目次
国際結婚で、リタイア後の年金はありません。
将来に備えるには何をすればいいでしょうか?
山根 克規先生 (やまね かつのり) プロフィール |
|
中田 亜希子さん(仮名 31歳 会社員)のご相談
夫婦そろって消費型で、収入があればあるだけ使ってしまうタイプなので、なかなか貯蓄できず困っています。いい方法はないでしょうか?また次の点についてもアドバイスいただければ助かります。
((1)) 子供の教育資金の貯蓄法でおすすめのものは?
((2)) 生命保険・年金保険はどのようなものに入ったらよいか。
中田さんのプロフィール 世帯年収 : 1,140万円(手取)
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
20年後が一つの区切り、そこを意識したライフプラン作りがポイント
内容を拝見しますと、世帯収入も高く、貯蓄の努力もされ、大変立派だと感じました。と同時に、さらにコツをつかまれたら、かなり素晴らしい家計になるのではないかと思います。
というのも、中田さんご自身も把握できていない「使途不明金」も結構あるようです。収入の高い方に良く見受けられる傾向ですが、油断は大敵です。
将来の事を考え、ちょっとした努力が必要ですね。
ぜひ明るく、充実した人生のためにも、楽しみながら頑張りましょう。
ライフプランニングの重要性
まずマネープランを考える上で大切なのが、「ライフプラン」です。そもそもお金は生きていくための「手段」です。ですので、どう生きるかによってマネープランも変わります。
例えば高級マンションに住みたい方と田舎暮らしがしたい方では必要な資金も違います。高級外車に乗りたい方と、車が必要ない方でも全く違います。中田さんのように将来ご主人の母国でリタイアをご希望されている方には、それに見合ったマネープランが必要になります。
ライフプランは具体的であればあるほど良いです。
例えばお子さんお一人お一人の進学プラン、車の購入計画、リタイアの時期、その後の生活内容など具体的であれば、資金計画もより具体化してきます。もちろん将来のことなので、ズレも生じてきますが、計画が明確になればなるほど、実際にはそのズレが小さくなるものです。そして定期的にライフプランを見直してみましょう。
中田さんが特に計画すべきはお子さまの教育資金と、リタイアした後に必要な資金です。特にリタイア後に関しては、ご主人が年金制度に加入されていないため、より綿密な計画が必要です。とにかく大きな資金が必要な時期、金額を明確にして下さい。毎月の収支でやりくりできる教育費などはここでは、あまり細かく考えない方が良いでしょう。
正確にすることも大切ですが、計画を立てるのがイヤになっては意味がありません。正確な数字を出したいなら、プロに作ってもらうのが早いでしょう。ここではご自身で把握できるようにアドバイスしたいと思います。
貯蓄は目的を持って、計画的に
ライフプランができたら、いよいよマネープランです。
ただ闇雲に貯蓄すれば良いというわけではありません。ライフプランに基づき、いつまでにいくら必要なのかが見えてくると、逆算して毎月の必要積立額がわかります。例えば10年後に学費が200万円必要であれば、年間20万円、月々1万6,000円以上となります。
中田さんに必要な資金の目的は教育、住宅ローン繰上げ返済用、リタイア後の資金、車などの耐久消費財、そして不測の事態に備えた1年間分くらいの生活費です。この各項目毎に必要な金額を計算、そして既に準備された貯蓄を各項目に振り分け、不足金額を期間で逆算して、毎月の積立額を割り出します。きっと結構な金額になるのではないでしょうか?
そしてここで重要なのが、まず世帯収入からこの必要積立額を引いた金額が、中田さんが生活費として使える金額です。 現状の支出から計算して、いくら貯蓄できるかを考える方がいらっしゃいますが、それは大きな間違いです。 サラリーマンや公務員のように努力ですぐに収入が上がらないお仕事の場合は、収入から将来に備えた積立額を引いた残りの金額が生活費とするべきです。
もしその金額で生活できないということであれば、どこかに無理があります。ライフプランなのか、金額設定なのか、それとも生活費が高いのか・・・理想と現実にはギャップがあるものです。それを認識し、修正を加え、徐々に実現可能なライフプラン、マネープランを練り上げましょう。
将来に備えることは、今の生活に多少なりとも我慢が必要になります。
目標=夢を持つことで、その我慢も苦痛はきっと少なくなると思いますよ。
貯蓄目的に選ぶべき金融商品は?
