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この春、社会人になりました。
どのような保険に加入すればよいですか?
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール |
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緒方 美由紀さん(仮名 22歳・会社員)のご相談
この春から社会人になりました。これまで親が私に保険をかけてくれていたようですが、姉が入院したこともあり、自分でも保険については考えていきたいと思いますのでアドバイスをお願いします。
緒方 美由紀さん(仮名 22歳・会社員)のプロフィール
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独身の間は高額な死亡保障は不要、
将来に向けて蓄えをする重要な時期でもあります。
将来に向けて蓄えをする重要な時期でもあります。
1.保険は加入目的を明確にしましょう
緒方さん、こんにちは。春から社会人としてのスタートを切ったばかり。おめでとうございます。今頃は新入社員研修で忙しい毎日を送られているのでしょうか。身体に気をつけて頑張ってください。
さて、社会人になられて早々に保険のことに興味を持たれるとは感心です。お姉様の入院で保険のありがたみを目の当たりにしたのですね。現在親御さんが契約してくださっている保険は「医療特約付き定期保険」といって、5年間のうちに美由紀さんが万が一死亡した場合に死亡保険金が支払われる、または5年間のうちにけがや病気で入院、手術となった場合に入院給付金や手術給付金などが支払われるものです。 大学入学時に加入され、今年いっぱいで保険期間が終了します。
【加入中の保険】
種類 | 保険金額 | 保険期間 | 年間保険料 | 払込期間 |
死亡 医療 | 死亡:1千万 入院:日額5千円 |
5年間 | 36,000円 | 5年間 |
まずは現在お父様が保険契約者になっているので、これを美由紀さん自身に変更してはいかがでしょう。自分で保険料を払うということです。社会人として自立の第一歩といえるのではないでしょうか。
これは単に手続き上の問題ですので、保険会社に連絡をとれば対応してくれます。指示された必要書類や印鑑などを準備しておきましょう。
この保険は今年いっぱいなので、以降をどうするかということになります。
保険の加入を考える際に最も大切なのは、「何のために加入するのか」です。自分に何かあった時に心配だから加入するのですよね。ではその心配は何でしょう。
美由紀さんは独身ですので、万が一死亡されるようなことがあっても、それ自体で生活に困る人はいないはずです。したがって遺族の生活保障のための死亡保障は高額である必要はありません。強いて言えば、葬儀費用のために200万円程度で十分でしょう。
ところで保険には、一生涯保障してくれる「終身保険」と一定期間だけ保障する「定期保険」があります。定期保険はいわゆる掛捨て保険というものです。保険期間終了後に更新することで保険期間を延長できますが、更新時の年齢で保険料が決まるため、更新のたびに保険料は上がっていきます。終身保険は保障期間が一生(掛捨てにはならない)分、定期保険より保険料は高くなりますが、若いうちの加入であれば、保険料も割安です。
美由紀さんの選択肢としては、定期保険で当初毎月1,000円以下でも十分な保障を確保できますのでそれでもかまいません。ただ、掛捨てに抵抗があるようであれば、200~300万円程度の終身保険でも良いでしょう。
割安な分、今のうちからもっと大きな終身保障を確保したほうがオトクではと考えるかもしれませんね。死亡保障には2つの目的があると思います。ひとつは遺族の生活保障として。これは家族構成によって異なります。もうひとつは前述した葬儀費用や死後の整理費用です。こちらは家族構成や時期にかかわらず必ず必要になるものです。
終身保険は掛け捨てでないため貯蓄性がありますが、逆に概ね7~10年未満程度で解約すると元本割れします。したがって定期保険に比べ見直ししにくいというデメリットもあります。
美由紀さんの場合は、今後、結婚するかどうか、子どもを持つかどうか、仕事を続けるかどうかなど、ライフプランがいかようにも考えられます。また資格、語学の勉強や留学などキャリアアップ資金を必要とすることがあるかもしれません。結婚後の保障の心配の前に結婚資金など、いわゆる預貯金(キャッシュ)も必要になるはずです。
