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汀 光一先生 (みぎわ こういち) プロフィール |
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森本 隆史さん(仮名)のご相談
今の年収と保険の掛け金とのバランスが取れているのか。また、生命保険の内容が適切であるかのアドバイスをいただきたいのです。生命保険料などで無駄がないか見直しをしてほしいのですが。 また、教育資金の額が適切であるかもお願いいたします。
森本さん(仮名)のプロフィール | |
32歳男性、会社員。奥様(30歳、主婦)と2歳になるご長男との3人家族。世帯年収は、550万円ほど。住まいは社宅。 |
毎月の家計
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ボーナス
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※生命保険、車のローンについては月割り、税金・社会保険料は毎月分も便宜上ボーナスから支出とします。また、毎月及びボーナスの黒字の88%を貯蓄すると仮定して計算しています。
今のうちに節約を心がけ、特約を中心に保険の見直しを
人生設計を実現するには奥様が働くことも必要
人生設計を実現するには奥様が働くことも必要
ご主人は、お子さんもまだ小さく、これから家庭を支えていく大事な時です。40歳時には3,000万円の住宅の購入をご希望です。自己資金として1,000万円、その他親からの援助などで200万円、合わせて1,200万円を用意し、あとは住宅ローンを組む予定です。また、時期は未定ですが、もう一人お子様をご希望のご様子から、お子さま二人分の教育費など、将来の支出の増加にも耐えられるような家計管理をしていく必要があります。従って生命保険は現時点で必要な保障額だけ無理・無駄なく掛けていくことが重要になってきます。
自分にあった生命保険を考える場合、年収と保険料のバランスをみるというよりも、ご自身に万が一のことがあった場合の遺族の生活に対しての思いや考え、その際の家計の状況などを再確認していただくことが第一歩です。そこから、具体的な生命保険の加入目的と実際に加入されている保険の保障内容が合っているかどうかを見直していくことが可能になります。したがって保険の見直しの結果は、同じ年収の方でもお一人お一人違ったものになります。
●ご主人の保険加入状況と注意点
(1) 保険種類 5年毎利差配当付きステップ払終身
(2) 死亡保険金額 180万円 (主契約と特約それぞれ保険金の病気死亡時の金額を合計してください。収入保障特約の年金、三大疾病(特定疾病)保険特約なども加えてください)
(3) 契約日:平成15年 ご主人30歳時
(4) 契約形態:保険契約者(保険料を払っている人)=ご主人 被保険者(保険の対象になってる人)=ご主人 死亡保険金受取人=奥様
保険期間:終身 特約の保険期間は10年の更新型。
(5) 年間保険料:当初10年間30万円
払込期間:65歳まで。
※ステップ払のため、10年のステップ期間終了後、終身保険の保険料も上がります。
(7) 40歳更新時の保険料:54万円
※そのまま更新すると保険料が大きくアップします。ただし必要保障額が減少していれば、保険金は減額して更新してよいのです。また、終身保険に医療特約が付いている場合は、払込み満了時に残りの期間の保険料を一括で支払いますが、更新型の場合支払う金額が大きくなるのでご注意ください。
(8) 入院特約:病気入院・けが入院・成人病入院・がん入院のそれぞれの給付日額を確認してください。家族型は、夫が万一の場合、妻子の保障がなくなるタイプかどうかも確認しましょう。
子供2人、住宅購入を前提とすると 一人の収入では乗り切れなくなる
まずいただいたデータにより、森本様の家計の状況をまとめてみますと、以下の通りになります。ご確認ください。
現状の収支は(車検代を毎年平均化した場合)年間約68万円の貯蓄をされています。これはお子さんもまだ小さく教育費がほとんどかからないのと、現在社宅にお住まいで、住居費が月1.4万円に安く抑えられていることも手伝っています。今は貯蓄のできる時期ですので、家計を見直して節約し、さらに貯蓄額を増やしていきましょう。
ご希望を考慮した将来の収支は次の「キャッシュフロー表」の通りです。毎年の年間収支・貯蓄残高の推移を表したこちらのような表のことを「キャッシュフロー表」といいます。 物価上昇率を0%、ご主人の給与の上昇率を年1%、貯蓄額550万円のうち300万円の運用率を0.45%としています。
お子様の教育費は、高校まで公立、大学も国立大学に進学するという仮定で設定しました。また、40歳時に住宅を購入する際は、諸費用が価格の6~7%=約200万円とすると、その金額を自己資金から差し引いた1,000万円が頭金、住宅ローンの借入額は物件価格からその頭金を差し引いた2,000万円となります。これを35年の固定金利型住宅ローンの元利均等返済、金利3%で借りると仮定して計算してみました。購入後の固定資産税を含む維持費は、年間45万円としています。
将来の収支は、住宅を購入する年と、ご長男が大学に進学される時期は、年間収支が赤字になりますが、預貯金を取り崩すことでカバーできます。しかし、将来もう一人お子様が生まれた場合には、二人とも大学に進学される時期は、貯蓄残高も底をつき、教育ローンを利用しなければならなくなってしまいます。その時期、奥様もお勤めされて収入を得るなどの方法が必要になってきます。
また、住宅ローンの繰上げ返済用の資金を貯めることができないと、定年後も住宅ローンの返済がそのまま残ってしまいます。住宅ローンは、繰上返済を活用し、ご主人の定年までには完済するようにしていくなど、返済に無理が生じないように計画することが大切です。
