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昨年結婚、来年の出産を機に保険加入を検討中。
我が家にピッタリの保険は?
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
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鈴木 智治さん(仮名 25歳 会社員)のご相談
昨年結婚して、来年には子供も生まれます。 今まで2人とも若くて健康ということもあり、生命保険には加入していませんでしたが、子供の誕生を機に加入を考えています。 しかし、TVCMや雑誌など見てもどれも良さそうに思え、保険ショップも何店舗か回ってみましたが、それぞれのお店で違う保険を勧められ、ますます迷ってしまいました。 我が家に最適な保険を教えてください。
鈴木 智治さん(仮名 25歳 会社員)のプロフィール
その他
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独身気分は捨て、まずは家計の見直しから。
保険選びは保険料負担を軽くして貯蓄優先に
保険選びは保険料負担を軽くして貯蓄優先に
鈴木さん一家の場合、まだお二人ともお若いので、多分独身気分が抜けていないことと思います。これから先の長い夫婦生活では、計画的なお金の管理が必要です。
問題点としてまず注目したいのが、貯金が40万円しかないことです。
アクシデントが少し重なったらすぐに消えてしまう金額です。生命保険は貯金がなくても身体に何かあったとき経済的に困らないようにするために加入するものですが、アクシデントは身体的なトラブルだけではありません。
冷蔵庫が壊れた、洗濯機が壊れた、冠婚葬祭の出費など突然の出費はたくさん予想できます。
そんな時にはクレジットカードのリボ払いがあるというような考えに傾きがちな人が多いのですが、借金であることには変わりありません。ましてやマンション購入という大きな目標があるのですから、まずは貯蓄を増やすことを考えていただければと思います。
現在と同じ毎月5万円の貯蓄を続けていった場合、マンション購入目標である10年後までに
5万円×12ヶ月×10年=600万円
しか貯まらず、現在の40万円と合わせても640万円にしかなりません。
頭金を500万円払ったら140万円しか残らず、引越し費用や家財購入費用などの出費を考えた場合、とても心細い金額といえます。
鈴木さんご夫婦は二人の月収が42万円あり、家賃と貯蓄を引いても29万円も残ります。食費・小遣い・趣味・洋服代など減らせるものがきっとあるはずです。家計簿をつけたり、毎月の生活費を袋分けしたりするなどして出費をコントロールし、毎月の貯蓄額を捻出してください。
ボーナスからの貯蓄が0万円というのも問題です。ボーナスは基本的に支給額が予測できるものではないので、貯蓄目標を立てにくいのですが、この金額以上が支給されたら全額貯蓄しようというようなやり方で是非貯金していただきたいものです。
今後お子様にかかる費用もどんどん嵩んでいきます。
まだ遠い将来と思われているかも知れませんが、夫婦お二人で働けるうちに貯められるだけ貯めておくことが、幸せな老後生活を送れるかどうかの鍵となるのです。
死亡保障を考えましょう。
被保険者が死亡・高度障害状態になったときに保険金が支払われる保険です。死亡保障を考えるときに一番重要なのが、やはり貯蓄の金額です。貯蓄がいっぱいあれば、一家の稼ぎ手がいなくなっても家計は困らないからです。
鈴木さん一家の場合共稼ぎなので、ご主人・奥様どちらか一方でも仕事ができなくなれば家計への影響があるので、お二人それぞれの保障が必要なケースかと思われます。
ではどんな商品が鈴木様にピッタリなのか判断するポイントを考えてみましょう。
1 保障金額はいくら必要か?
必要保障額という言葉を聞いたことがありますか?
