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医療保険を選ぶ際、解約返戻金あり、なしのどちらを選ぶのが良いでしょう?
山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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高橋 一郎様(仮名 35歳 会社員) のご相談
医療保険に入ろうと思っていますが、解約返戻金ありとなしの2タイプを提示されています。
目先の保険料が安い「解約返戻金なし」タイプの方がよさそうですが、お金が貯まる「解約返戻金あり」タイプも魅力的です。
どう考えたらいいでしょうか?
高橋 一郎さんのプロフィール 世帯主の職業 : 会社員 |
現役引退まで安定した収入があれば、貯蓄をするつもりで解約返戻金ありも
公的医療保険制度の改正が続き、将来的には医療費の負担増も心配されています。将来の医療費の負担や、病気やけがで入院したときの収入減に備えて医療保険に加入したいとのこと。保険は保障額が多ければ安心ですが、その分の保険料を負担しなければならないので、今後の家計状況なども考えながら保険を選んでください。
医療保障の必要額について
高橋様は会社で協会けんぽに加入されていますので、病気やけがで入院したときには、公的医療保険からの給付が受けられます。公的医療保険が適用される医療費については3割を窓口で負担しますが、1カ月の医療費がかさみ下記の上限を超えたときには、超えた分が払い戻されます。「一般」に該当する収入を得ている場合、たとえば医療費が100万円かかったときの上限は、8万7,430円{8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%}です(下表参照)。
70歳未満の場合の医療費の自己負担限度額(1カ月あたり)
外来・入院(世帯ごと) | |
上位所得者 (標準報酬月額53万円以上) | 150,000 円+(総医療費-500,000 円)×1% 〈83,400 円〉 |
一般 | 80,100 円+(総医療費-267,000 円)×1% 〈44,400 円〉 |
低所得者 (住民税非課税者) | 35,400 円 〈24,600 円〉 |
つまり、どんなに重大な手術を受けて入院しても、医療費自体の負担は1カ月あたり8万円程度ということです。大企業などの健康保険組合や公務員の共済組合には、付加給付と言う制度があり、1カ月の上限が2~3万円という場合もありますから、医療保障を考えるときには、自分が加入している制度の内容を把握しおくことが必要です。前述程度の支出なら預貯金で対応できるということであれば、医療保障(医療保険)はいらない、という考えもあります。
しかしながら、病気やけがで入院ということになれば、差額ベッド代や食事代、その他入院雑費などの費用がかかります。長期療養となれば、収入が減ってしまうこともあるでしょう。そんなときに医療保険に加入していれば、経済的な心配をせずに治療に専念できます。若年世代や働き盛りの世代では、将来のために貯めていた貯蓄を使ってしまうことに不安を感じることもあるようです。
高橋様は収入減や差額ベッド代が心配とのことですので、万一に備えて入院日額5,000円から1万円の医療保障を準備されておいてもいいと思います。
解約返戻金ありとなし、どちらがいいか
高橋様が検討されている2タイプの医療保険を見てみましょう。
保険会社(D社) | Aタイプ | Bタイプ | |
解約返戻金の有無 | 解約返戻金なし | 解約返戻金あり | |
入院給付金日額 | 10,000円 | 10,000円 | |
保険期間 | 終身 | 終身 | |
保険払込期間 | 終身 | 60歳 | |
年払保険料 | 45,650 | 112,750 | |
支払総額 | 70歳 | 1,597,750 | 2,818,750 |
80歳 | 2,054,250 | 2,818,750 | |
解約返戻金 | 70歳時解約返戻金 | 0 | 2,229,400 |
80歳時解約返戻金 | 0 | 2,061,580 | |
実質負担保険料 ※1 | 70歳時 | 1,597,750 | 589,350 |
80歳時 | 2,054,250 | 757,170 | |
実質負担年間保険料 (実質負担保険料/年数) |
70歳時 | 45,650 | 16,839 |
80歳時 | 45,650 | 16,826 |
※事例は35歳男性、日額1万円を比較
※1:Aタイプは「その年齢までの累計保険料」。
Bタイプは、「60歳までの累計保険料-解約返戻金」の額
Aタイプは解約返戻金のない、いわゆる掛捨ての終身医療保険で、年払い保険料は45,650円。一月あたり約3,800円です。入院日額5,000円タイプであれば、1,000円台の負担ですみます。
一方Bタイプは60歳までに保険料を払い終えるタイプの終身医療保険で、途中で解約すると解約返戻金が払い戻されます。こちらの年間保険料は112,750円で、一月あたり約9,400円。入院日額5,000円でも4,700円ですから、保険料負担が重く感じられることでしょう。しかし、将来解約して解約返戻金を受取るのであれば、実質の保険料負担は年間2万円弱まで下がります。
高齢化の影響などもあり、ご存知のように高齢者といえども長期に入院することが難しくなってきました。家計に保険料を払い続ける余裕があり、また70~80歳で解約して、そのお金を自宅療養や老後資金に使うと考えるなら、Bタイプは若いときには医療保険を得つつ高齢期に備えた貯蓄ができる商品と考えることができます。
現在の高橋様の家計状況を見る限り、年11万円程度の保険料は十分払い続けることができると思われますので、保障と貯蓄を兼ねたBタイプを選んでも大丈夫だと思います。保障額をいくらに設定するかは、前述のような観点で考えてみてください。