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子どもが欲しいけど1000万円とも言われる教育費が心配。
どのように準備すれば良いでしょうか?
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール |
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比嘉 美紀さん(仮名 33歳 会社員)のご相談
昨年末に結婚しました。年齢を考えると、できれば2年以内に出産したいと希望しています。現在は教育費に1人1,000万円程の準備は必要という時代なので、正直お金の不安もあります。
私は教育資金=生まれたらすぐに学資保険加入、というイメージでしたが、友人は終身保険に加入したと言っていました。終身保険のほうが学資保険よりオトクなのですか?
どのような方法で準備するのが良いかアドバイスをいただきたいです。
なお、夫の実家が近所で、義母が育児のサポートをしてくれるそうなので、出産しても仕事は続けられると思います。
比嘉 美紀さん(仮名 33歳 会社員)のプロフィール
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安全確実なのは学資保険ですが、
貯蓄体質の家計では資産運用という視点で終身保険も
貯蓄体質の家計では資産運用という視点で終身保険も
学資保険は満期保険金、終身保険は解約返戻金を教育資金に利用します。
比嘉さん、ご結婚おめでとうございます。お子様を持ちたいというご希望は、同時に教育資金の重みを実感せざるを得ませんね。今から意識して準備することはご立派ですし、重要なことです。一緒に考えていきましょう。
まず比嘉さんが疑問に思っていらっしゃる「教育資金準備のための保険は、学資保険か終身保険か」という点についてご説明します。
学資保険はその名のとおり、教育資金準備が目的の保険です。満期日を設定し、それを目指して保険料を払込み、満期が来たら満期保険金を受け取るという非常にシンプルでわかりやすいものです。満期時にはお知らせが届くので請求し忘れもありません。また、契約者に万一のことがあった場合にも、その後の保険料払込が免除になり、保険金を受け取ることができます。
一方、終身保険は一生涯、被保険者(保険の対象になっている人)が死亡または高度障害になった場合に保険金が支払われるものですが、途中で解約した場合「解約返戻金」といって戻ってくるお金があります。この解約返戻金を利用するのが終身保険を使った教育資金準備です。
終身保険は満期がないため、教育資金用とするなら解約したい時期をあらかじめ決め、そこで解約しても元本割れしないよう、逆算して保険料や保険料払込期間を決めないといけません。また解約時は自分で忘れず解約手続きを取る必要があります。
契約がわかりやすいという意味では学資保険のほうがわかりやすいでしょう。
戻り率をしっかり比較しましょう。
もうひとつ重要なことは、払込んだ保険料に対してどれだけ保険金が戻ってくるかということですが、これを「戻り率」といいます。ちなみに、学資保険の場合は戻り率ですが、終身保険の場合はどれだけ解約返戻金が戻ってくるかですので、「解約返戻率」といいます。
戻り率(解約返戻率)が高いほどオトク度が高いといえるので、商品ごとの比較は必須です。これは保険会社に依頼すればすぐにわかりますので、各社出してもらうと良いでしょう。
その場合、必ず条件を同じにしないといけません。比嘉さんの場合であれば、
- 契約者(ご主人)年齢:33歳
- 被保険者(お子様)年齢:0歳 (←生まれたらすぐに加入すると仮定)
- 満期:17歳
- 保険料払込期間:17年払済(月払い)
- 満期保険金:300万円
とすると良いかと思います。
ちなみに満期を17歳としたのは、お子様の生まれ月によっては18歳満期ですと入学金などの払込み期限までに保険金の受取りが間に合わないおそれもあるためです。
なお、保険料払込期間を短くしたり、保険料を一括払いにすれば上記の条件よりも戻り率を高くすることができます。しかし、払込期間を短くすると毎月の保険料が負担となるかもしれませんし、ましてや一括払いは300万円近い保険料を一括で払うことになるため、今、それだけの貯蓄を減らすことはお勧めできません。保険料を最後まで払い切れることが重要ですから、無理のない月払いで試算するのが賢明です。現在の水準であれば、戻り率が108%程度あると高めなほうです。