万が一の場合に、これだけあれば遺された家族が経済的に困らないで生活していける、という金額です。この金額を決めるためには、お二人でよく話し合うことがとても大切です。保険会社の人にこの金額の算出を依頼すると、将来のイベントや夢をあれこれ聞かれ、そのトータル金額をそっくりそのまま必要保障額にして保険金額が高くなってしまう場合があるので要注意です。
保険はあくまでも万が一のための備えなので、必要最低限な金額に設定しておいた方がいいでしょう。保険金額が高ければ高い程当然保険料も高くなるので、保険料はなるべく低く抑えてその分貯蓄に回したほうがいいからです。
必要保障額が決まったら、そこから貯金と死亡退職金・遺族年金の額を引けば保険金額が決まります。死亡退職金・遺族年金の金額がわからなければ会社の総務部に訊いてみてください。
2 どんなタイプの保険にするか?
保険は大きく分けて定期保険と終身保険に分けることができます。
定期保険は決まった保険期間を1日でも過ぎたら何の保障もなくなってしまい、解約返戻金もないので「掛け捨て保険」と言われています。
これに対して一生涯の保障と途中解約した場合でもお金が戻ってくるのが、終身保険です。
当然同じ保険金額なら終身保険の保険料の方が高くなります。
経済的に余裕があれば、終身保険をお勧めしますが、鈴木さんの場合は貯蓄を重視し、保険料を少しでも安くする必要があるので、定期保険の方がいいのではないかと思います。
定期保険だと保険期間が満了して更新する場合保険料が高くなってしまいますが、更新時の必要保障額はお子様が増えたなどの事情がなければ、ほとんどの場合当初加入時より低くなっているので、それ程の負担にはならないでしょう。
また保険会社によって呼び方は様々ですが、定期保険の一種で収入保障保険があります。万が一のことがあった場合、保険期間が満了するまで毎月あるいは毎年、契約時に決めた金額が支払われるという保険です。
例えば鈴木さんのご主人に万が一のことがあった場合、ご主人の月収22万円からご主人の毎月の生活費分を引いた額を毎月保険会社から支払われるようにしておけば、家計のダメージを最小限にすることが可能です。
この保険は通常の定期保険と違って、保険期間が経過すればする程、万が一のことがあった場合に保険会社が支払う保険金の総額がどんどん減っていくので、保険料が安く抑えられています。
仮に30年の保険期間で毎月の保険金支払額を10万円にした場合、契約日の翌日に事故が起こった場合に保険会社が支払う保険金総額は
10万円×12ヶ月×30年=3,600万円
ですが、25年後に事故が起こった場合は保険期間の残りが5年なので、
10万円×12ヶ月×5年=600万円
と時の経過とともにどんどん減っていくことになり、保険会社からするとどの時点で保険金支払事由が発生した場合でも契約時と同じ保険金を支払わなければならない定期保険に対して、保険料を安く設定することができるのです。
因みに、あるネット生保で見積もりを取得してみたところ、25歳で毎月10万円の収入保障保険を30年契約した場合の保険料は30年間毎月2,410円ですが、3,600万円の定期保険(30年満期)だと毎月5832円と倍以上の開きがあります。
保険期間の満了をお子様の就職時などに設定しておくのも有効な加入方法です。
鈴木さんの場合貯蓄重視の観点からすると、定期保険か収入保障保険に加入するのがいいと思います。
あとは数社見積もりを取って保険料を比較してみるといいでしょう。
ネット生保も検討してみてください。
医療保障を考えましょう。
1 高額療養費制度を理解しましょう。
現在日本の健康保険にある制度で、健康保険で治療を受けた場合、月々の自己負担限度額が設定されています。
鈴木さんの場合、概ね一月約8万円が治療費の上限となるため、保険治療を受けている限りそれ以上の負担はありません。またお勤めの会社によってはこの8万円がもっと低額の負担で済んでしまう場合があるので、会社の健康保険制度を確認してみてください。仮に月々の負担上限が2万円で済むような会社なら、医療保険は必ずしも必要ではないかもしれません。医療保険に掛ける保険料を貯蓄することによって、十分カバーできる可能性があるからです。
もっとも入院した場合の差額ベッド代や雑費、保険適用外の治療を受けた場合の治療費はすべて自己負担となるので、医療保険に加入した方が安心ではあります。
2 どんなタイプの保険にするか?
