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山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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及川慎也さん(仮名)のご相談
社会に出てから、ずっとA社の生命保険(定期保険)に加入していましたが、結婚したのを機に、同社の夫婦の保険定期+終身タイプに切り替えました。 先日、更新の連絡があり見積もってもらったところ、現在の条件と同一だと掛け金が倍となり、色々見直しても1万円強アップとなるとのこと。
条件が折り合わないので解約を申し出ると、「今までの貯蓄があるから当社では安く支出を抑えられるが、他社に切り替えると、非常に保険金が高くなり不利」と言われました。 下取り?制があるのなら保険を他社にすると損なのですか? 死亡保障については、末っ子が後10年で(うまくいけば)大学卒業予定なので、それまでは継続したいと思います。夫3,000万円、妻500万円なら、妥当でしょうか? 入院特約は入院5日からなのですが、損ではありませんか?
長期入院についても考慮しないといけないでしょうか? この契約は他社には無いとのお勧めですが・・・受取金を多くもらえれば確かにいいけれど、そんなにメリット有りますか?
及川さん(仮名)のプロフィール | |
45歳男性、会社員。奥様(42歳、主婦)と15歳の長男と13歳次男の4人家族。世帯年収は、700万円ほど。持ち家 ローンあり。 |
・家計状況
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保険会社を変えてもそれほどの損はないので夫婦別々に最適な保険を選んで入るのがオススメ
1.現在の保険の内容と問題点
現在、及川さんが入っている保険は、いただいた資料から、本人の定期付き終身保険に特約で奥様の死亡保障と医療保障が付いている下図のタイプの保険(特約は10年更新)と思われます。この場合の問題点は3つあります。
A.同じ内容で更新を続けると、今回だけでなく、今後10年ごとに保険料アップ。
死亡保障はあと10年くらいでほとんど必要なくなるが、医療保障は高齢期ほど必要。また、保険料は年をとるほど上昇率が高くなるので、退職後、収入が少なくなったときに、更新ごとの保険料アップは大きな不安材料。
B.及川さんに何かあったときには、それ以降奥様の保障がなくなってしまう。
妻の保障が続けられるタイプもあるが、保障内容が選べない場合も。
C.奥様の保障内容は、主契約の保険期間や保障内容によって規制される。
この機会に、ご夫婦別々の契約で保障を準備されることをお勧めします。
2.保険の下取り制度について
生命保険を下取りして、同じ会社で掛けかえることを「転換」と言います。転換前の保険の積立部分を新しい保険に充当するため、その分支払保険料は安くなります。ただし、別の会社の保険に入りなおすときに、解約返戻金相当額を頭金として充当すれば、ほぼ同じような効果(支払保険料が安くなる)があります。
転換は解約時の手数料が控除されないので有利という考え方もありますが、これから支払っていく保険料総額を考えれば手数料は微々たるものです。他の保険会社で、自分に合った保険が見つかったり無駄な入り方をしないで済んだりするなら、そちらに掛けかえてしまう方が、保障内容の面でもお金の面でも得ということになると思います。
※実際の手続きでは、新しい保険への加入手続きが済んでから、古い保険を解約します。
3.必要な保障と、加入する保険について
次に必要な保障と保険の入り方について考えてみましょう。
まずは及川さんの死亡保障です。奥様は働いていていないため及川さんは一家の大黒柱。もし今亡くなったら困ることは、 (1)住宅ローンの支払い(団信に入っていないので)、(2)お子様の学費、そして(3)遺族の生活費、です。
住宅ローン残高は1,000万円あるので、まず1,000万円(1)は必要です。お子さんはこれから高校、大学とお金が一番かかる時期を迎えます。大学まで考えているなら、高校、大学とそれぞれ年間100万円かかるとして、一人700万~800万円。学費用の貯蓄が300万円あるので、その分を考慮して、計1100万~1300万円(2)必要ということになります。
