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井上 信一先生(いのうえ しんいち) プロフィール |
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星野 吾郎さん(48歳 仮名)のご相談
大学生の息子が原付を買う予定ですが、単体のバイク保険に加入するのと、私が加入している自動車保険にバイク特約を付けるのとでは、どちらがお勧めでしょうか?
自賠責保険だけでは足りないと思っておりましたが、単体のバイク保険という存在を初めて知り迷っています。また、下の長女もゆくゆくは原付の購入を望んでいるようです。
星野 吾郎さん(仮名)の家族のプロフィール
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補償を手厚くしたり任意で組み立てられるのは単体の保険。特約は自由度は少ないもののケースによっては利便性で優れ割安です。
バイクに乗る場合も自賠責保険だけでは補償が不足
星野さま、ご相談ありがとうございます。
バイク等の二輪車に乗る場合でも、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に加入しなければなりません。もちろん、原付(原動機付自転車)も同様です。ですが、おっしゃるとおり、自賠責保険は自分が加害者となった場合の人身事故(対人賠償)しか補償せず、補償額も最低限に限られるため、足りない分を任意加入の保険で補う必要がありますね。
星野さまは車の任意自動車保険に加入しておられるようですのでおわかりかと思いますが、任意保険を選ぶ際のポイントは、「補償対象(担保種目)」、「補償額」、「補償される人」、そして「保険料」です。車は奥さまやご長男も時々運転されるようですから、「補償される人」、つまり運転者の範囲にこのお二人も含めていると思われます。
基本的に損害保険はその対象となるモノごとに加入するものなので、自動車保険の対象はあくまでも契約車両である車です。運転者が重なろうとバイクや原付は別途、新たな保険に加入しなければなりません。
具体的な保険商品として、単体の任意保険であるバイク保険に加入する方法と、現在の自動車保険にバイク特約(原付等の総排気量125cc以下等の場合の保険は一般的にファミリーバイク特約や原付特約)を付帯して対象を加える方法があり、この方法の違いによって、若干、内容も異なります。
単体のバイク保険とバイク特約の相違点
『単体のバイク保険に加入』する場合は、自動車保険を検討する場合の考え方と概ね同じです。すなわち、契約車両の当該バイクだけを保険の対象とし、バイクの保有者や運転する人が記名被保険者(主たる運転者)として契約し、「補償対象(担保種目)」、「補償額」、「補償される人」等の要素について自動車保険と同じように設計し、最終的には同様の内容で「保険料」の安い商品を選ぶ、といった流れです。
「補償対象(担保種目)」としては、事故を起こした際の「対人賠償補償」や「対物賠償補償」が高額になる可能性があります。また、運転者や同乗者の「死傷害補償」や、保険会社により諸条件はありますが車両の全損時の買い替えや修理費等の「資産損害補償」、さらには事故時の臨時費用やガス欠・タイヤパンク時のロードサービス等の「付帯費用の補償」など、どこまでの「補償対象(担保種目)」を備えるか、これらをひとつひとつ選択し組み立て、必要な補償額(保険金額)を設定して契約します。
一方、原付等の場合で、現在加入している自動車保険に、『ファミリーバイク特約等』を付ける場合は、「補償対象(担保種目)」や「補償額」等が、保険会社による違いはありますが、概ね主契約の自動車保険に応じて決まっています。内容はシンプルに、「対人賠償補償」「対物賠償補償」「自身の死傷害補償」に限定され、例えば、自動車保険における車両保険に該当するような、車両の全損や修理等の「資産損害補償」や、事故による「付帯費用の補償」などは、一般的に補償対象(担保種目)には含まれません。
補償対象などを選ぶ自由度は低いものの、契約に際してはひとつひとつ組み立てる手間はなく、同等の補償内容で比べても単体のバイク保険よりもファミリーバイク特約を付帯する方が、総じて保険料は割安です。