貯蓄とのバランスを考えてやっぱり医療保険が必要であると思った場合、これからが悩むところです。
入院日額いくら必要か、何日型の保障をつければいいのか、定期にするか終身にするか、特約はどれを選択すればいいのかなど非常に迷うことでしょう。
ここで参考になるのが、厚生労働省「平成20年患者調査」です。
この調査によれば30~49歳(男女)の20年間の平均入院回数と1入院あたりの入院日数は、入院が1.28回で、日数が21日となっています。すなわち滅多に医療保険のお世話にはならないのです。
個人の考え方次第ではありますが、鈴木さんの場合、貯蓄する必要があること、20代と若いことから考えても、入院日額等については最低限の保障でいいのではないかと思われます。
また終身型の医療保険は若い時に加入した安い保険料が一生涯変わらないというメリットがあります。しかし、現代の医学の進歩は目覚ましく、保険の保障内容が必死に医学を追いかけていっている現状からすると、定期保険で保険料を抑えた方がいいのではないでしょうか。
現在各保険会社は医学の進歩によって日々変わっていく治療方法に合わせた新しい特約を次々に考えだして、従来の契約に付加できるような方法をとっています。新しい契約と比べるとどうしても見劣りしてしまうからです。
但し、定期保険を選択した場合重要なのは、どんな健康状態でも自動更新できるか否かという点です。
仮に10年の保険期間で更新時に入院していた場合でも、無条件で更新できる保険を必ず選択してください。保険加入時は原則健康でなければ契約できないからです。
税制適格特約付個人年金保険に加入しましょう。
支払った保険料を原資にして将来年金を受け取る保険ですが、実際には将来のための貯蓄と思ってください。
鈴木さん一家の場合、貯蓄が必要だということは前述の通りで、かなり先のことではありますが、老後のための貯蓄も当然必要なのです。
40年以上先のための貯蓄なんて考えられないと思うかもしれませんが、少しでも早くからコツコツ始めておくことが重要です。長い時間を利用した複利効果が期待できるからです。
またこの保険は一般の生命保険とは別枠で個人年金保険料控除があり、とても大きなメリットがあるのです。
鈴木さんの場合、ご夫婦でそれぞれ年間8万円以上の保険料を支払った場合、現在の収入で1人あたり所得税・住民税合わせて6,800円税額を軽減することができます。
2人合わせて13,600円、節約して貯蓄したご褒美に美味しい食事をしてもいいでしょうし、更に貯蓄に回すのもいいでしょう。
但し、途中で解約した場合、契約から20年間位は払込保険料を下回った金額しか返ってこないので、無理のない金額で始めることが重要です。
学資保険に加入しましょう。
保険料を原資にお子様の成長の節目に合わせて保険金が支払われる保険です。
いざ高校大学入学といった際に、入学金はどうしようといった心配がなくなるので非常に有効です。
また、契約者が亡くなった場合、以後の保険料の支払をなくす契約も可能なので、死亡保障の額を減らすことも検討可能です。
以前は学資保険といえば、郵便局の独占分野でしたが、最近は民間生保の方が、有利な条件を提示していることが多いので、検討してみてください。
最後に
鈴木さんにピッタリの保険というのは、ご夫婦で話し合って本当に必要だと思った保険なのです。保険会社は保険料収入を少しでも増やしたいので、あれこれ勧めてきますが、惑わされないでください。
個人年金保険と学資保険は貯蓄と考えていいですが、それ以外の保険は必要最小限にしてまずは貯金を増やすことです。
現状で貯蓄額に不安のある鈴木さんの場合、保険より貯蓄が大切であると思い、今回は上述のアドバイスになりましたが、今後貯蓄が増え、経済状態や家族構成などの変化などによっては、柔軟に対応する必要があります。大切なことは、将来を見据えて常に考え直すという姿勢です。
今回まだ若い鈴木さんが保険加入をきっかけに、長い人生を考えていけば、必ず幸せな将来が開けるでしょう。