遺族の生活費については、及川さんは厚生年金加入のサラリーマンなので、万一のときには、奥様は遺族年金(下記a+b)が受け取れます(平成18年度価格/年額)。
a.遺族基礎年金 | 長男が18歳になった後の3月まで | 1,247,900円 |
次男が18歳になった後の3月まで | 1,020,000円 | |
a.中高齢寡婦加算 | 遺族基礎年金がもらえなくなってから妻が65歳まで | 594,200円 |
b.遺族厚生年金 | 条件を満たせばずっと受け取れる 過去の平均給与によるが |
おおよそ 500,000~700,000円 |
ざっと計算すると、遺族年金は月額にして15万円~10万円と予想されます。現在の収入と比べるとかなり少なくなりますが、住宅ローンを返済してしまい、学費の準備もできていることを考えると、実質的な不足額は月10万円程度ではないでしょうか。10万円×12ヶ月×15年(夫60歳まで)と考えれば、不足額は1,800万円。万一のときには奥様も多少働けるなら、生活費として残す額は1,000万~1,500万円(3)と計算できます。
(1)~(3)を合計すると、3,100万~3,800万円。この額が及川さんに必要な死亡保障額ということになります。
新たに加入する保険としては、
死亡保障(及川さん)
(1) | お子様が独立するまでの10年間、上記金額の定期保険に入る。 今後の貯蓄状況等によって途中減額可。更新時に減額しても |
(2) | 20年くらいの保険期間で、収入保障保険に入る。 (月額15万円タイプなら、当初死亡保障額は約3,600万円。一時金受け取りも可) |
毎年死亡保障額が減っていくため、同じ保障額の定期保険に入るより保険料が安くなる。
必要保障額は年々減っていくことを考えると、合理的な入り方。
奥様の死亡保障はお尋ねのとおり、500万円程度で大丈夫でしょう。
死亡保障(奥様)
お子様が独立するまでの10年間くらい、定期保険で準備。その後は死亡保障なしでも可。
最後に医療保障についてです。医療保険改正や、高齢者医療保険制度の新設などで、高齢期の医療費負担が増えると予想されるので、基本的な医療保障は準備しておきたいものです。現在のような10年更新タイプでは、60代以降の保険料アップで継続が難しくなるおそれがあるので、今のうちに夫婦それぞれが終身タイプの単独の医療保険に入りなおすことをお勧めします。
若いときに加入した医療保険が5日型でそれを継続するメリットがあるなら、中長期の入院に備えるという意味で5日型でも構わないと思います。ほとんどの医療保険では、手術給付金は入院給付金の条件を満たしていなくてももらえますから。ただし、入院の短期化が進んでいることを考えると、新たに入るなら短期入院から保障するタイプがいいのではないかと思います。医療保険は、入院日額、給付金の支払限度日数、上乗せの保障など、選べる範囲が広くなっています。不安だからと、やたらと保障内容を充実させてしまうと、当然のことながら保険料は高くなるので、負担できる保険料との兼ね合いを考えて選びましょう。長期入院に対する備えですが、ないよりはあった方がいいのはもちろんですが、医療保険改正により、病院側の事情で長期入院させてもらえなくなるかもしれません。介護や在宅療養でも使えるよう、最低限の医療保障を確保したら、あとは預貯金で医療や介護に備えるべきではないかと思います。
医療保障(及川さん、奥様)
終身タイプの医療保険に加入。入院日額は5,000円~1万円。特定疾病など、特別な病気の保障を厚くする特約を付けても。
高齢者の医療費負担増を見込んで、各社それぞれユニークな医療保険を発売しています。数社の商品を比べて、じっくり選んでください。
ご参考までに、お勧め加入例と保険料例は以下のとおりです。 | |||||||||||||||||||||
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※夫の死亡保障①と妻の死亡保障は5社、それ以外は2社の保険料の最低と最高の保険料月額を提示 | |||||||||||||||||||||
※医療保険は終身医療保険。保険料は終身払い込み。解約返戻金・死亡保険金なしのタイプ |
加入方法によっては、これまで払っている保険料より高くなる場合もありますが、古い保険の解約返戻金は手元に残りますし、将来の保険料負担増の心配はありません。また、死亡保障が必要なくなったあとは、夫婦で「月額1万円+α」で一生涯の医療保障が得られます。