終身保険の場合は、最近は低解約返戻金型終身保険というのが多く、これは保険料払込期間までの解約においては解約返戻金が少ないのですが、保険料払込期間終了時には解約返戻金は元本割れしない水準になり、その後も解約しなければ年数とともに解約返戻金もアップしていきます。
学資保険の場合は、17年払込みで、払込み終了と同時の受け取りでも108%程度の戻り率となる商品がありますが、終身保険の場合、払込終了から3年程度経過しないと100数パーセントの解約返戻率にならないものがほとんどです。つまり17年後に受け取りたいのであれば、終身保険の場合、14~15年で払込みを終了する必要があり、その分毎月保険料が高くなります。
これらを総合して考えると、教育資金として確実に17歳時にお金を受け取りたいということであれば、終身保険より学資保険のほうが向いていると思います。
貯蓄体質なら学資保険でなくてもOK。フレキシブルに終身保険を利用する手も。
しかし正直なところ、比嘉さんの家計は共働きとはいえ、手取りの約23%を貯蓄に回せていることに感心いたします。しっかりと貯蓄体質の家計ができあがっています。通常はそれがなかなかできないので、保険という手段で強制的に貯めるしくみを作るわけですが、このくらい貯蓄できる家計であれば、保険でなくても準備できそうです。
その場合(保険以外の貯蓄で準備)のリスクは、ご主人に万が一のことがあった時に、準備が間に合わないことです。現在は共稼ぎのご夫婦のみですのでお互いそれほど大きい死亡保障ではありませんが、お子様誕生後は死亡保障としての機能を持った終身保険で300万円程度、保険料払込期間は15年程度の払い済みとし、さらに割安な定期保険で十分な死亡保障を確保する手もあります。
この場合、何らかの事情で貯蓄を教育資金に回すことができないようであれば、終身保険を解約して教育資金に充てることができますし、教育資金が貯蓄で準備できれば終身保険は保険料払込後もそのまま継続して解約返戻金をアップさせる選択が可能となります。お子様が大学卒業後、大学院への進学や留学を希望される場合に使うことができます。もしくは教育資金の目途がつけば死亡保障を減らすことができるので、その時に終身保険を解約して、老後資金に回すことも可能です。
比嘉さんのお宅のように貯蓄体質の家計であれば、敢えて学資保険である必要はなく、フレキシブルに使える終身保険で活用の選択肢が広がります。なお、学資保険では、出産予定日の140日前からの加入も可能です。つまりスタートを早くできるのがメリットです。
運用を取り入れることも検討してみては。
比嘉さんのお宅では、貯蓄はほとんどが預貯金で、いわゆる運用は取り入れていないとのことです。しかし現在、メガバンクの定期預金金利はだいたい0.025%といった水準です。
資産運用ではよく用いられるのですが、資産を倍にするのにどれくらいで運用すると何年かかるかというのをざっくり算出するのに「72の法則」というものがあります。運用(%)×年数=72 という式で導きますが、これに当てはめると定期預金で資産を倍にするには約2,880年。もはや不可能ということです。
これからはいやがおうでも資産運用を取り入れていかないと、教育資金、住宅資金を捻出した後、自分たちの老後資金を準備するのは難しい時代です。とはいえ、できるだけリスクは避けたいですよね。
資産運用は時間をかけることでリスクの軽減を図ることができます。今からスタートすれば10年以上の運用期間があります。教育資金の一部(全部はダメです!)を国内債券型の投資信託(日本の国債や社債を投資対象とする投資信託)や個人向け社債など、定期預金よりも金利が良く、リスクも極めて低めの商品で運用することを検討しても良いと思います。
最後になりますが、比嘉さんのお宅は貯蓄体質の家計を維持できれば、教育資金はもちろん、老後資金も含めた総合的な資産形成プランを立てることも可能です(貯蓄体質の家計というのはそれくらい選択肢があるのです)。早めに考え、早めにスタートし、できるだけ時間をかけた準備ができるようにしていきましょう。