の赤字幅が少なめ。
<松田さんの家計の課題>
- 貯蓄額・貯蓄残高が少ない。
- 住宅ローンが変動金利タイプなので、金利が上昇すれば返済額が増える。
- 築年数の古いマンションなので、大規模リフォームや建替え・住替えの資金が必要
- 大人2人と幼児にしては食費が多め。
- 電気代と通信費も多め。減らせる余地があるのではないか。
- ご主人の死亡保障額が少ない。
若くして結婚しているので仕方ないのですが、貯蓄残高30万円では、病気やけが、収入減、臨時出費があったときのことを考えると心配です。最低でも100万円の蓄えは必要。まずは100万円を目標に貯蓄を増やしていきましょう。お母様から借りている学費は少しでも早く返済したいところですが、今は自分たちの家計を軌道に乗せることが先決です。学費の返済に関しては、貯蓄残高が100万円を超えたら、月1万円ずつなど、少しずつ定期的に返済するから待って欲しい、ということを伝えておいてはいかがでしょうか。
将来、お母様に何かあったときには、逆に松田さんからの援助が必要になるかもしれません。そのときに、自分たちの生活で手一杯で手助けできない・・・とならないよう、常に余裕資金を準備しておくことを心がけましょう。
貯蓄を増やすためには、収入を増やすか支出を減らすことが必要です。当面働く予定はないとのことですので、方法は支出削減のみ。生活費の節約はなかなか難しいものですが、働く代わりに節約で稼ぐつもりで、工夫してみてください。
手取り月収25万円が収入の最低ラインという前提で、項目ごとに家計の見直しと予算立てをしていきます。収入が多い月は、その分を楽しみ貯蓄として貯めておいて、レジャー費や臨時出費への備えとして取っておくといいですね。
●食費
ある調査によると、大人1人分の一ヶ月の食費の目安は1万5,000円。お子さんはまだ小さいので、大人向けの食材を工夫することもできるはず。外食を含めて4万円を目標に支出削減を。食費を節約するには、なるべくでき合いの惣菜などを利用せず、ひとつの食材を複数の料理に使いまわすこと。料理の腕もあがるので一石二鳥では?
●電気代・通信費
一般的に戸建てよりマンションの方が電気代はかからないはずなので、月1万円はやや多め。通信費2万円も、契約方法や携帯電話をなるべく使わないなどの努力で減らすことは可能です。節約術などを参考に2割減をめざしましょう。
●レジャー費
まだ遊びたい年頃とは思いますが、レジャー費の予算は月5,000円程度にして、少ない月と多い月とメリハリを付けましょう。収入が多い月は、レジャー費を多めに使うというように、調整項目として使ってもいいかもしれません。お子さんが小さいうちの遠出は、親子ともに疲れるものです。当面は近くの公園にでかけたり、公的機関を利用したりするなど、お金がかからないレジャーを楽しんでは?
●保険料
生命保険は入り方の工夫で、現在より少ない保険料で大きな保障を得る事が可能です(詳しくは次の項目で)。また家を買ったら住宅保険には必ず入っておきましょう。マンションは戸建てより保険料は安めで、建物と家財の住宅保険に地震保険をつけても年間保険料は3~5万円程度です。
●雑費
雑費には生活用品代や医療費等も含まれていると思いますが、平均3万円というのは多いと思います。何となく使ってしまっている使途不明金や陽子さん個人の支出も含まれているのではないでしょうか。陽子さんの小遣いを5,000円程度別に予算立てして、個人的な支出はそちらでまかなうようにすると、使いすぎが防げます。雑費の予算を月2万円、ボーナスから5万円とし、余ったら貯めて次回に備えることにしてはいかがでしょうか。
●子ども用貯蓄
お子さんが3歳になるまで月1万円、それ以降月5,000円の児童手当が受け取れるはずなので、その分はなかったものとして子ども用貯蓄に取り分けておきましょう。ただしこれだけでは教育資金に足りないので、陽子さんが働き始めたら上乗せを。
上記の見直しにより、月3万円(子ども用貯蓄を除く)、ボーナスから20万円、合計で年間56万円の貯蓄が可能になります。2年間頑張れば、とりあえずの目標額100万円は達成できます。
