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子どもが生まれたので、保険に入ろうと思います。
どんな保険にどのくらいの保障で加入すればいいでしょうか?
臼井 悦子先生 (うすい えつこ) プロフィール |
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稲葉 まどかさん(仮名 30歳 専業主婦)のご相談
今年5月に長女を出産しました。それまで共働きで働いていましたが、妊娠をきっかけに私は会社を辞め、専業主婦になりました。これまで、保険にはまったく入っていませんでしたが、娘が生まれてから、主人にもしものことがあったらどうしようと不安になり、保険に加入しようかと考えています。
いまは賃貸住まいですが、何年か先には住宅を買いたいので、そのための貯蓄もしています。2~3年後にもうひとり子どもがほしいと思っており、その後、私もまた働いて収入を増やしたいと思っています。それまでは、いまのペースで貯金を続けるためにも保険料はなるべく抑えたいです。どんな保険にいくらぐらい入れば安心か、アドバイスをお願いします。
稲葉さん(仮名 30歳)のプロフィール 世帯年収 (税込) : 650万円
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保険選びの目安は、死亡保障額と入院費用、定期的な見直しも忘れずに
ご主人に万一のことがあったときのために4,000万円程度の死亡保障の保険に、入院などに備えて日額5,000円程度の医療保障の保険にご夫婦それぞれで加入しておきましょう。
1.妻の働き方で必要な保障額は大きく変わってくる
稲葉さんは、お子様が誕生され、保険への加入を考え始めたとのこと。ご主人が亡くなったり、高度障害状態になったときに、約束した保険金が支払われる死亡保障の保険は、残された家族が生活を維持していく上でとても助かるものです。生活費やお子さんの教育費などが、それまでに蓄えた貯蓄、遺族年金、そして奥様自身の収入などでカバーできない分を、生命保険で受け取れるようにしておくのが基本です。保障が必要な期間は、お子様が独立するまで、または奥様が亡くなるまでとするのが一般的です。
死亡保障の保険には、一生涯の保障が得られる終身保険と、子どもが独立するまでなど一定期間のみ保障が得られる定期保険の2つのタイプがあります。遺族の生活費や子どもの教育費目的で加入するなら、定期保険が適当です。
では、万一のときにいくら受け取れるように加入すればいいでしょうか。ここでは、奥様が女性の平均寿命86歳までに必要な保障額を試算してみたところ、4,128万円となりました。これは、現在の生活費をベースにいくつかの条件を仮定して出していますから、少し設定を変えただけで、その金額は大きく変わってきます。とりわけ影響が大きいのは、奥様の年収をいくらにするか、です。先ほどの4,128万円、というのは奥様の収入を毎月15万円として計算しています。これを毎月10万円にすると6,228万円と必要な保障額は増え、逆に収入が20万円になると2,028万円と少なくなります。奥様はいずれ働くお気持ちがあるとのことですので、月15万円の収入を見込み、4,000万円程度の定期保険に加入されるとよろしいかと思います。他の支出入項目の内訳を下の表で紹介していますので参考にしてください。
●稲葉家の必要保障額
◇支出子ども 独立まで | 子ども 独立以降 | 合計 | |
23年間 | 33年間 | ||
生活費 | 4,556万円 | 4,670万円 | 9,226万円 |
住居費 | 3,036万円 | 4,356万円 | 7,392万円 |
教育費 | 1,000万円 | 1,000万円 | |
支出 合計 | 17,618万円 |
※子ども23歳で独立まで生活費は現在の7割。以降は5割と仮定
住居費は現在の家賃を維持
子18歳まで | 妻65歳まで | 妻65歳以降 | 合計 | |
18年間 | 17年間 | 21年間 | ||
遺族基礎年金 | 1,836万円 | 1,836万円 | ||
遺族厚生年金 | 756万円 | 714万円 | 882万円 | 2,352万円 |
中高齢の寡婦加算 | 1,003万円 | 1,003万円 | ||
妻自身の老齢年金 | 1,659万円 | 1,659万円 | ||
妻の収入 (月15万円) | 3,240万円 | 3,060万円 | 6,300万円 | |
収入 合計 | 13,150万円 |
◇貯蓄
貯蓄額 - 死後整理費用 300万円 = 340万円
◇必要保障額 = 支出合計額 - (収入合計額+貯蓄) = 4,128万円