さて金融商品を検討する際に金融商品を大まかに分類することで検討しやすくなります。代表的な分類が「流動性」、「安定性」、「利殖性」です。
流動性が高い商品は、いつでも動かせるが、金利は低い。普通預金など、すぐに使うお金を預けておくのに適していますが、多すぎたらお金が殖えないため、資産運用に支障をきたします。
安定性が高い商品は、約束の期間据え置くことで、中程度の金利を受け取れるが、途中解約などの際に元本割れを起こすリスクがあります。債券、積立型の保険など一定期間使う予定の無いお金を入れておくのに適していますが、金利の低い時に購入すると、一般的に最後までその金利ですので、お金は殖えません。金利の高いときにお勧めです。
利殖性がたかい商品は、値動きが大きく、大きく殖やすことも可能ですが、大きく元本割れすることもあります。よって短期の資産運用には適していません。長期的な視野に立った資金計画には適していますが、購入するタイミングも大きく左右しますので、慎重に検討が必要です。株式や株式投資信託などがこれに当たります。
では資金目的毎に、もう少し詳しく考えてみましょう。
教育資金
高校まで特別な学校に進学させるおつもりがないようでしたら、特に考えるべきは大学進学に係わる費用です。 入学金、授業料などを年度毎にいくら必要なのか考え、逆算して積立額を考えます。
金融商品としては10年か15年後に必要な資金ですので、安定性を重視しながら、一部利殖性を交えながらの運用が良いでしょう。細かいことが面倒であれば、金利が低い現状ではあまりオススメではありませんが、学資保険を各自に契約するという方法も良いでしょう。その際は貯蓄性を重視して、色々な特約は付加しないことです。というのも特約はほとんどの場合掛捨て(保険ですからね)ですので、必要ないものまで契約するとお金の無駄になります。
住宅ローン繰上げ返済用
これはリタイア時期と大きく係わります。
お子さんが独立した後、ご主人の母国で生活される事をお考えですので、その時期までにはできれば住宅ローンの返済を終えていることが重要です。現状では残り34年のローンがありますが、一番下のお子さまが大学を卒業するまで20年ですから、14年のギャップがあります。母国に帰国した後の住宅ローン返済は、生活に大きな支障があると思いますので、それまでに終わらせるように計画が必要です。
シミュレーションすると住宅購入費のローン返済額に加え、毎年返済と同額の元本分77万円を繰り上げていくと18年で完済できます。
その後も残ったリフォームローンに、住宅ローンで支払っていた返済金額、並びに毎年繰り上げ返済してきた77万円を合わせて繰り上げ返済すると35年の予定が21年程度で全てが完済されます。 つまり現状の住宅ローン支払額に、プラス年間77万円程度でお子さま独立後には住宅ローンも完済できるわけです。
繰り上げ返済用の貯蓄には、すぐ使えるように流動性の金融商品、普通預金などが最適でしょう。また繰り上げ返済は各金融機関で手数料がかかるもの、かからないものがありますので、それも考慮に入れて繰り上げましょう。もし手数料がかからないようでしたら、毎月でも繰り上げ返済したいですね。
リタイア後の資金
これは20年以上先に必要な資金ですので、ある程度リスクをとりながら資産運用をする必要があります。つまり利殖性金融商品である投資信託などが有効ですね。特に長期の資産運用では、物価上昇(インフレ)リスクに対応しないといけませんので、預貯金といったものでは対応できません。また金利が高い時期であれば債券などの安定性の金融商品を加えるのも良いでしょう。
それから予定通り住宅ローンが完済できれば、住宅を賃貸させることで、不動産収入も得られます。これもリタイア後の大切な収入源となります。それゆえ住宅ローンの早めの完済が大切になってきます。
車などの耐久消費財
これも数年に1度出費するものですから、積立の定期預金など天引で計画的に準備しましょう。
不測の事態に備えた資金
これは病気やケガ、その他リストラなど不測の事態に備えて生活費の1年分ほどあれば一安心です。いつ使うかわかりませんので、定期預金などで準備しておきましょう。
以上のように目的に応じて、適した金融商品をチョイスして下さい。
万が一の保険もライフプランが基本
最後に生命保険ですが、これもライフプランが基本です。
というのも万が一の際に経済的に困らないために生命保険に入るわけですが、その際に考えるのは、ご主人がいないと仮定したときのライフプランになります。万が一の際にも経済的に困らなければ、生命保険は必要ありませんが、困るようでしたら、その金額を算出して生命保険に加入しなければいけません。
計算手順は以下の通りです。
まずはご主人がいないと仮定した場合に必要な生活費を算出します。その際、中田さんが平均寿命以上に生きると仮定して計算しましょう。お子さんが独立するまでは、養育費も必要ですが、独立後はお一人の生活費となります。
次に準備済み資金を計算します。
一般的には公的年金から遺族年金が残された配偶者やお子さまに支給されますが、ご主人はご加入ではないので、その分保険の必要性が高まります。他に会社からの退職金や弔慰金、中田さんご自身の収入、預貯金などの金融商品です。
必要生活費から準備済み資金を差し引いたものが必要保障額となります。
たぶんこれからお子さんが大学を卒業するまでは結構な金額が必要になりますが、その後は随分楽になると思います。よって、その間をカバーできる保険をご検討されたらよろしいかと思います。
そのためには定期保険がお勧めです。これは一定期間の保障を目的としたもので、安い保険料(掛金)で高い保障を得ることができます。掛捨てですので、あくまで保険としてお考え下さい。先ほども述べましたが、貯蓄性の保険は金利の高いときには有利ですが、低金利の際にはお勧めではありません。保険は保険として割り切りましょう。
なお必要保障額の計算は少し知識も必要ですので、保険の専門家や保険に詳しいFPにご相談される事をお勧めいたします。
とにかく目的を明確にし、将来を見据えてライフプラン、マネープランが出来るようになれば、家計も劇的に変化すると思いますよ。