万一に備えた保険は、特約の契約の仕方を再検討
次に現状でご主人が万一の場合、家計状況はどのように変化するでしょうか?イメージしてみましょう。奥様とお子様は、奥様の実家に引越し、奥様は新たにお勤めをされて、60歳まで毎年120万円の収入を得ると仮定してみます(給与の上昇率を年1%)。また、遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されるようになります。一方の支出は、生活費が減少し、住居費、ご主人の生命保険料の支払いはなくなります。帰省の費用も、初年度は引越し代になりますが、次年度からは必要なくなります。車のローンは残りますが、生命保険金で返済できるでしょう。
万一の場合の収支表 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
毎月の家計
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保険金
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上表の「万一の場合の収支表」をもとに、毎年の収入と支出の金額を次に表にしました。 なお今回は、ご主人が万が一の場合の、ご希望の住宅購入は考慮しておりません。 |
万一の場合の今後の貯蓄残高推移表=「死亡後のキャッシュフロー表」
次に現状でご主人が万一の場合の必要保障額を表したものが下記の表です。毎年かかるものは、現在から平均余命までの累計の金額を計算しています。 そして、必要な資金から、既に準備されている資金を引いたものが不足額=必要保障額です。
必要資金+諸費用―準備済資金=必要保障額
万一の場合の必要保障額の推移表
現在の必要保障額は、534万円で、加入している終身保険が180万円ですので、他に加入している定期保険特約などがなければ、354万円足りないということになります。それ以上の保険金に加入している場合は、減額する方向で見直してみましょう。 ここで注意するのは、この必要保障額は今年に限った金額ということです。 同様に、万一が来年の場合、再来年の場合、……5年後の場合、10年後の場合……は、平常時のキャッシュフロー表を作成してから、対象の年を起点にして再計算します。
現状の保険の問題点は
- ご主人の保険は、特約が10年更新型で保険金額が多いと思われるので見直して、減額するか、他の安い定期保険に変えることで今後の保険料を安くできないか。
- 医療特約が更新型なので、65歳の払込満了時に一括で支払う特約保険料の金額が大きい。 という点が挙げられます。
必要保障額と既加入の死亡保険金合計額の差額が見直し保険金額です。
そして、ご主人が万が一の場合も住宅購入の希望をそのまま考慮する場合や、お子さんがもう一人お生まれになった場合は、改めて必要保障額を計算して、保険を見直す必要があります。
見直しの主な方法(ご契約のしおり・約款をご参照ください)
(1)現在保険金額が多い場合
定期保険特約・特定疾病特約の一部解約・減額・払済保険・解約などの方法があります。ご主人の保険に定期保険特約や特定疾病保障定期特約、総合障害保障定期特約の部分などが付いていれば減額する方向で検討しましょう。 定期特約だけを減額できない場合や減額金額に制限がある場合は、定期特約を解約し別の会社の定期保険に加入するのも方法です。約款に書かかれていれば、基本的にできますので保険会社に問い合わせてみましょう。
(2)保険金額が足りない場合
特約の中途付加・中途増額・新規契約などの方法があります。新規に契約する場合は、会社にグループ保険があれば一番安く加入できます。また、グループ保険がない場合でも同じ定期保険で共済を含めて数社比較して、安いものに加入するとよいでしょう。新規の保険の保険料が安い場合、加入した後、保険料の高い今までの定期保険を減額すれば、保険料を抑えることができます。
(3)保険料の負担を軽くしたい場合
減額・払済保険・延長保険・解約・払込期間の変更などの方法があります。予定利率の高い貯蓄性のある保険は残し、定期保険は安いものに替える方向で検討してみてください。また、医療特約より、単体の医療保険に加入したほうが安いケースもあります。
まとめ
現在、定期保険特約が付いている場合は、その保険料より安い他の定期保険に加入して、これまでの定期保険特約は解約または限度まで減額する方向で検討しましょう。会社に安いグループ保険があればそれに加入したり、割安な逓減定期保険を利用したりすると全体の保険料をもっと安くできます。逓減定期保険は、必要保障額が減少していくように、毎年保険金が減少していく保険です。
次に、将来お子様が生まれた場合ですが、必要保障額の増加分(教育資金として1,200万円位)を新規に割安な定期保険に加入されればよろしいと思います。10年更新の場合は、更新時に、必要保障額が減少したのに合わせて死亡保険金を減額して、保険料が安くなればその分を貯蓄に回しましょう。
奥様の保険は、まだご長男が小さいので、医療保障が必要です。日額5,000円くらいの終身医療保険に加入するとよいでしょう。また、ご主人の方も、今の年齢で終身医療保険に加入すると、あとの保険料は一定ですので、まず終身医療保険に加入した後で、医療特約をやめるのもひとつの方法です。
ただし、終身医療保険に加入した場合は、途中で解約して他の医療保険に乗り換えてしまっては逆に支払い保険料が高くなる結果になりますので注意してください。また、貯蓄を増やして予備のための貯蓄を200万円くらい作って、いつでも引き出せるように普通預金などに入れておくと良いでしょう。貯蓄は、入院しなければそのまま残りますし、将来の医療費や介護費用の不足に役に立ちます。 さらに、森本様ご夫婦の保険は、今後も生活設計の変化により、定期的な見直しをされることをおすすめいたします。