なお、保険料を抑えたいなら、保険金をいちどに受け取らず、毎月いくらというように年金形式で受け取る収入保障保険を検討されてもいいでしょう。同じ保険金額なら、定期保険より保険料は低くなるのが一般的です。また、定期保険、収入保障保険のなかには、身長・体重や煙草を吸わないなど、保険会社所定の健康状態を満たせば保険料が割り引かれるリスク細分型の商品もあります。各社で条件が違うので検討してみるといいでしょう。
2.公的な健康保険でカバーされる部分も多い医療の保障
病気やケガで入院が長引いたり、治療費がかさんだときのためには、ご夫婦とも備える必要があります。そうはいっても、それほど高額な保障は必要ありません。健康保険の対象になる治療でしたら、かかった医療費の3割負担ですみますし、高額療養費制度を利用すれば1か月に支払う治療費も8万円プラスアルファと、それほど高額にはなりません。また、治療のため会社を長く休むことになり、収入がなくなった場合には給与1日あたりの3分の2相当額が健康保険から支払われます(下表参照)。
●病気やケガになったときに利用できる公的健康保険の制度
どんなとき | 利用できる給付 | 概要 | 給付対象とならない 場合 |
長期間休んだとき | 傷病手当金 | 病気やケガで働くことができず、3日間連続して会社を休んだ場合、4日目以降から最長1年6カ月まで、給与1日あたりの3分の2相当額が支払われる | 休んだ期間で、会社から傷病手当金を上回る報酬が支払われたとき |
治療費が高額になったとき | 高額療養費制度 | 1か月に支払う入院費や治療費が高額になった場合、およそ8万円程度を自己負担とし、それを上回った分は払い戻される(あらかじめ手続きしておけば、自己負担分のみの支払いですむ) | 食事代、治療に必要のない個室代、健康保険対象外の治療など |
こういった健康保険での給付があることを考慮すると、ご主人、奥様とも、入院1日あたり5,000円程度が支払われる医療保険を目安に加入されるといいでしょう。健康保険が適用されない治療を積極的に受けたい、病室で静かに過ごすため個室を利用したいなら、日額1万円をお勧めします。ただし、家計に負担がかからない範囲の保険料に納めましょう。
医療保険では、入院した場合に支払われる入院給付金の日数には制限があり、1回の入院で60日、120日、通算して1095日などが多くなっています。入院が長引き、限度日数を超えてしまうと、超えた分の入院給付金は支払われません。近年、入院日数は短くなっていますので、1入院60日が適当でしょう。
また、保障の対象をガンだけに絞ったガン保険というのもあり、ガンと診断確定されたときに診断給付金が支払われ、日数に制限なく入院給付金が支払われるのが一般的です。ガンでの治療費の負担が心配で、家計に余裕があるなら、医療保険に加えてガン保険への加入を検討するのもいいでしょう。
いずれも、5年、10年など一定期間ごとに更新する定期型と保障が一生涯続く終身型があります。高齢になるほど入院する率が高くなるため、終身型を基本に考えるといいでしょう。
3.保険は定期的に見直してこそ力を発揮するもの
いったん保険に入った後も、定期的な見直しが必要です。たとえば、死亡保障の保険では、子どもが生まれたら生活費や教育費が増えるので必要保障額を増やす必要がありますし、保障のついた住宅ローンを利用して住宅を購入すれば、、住居費分だけ必要保障額は減らせるはずです。ほかにも、下の表のような変化があったときが見直し時です。
●保険の見直しが必要なとき
どんなとき | いまと比べて必要保障額は |
子どもが生まれた | アップする |
子どもが独立した | ダウンする |
住宅ローンを使って住宅を購入した | ダウンする |
生活費が増えた | アップする |
子どもの進学コースの変更 | アップまたはダウンする |
貯蓄額の変動 | アップまたはダウンする |
妻が働きだした | ダウンする |
共働きだった妻が仕事を辞めた | アップする |
保障額を増やす時は、あらたに保険に追加して加入するか、いまの保険の保険金額を増やす「増額」をします。この場合、追加分の保険料は、加入時の年齢で計算されるため、既加入のものより割高になるのがふつうです。また、健康状態を保険会社に告知または診査する必要があり、場合によっては加入を断られたり、条件付きの加入になる場合があります。
保障額を減らす場合は、いまの保険を「減額」することで対応できます。ただし、300万円、500万円など保険会社が定めている最低保険金額を下回る減額はできません。
医療保険については、見直す必要はそれほどありませんが、保障内容に特徴のある医療保険が登場することも多いので、2~3年にいちど、またはお子様が進学するときなど節目のときに、どんな医療保険があるかをチェックするなどしてみるのもいいでしょう。
保険を選ぶ時には、その仕組みを理解するためにも、パンフレットを読んだり、営業員やコールセンターなどに不明点を尋ねるなどの努力は欠かせません。いくつかの保険の情報を見ることができたり、まとめて資料請求できるサイトなどを活用するのも効率的です。