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森田 和子先生 (もりた かずこ) プロフィール |
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遠藤沙也香さん(仮名 31歳 会社員)のご相談
最近、職場の同僚がけがで入院するのを見て不安になってきました。医療費の自己負担には上限があると聞いているのですが、もしも今、私が入院することになったら限度額はいくらになるのでしょうか。病気をした場合に備えてまとまった金額を準備しておく必要はあるのでしょうか。
遠藤沙也香さんのプロフィール
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高額療養費制度があるので、1か月あたりの負担は10~13万円程度。
ただし、限度額適用認定証を提示しておかないと後日精算となります。
ただし、限度額適用認定証を提示しておかないと後日精算となります。
こんにちは、遠藤さん。ご相談ありがとうございます。もしも入院した場合のお金は気になりますが、高額療養費制度を知れば、不安を減らすことができるはずです。どのような仕組みなのか、医療費の負担はどれくらいになるのかについて確認していきましょう。
高額療養費制度を利用すれば医療費の負担は限度額まで
高額療養費制度は、医療費が高額になっても自己負担が重くならないように上限額を定めた健康保険の制度で、限度額は年齢と収入によって違います。下の表は69歳以下の方についての表です。これを見ながら確認していきましょう。
標準報酬月額 | 年収の目安 | ひと月の上限額 | 多数回該当 |
---|---|---|---|
83万円~ | 1,160万円~ | 252,600円+(医療費―842,000円)×1% | 140,100円 |
53~79万円 | 770~1,160万円 | 167,400円+(医療費―558,000円)×1% | 93,000円 |
28~50万円 | 370~770万円 | 80,100円+(医療費―267,000円)×1% | 44,400円 |
~26万円 | ~370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税 | 35,400円 | 24,600円 |
遠藤さんは上から4番目の欄「標準報酬月額 ~26万円」に該当します。ひと月あたりの上限額は57,600円ですが、これは健康保険の対象になる医療費の上限です。入院で個室や少人数の部屋を利用する場合の差額ベッド料、健康保険の対象にならない手術や薬等の医療費を含めることはできません。これらの費用が高額になることを心配するかもしれませんが、基本的には患者の承諾が必要なので、費用を負担できるかどうか考えた上で利用すればよいでしょう。
また、入院時の食事代も対象外です。食事代については1食あたり460円(※)を負担するので、1日3食とすれば1か月間(30日間)で41,400円となります。医療費のひと月の上限額と30日間の食事代を合計すると次のようになります。
57,600円+41,400円=99,000円
健康保険の対象になる医療を受ける限り、遠藤さんの場合は入院の自己負担の目安はひと月あたりおよそ10万円だと考えてよいでしょう。とはいえ、収入が増えれば上限額は上がります。また、将来制度が変更される可能性もあることは頭に入れておきましょう。
(※一定の所得以下等の条件を満たすと軽減されます。)
ひと月は1日~末日まで
注意が必要なのは「ひと月」の範囲です。高額療養費制度では、ひと月を1日~末日の間としています。例えば、入院期間が6月1日~6月30日の30日間であれば、遠藤さんの医療費の上限は57,600円ですが、同じ30日間であっても6月15日~7月14日であれば、6月と7月のそれぞれの月で57,600円となります。状況にもよりますが、もしも入退院の日を選べるのであれば、月をまたがない方が有利だと言えます。
また、過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」とみなされ、ひと月の上限が下がります。遠藤さんの場合は44,400円となります。
限度額適用認定証があれば窓口でも限度額まで
高額療養費制度は、基本的には支払った医療費のうち、限度額を超えた分が後から支給される制度です。支給されるまでの3か月間程度は自分で負担しなければなりません。支給されるまで建て替えるイメージです。もしも数十万円を建て替えるとなれば、大きな負担ですね。
ところが、健康保険組合から限度額適用認定証を交付してもらい医療機関に提示すると、はじめから限度額を超える請求はされません。本人が入院して申請できない時には、家族等の代理人ができる場合もあります。
遠藤さんには貯蓄もあり、入院してもすぐにお金に困る状況になるとは考えられません。 むしろ、一人暮らしでは、自分自身が動けない時に手続き等を誰に頼むのかについて考えておくことも必要でしょう。