ただし、この100万円というのはあくまで万一に備えるお金。このほか、自動車買換え資金(ローン借入はなるべく避けること)、お子さんの教育資金の上乗せ(児童手当分だけでは足りない)、住宅資金(リフォームや買い替え資金)、そして老後資金と準備すべき資金はまだまだあります。100万円達成したら気がゆるんで貯蓄できなくなった、ということがないようにしてください。
2.夫に万一のことがあったときの死亡保障と生命保険の見直し
松田さんのご主人は厚生年金に加入されていますが、厚生年金加入者である夫が亡くなったときには、妻は手厚い保障が受けられます(図表2)。
まず遺族厚生年金として、過去の平均年収の約1割(年額)が、ずっともらえます。夫の過去の収入によりますが、現状では年間で約30万円くらいでしょうか。また子どもが18歳になったあとの3月まで、つまり高校卒業時までは、遺族基礎年金も受取れます。遺族基礎年金額は、18歳までの子が1人のときは約102万円、2人なら約125万円です。
さらに、遺族基礎年金が受取れなくなったときに妻が40歳以上なら、65歳まで中高齢寡婦加算が受取れます。しかし陽子さんは、若いときに出産していて、お子さんの高校卒業時にはまだ30代なので、残念ながら中高齢寡婦加算は受取れません。ただし、今後陽子さんが2人目を出産して、2人目の高校卒業時に40歳以上であれば、中高齢寡婦加算も受取れることになります。
ご主人が厚生年金加入者なので、万一のとき陽子さんは、月額換算で約10万~11万円の遺族年金が受取れるわけです。また住宅ローンには借入人であるご主人の死亡保障がついているので、ご主人死亡後はローン支払いが免除されます。さらにご主人の死亡後は保険料の支払いやこづかいなどがなくなるので、生活費は現在より少なくなるはずです。死亡保障額を考えるときには、こういった遺族年金額や、ローン免除なども考慮して金額を設定します。
それでは、陽子さんのご主人には、いくらぐらいの死亡保障を準備すればいいでしょうか。保険金として準備しておきたいのは、年金だけでは不足する生活資金と、お子さんの教育資金です。生活資金としては、お子さんが独立する年齢になるまで約20年として、毎年100万円×20年で2,000万円。それに、お子さんの教育資金として、一人当たり約1,000万円とすると、合計で3,000万円が最低ラインということになります。これに今後陽子さんが働いて得る収入を加えれば、生活に困ることはないと思われます。
現在加入されている保険は、死亡保障額が少なく、また今後更新時には保険料負担が増えるタイプです。この機会に保険料の負担増がないシンプルなタイプへの見直しをお勧めします。
死亡保障3,000万円を一般の定期保険で準備すると、保険期間25年で、月額保険料は一番安い保険会社でも、約5500円です。しかし、年々保障額が少なくなる「収入保障保険」や「逓減保険」などで準備すれば、当初保障額を4,000万円程度に設定しても、保険料は月額3000~4000円で済みます。また、医療保障についても、生きている限り保障が続く終身医療保険でも、入院時日額5,000円タイプなら月額保険料1,500円くらいで加入できます。複数の保険を扱っている代理店などで、いろいろな保険の見積もりを取って、見直しをしてみてください。
これらの見直しにより、当初死亡保障額4,000万円、入院時日額5,000円の保障が、月額5,000円程度の負担で準備できることになります。陽子さんとお子さんが加入する共済の掛金を含めても、家族全員の保障は月額8,000円で準備できるので、保険料を月額約3,000円節約できます。
3.就職について
収入が伸び悩む一方で、税金や社会保険などの負担が重くなりつつある現状を考えると、ご主人だけの収入で家族全員の生活を支えるには限界があります。今は生活と子育て、そして通学に手一杯でしょうし、これから2人目、3人目を持つ事になるかもしれず、すぐには働くことまで考えられないことと思います。お子さんが保育園に入りやすくなる3~4歳になったら、短時間勤務からでいいので働き始めることをお勧めします。
若くして結婚・出産を済ませた、ということは、子育てに一段落するのも他の人より早くなるということです。働ける期間もそれだけ長くなるので、収入と生きがいの両方を得ることができる仕事を探してください。