なお、ファミリーバイク特約の「自身の死傷害補償」では、自損事故タイプと人身傷害タイプの2種類があり、そのいずれかを選ぶことになります。自損事故タイプの方が保険料は割安ですが、補償されるのは単独事故の場合だけで、相手のある事故の場合には補償されません。対して人身補償タイプは単独事故でも相手のある事故の場合でも自身の死傷害の補償があり、補償範囲が広い分だけ相対的に保険料が割高となります。
バイク保険とファミリーバイク特約の一般的な補償内容
※保険会社により一部異なります
バイク保険 | ファミリーバイク保険 | |
---|---|---|
対人賠償補償 | 〇無制限が一般的 | ●無制限が一般的 |
対物賠償補償 | 〇任意設定~無制限 | ●任意設定~無制限 |
搭乗者傷害補償 | 〇 | × |
自損事故補償 | 〇 | ● |
人身傷害補償 | 〇 | ▲ ※1 |
無保険車傷害補償 | 〇 | ▲ ※2 |
車両補償 | 〇 ※3 | × |
付帯費用補償 ※ロードサービス等 |
〇 | × |
- ※1 人身傷害タイプの場合に対象(自損事故タイプの場合は補償なし)
- ※2 自損事故タイプの場合に補償(人身傷害タイプの場合は人身傷害補償にて補償される)
- ※3 バイクの総排気量が125cc以下などの場合は付帯不可など保険会社により条件が異なる
適切な選択は変わるので、家族の状況に応じた見直しも必要
ファミリーバイク特約等が、今後も各社で商品改定されないとは限りませんが、現状、この特約は損害保険商品としてはかなり特殊な商品性であるといえます。
まず、保険の目的となるモノが1つとは限らないということ。ファミリーバイク特約に該当するバイク(125cc以下等の原付等)であれば、これが何台に増えようが、他人から借りたものであっても、1つの特約でカバーされます。また、「補償される人」、つまり運転者も事故時の該当家族(同居親族や別居の未婚の子など)であれば誰でも、何人でも、年齢に関わらず(自動車保険では運転者限定特約により対象外の年齢の方も含めて)、追加の通知は不要で補償の対象となります。よって、ゆくゆくご長女も原付を運転されるのでしたら、ご長女の原付も自動的にカバーしてくれる訳です。
次に、任意自動車保険では一定の事故で保険金が支払われると、ノンフリート等級制度により更新後の保険料が上昇しますが、ファミリーバイク特約等にはこの適用がありません。よって、ご長男が事故を起こしても、ファミリーバイク特約の特約料はもちろん、星野さまの自動車保険の保険料が上がることはありません。
逆に、ファミリーバイク特約等の特約料は長期契約による割引はなく、無事故でも翌年の特約料が下がることはありません。一方、単体のバイク保険では自動車保険と同じくノンフリート等級制度が適用されるので、事故を起こさない優良運転者であれば、補償の手厚い単体のバイク保険であっても、長期的にはファミリーバイク特約よりも保険料が安くなる可能性があります。
このように、単体のバイク保険とファミリーバイク特約等とでは商品性が異なるので悩ましいところです。どちらか一方を安易にお勧めできるというものではありません。
しかし、考え方として、補償の充実を求める場合や必要に応じて任意に組み立てたい場合は単体のバイク保険を選択することになるかと思います。数年程度でなく長く乗り続ける予定やツーリングなどの遠乗りをする場合も単体のバイク保険の方が安心かもしれません。もちろん、将来的に排気量125ccを超えるバイクに乗る場合や、お子さまが結婚された場合、将来もバイクには乗るが車は購入せずご自身で自動車保険に加入されないような場合は、単体のバイク保険一択となります。
一方、単体のバイク保険は自動車保険と同じく運転者の年齢に応じて保険料率が変わり、事故を起こすリスクの高い若い世代は保険料が高くなる傾向があります。
当面の保険料を重視するなら、バイクに乗りたてのうちは年齢に関わらず特約料が一定で、事故で保険金を請求しても翌年の特約料が上がらないファミリーバイク特約等を選択することになるでしょう。ご長男だけでなくご長女も原付を購入された場合も、各々で保険を検討する必要はありません。
運転する方の状況や環境の変化によって、適切な補償も適宜、変わっていくものです。まだお子さまが学生の間は、星野さまのように親が保険について悩み、契約者として保険料を負担するケースも少なくありません。やがてお子さまが経済的にも独立された後は、こうした経験を子に教え引き継いでいくものです。
変化に応じて、その時々で保険商品を見直していけば良いのではないでしょうか。
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