したがって、できるだけ見直しやすい保険設計を心がけましょう。その意味からも終身保険で準備するのはベースとして必要な分程度にとどめ、ライフプランの変化に合わせて見直しやすい定期保険で保障の増減を検討することをお勧めします。
2.医療保険は加入をお勧めします
これまで健康で、入院や手術などに縁がなかったとしても、万一の際にご両親に負担をかけないよう、医療保険は加入することをお勧めします。
ただし、医療保険は実はモトがとりにくい保険なので、必要最小限に抑えます。月末に給与明細をもらうと気づかれると思いますが、健康保険料を天引きされています。これによって公的な保障を受けることができます。これをベースに保障内容を検討していきます。
治療を受けた際、窓口で支払うのは3割ですよね。しかし手術や入院となると数十万という治療費となるケースもあります。そのような時でも3割負担しないといけないかというと、そうではありません。高額療養費制度という制度があり、自己負担額の上限を定めています。
自己負担限度額=80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
たとえば100万円の医療費がかかる場合は、3割の30万円を支払うのではなく、
自己負担限度額=80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
となり、約9万円で済むのです。
ただしこの制度は保険診療のものが対象となるので、入院中の食事代や差額ベッド代、その他雑費などは別途かかり、全額自己負担です。そしてこれらの分を民間の医療保険でまかなうと考えれば良いのです。
具体的には入院中の食事は3食で約1,000円程度、医療費が30日で約9万円ということは1日あたり約3,000円、その他雑費などを1,000円程度見積もると5,000円になります。これが入院日額の目安です。
医療保険については、若い世代で健康な人は、「もう少ししてから加入するよ」と思っている方も多いようですが、大病にならなくても(検査で異常が認められると)加入しにくくなったり、加入できても割高な保険料になることも少なくありません。また、女性の場合は妊娠すると原則加入できなくなりますので、特に若い女性の場合は早めに加入しておいたほうが良いと思います。
(※妊娠中も異常なく、出産も普通分娩であれば、その後また加入できます)
医療保険にも終身と定期がありますが、長寿社会の今、終身保険が安心ですね。保険料の払い方は終身払いと一定年齢までで払い終える方法があります。高齢になっても保険料を払うのは負担なので一定期間で払い終えるほうを選択する人も多いのですが、美由紀さんの場合は終身払いでも良いと考えます。
というのも、終身医療保険の場合、その後、新たな保障の保険が出た場合、差額でその保障を付けることができない場合が多いのです。その場合は一度解約して加入し直すことになりますが、一定期間で払い終えるタイプですと、将来の分まで前払いしているので、解約するともったいないことになってしまいます。
美由紀さんの年齢を考えると、まだ医療保険は進化していくと思われます。いつでもやめられるということは見直しがしやすいということ。このような観点でご検討ください。
3.保険ですべてまかなおうと思わないでください
ところで、貯金で必要な金額を手に入れるには、長期間コツコツ貯めていく必要があります。一方保険は、契約すれば短期間のうちに万一のことがあっても、必要な保険金を受け取ることができます。これが保険の大きなメリットです。
ところが保険料は30年以上にわたり払い続けるので、総額でなんと1,000万円以上払うことも普通です。しかし逆に万一のことが無ければ保険金はもらえず、貯蓄するタイプの保険を除いて掛捨てとなってしまいます。
これが預貯金であれば、万一のことが起きた際には万一のために、起きなかった場合は別の目的に使うこともできます。
美由紀さんの場合は、1.でも述べたように、預貯金を増やさなければいけない時期でもあります。したがって保険に掛けるお金は目的を明確にし、必要最小限に抑え、預貯金に回す分もしっかり確保しておきましょう。
また保険は加入したらそれっきりではありません。年代や家族構成の変化によって欲しい保障や欲しい保障の大きさも変化していきます。ですから次は結婚をされた頃に必ず見直すようにしてください。