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マイホーム購入で、減税や補助金などがあると聞きました。
どんなものがあり、条件や制限はあるのでしょうか?
村井 英一先生 |
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伊藤久美子さん(仮名 42歳 会社員)のご相談
そろそろマイホームを購入しようかと考えています。マイホームを購入すると、減税だとか、補助金だとか、いろいろな優遇策があると聞きますが、しょっちゅう制度が変わっているようです。今はどのような優遇策が使えるのでしょうか?そして、期限はあるのでしょうか?
伊藤久美子さん プロフィール
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ご家族の状況や収入、購入・借り入れ額で減税・給付額も変わります。
だからといって、優遇策に惑わされないように。
だからといって、優遇策に惑わされないように。
1.期間限定の優遇策として、「住宅ローン控除」と「すまい給付金」があります。
住宅の購入は大きな〝投資〟です。住宅の購入をする人が増えれば、引っ越しに伴う家具や家電の購入など消費が促進され、景気にも好影響です。そのため、政府はいろいろな〝優遇策〟を用意しています。それぞれ条件がありますが、適用できるものはうまく活用したいものです。
ただ、この優遇策、景気対策や消費税引き上げ対策として、たびたび条件や適用額が変更になっています。それだけにわかりにくく、いざ住宅を購入する際に改めて確認する必要があります。ここでは、現時点での制度をご紹介します。いずれも、記載以外にも詳細な条件がありますので、利用される際にはご確認ください。
まず、住宅購入で一番恩恵が大きい優遇策が、「住宅ローン減税」です。マイホーム取得のために返済期間が10年以上の住宅ローンを組むと、毎年の残高に応じて、所得税や住民税が減税となります。その方の所得やローンの金額によっても異なりますが、所得税が0となる人も少なくないぐらい、メリットが大きい制度です。期間限定の制度ですので、ご注意ください。
- 適用対象:自宅の購入のための住宅ローン(2021年までに入居)
- 減税期間:10年間
- 減税額:年末の住宅ローン残高の1%
- 対象となる住宅ローンの上限額:一般住宅は4,000万円まで、長期優良住宅、低炭素住宅(エコ住宅)は5,000万円まで。
住宅ローン減税は収入が大きい人(=所得税が多い人)が、大きなローンを組むほどメリットが大きくなります。そこで、一定以下の所得の人には、政府がお金を給付するという制度を設けました。「すまい給付金」です。消費税増税の負担軽減策ということもあり、税率が10%に引き上げられると、基準や給付額が変わります。
- 適用対象:収入が一定額以下で、自宅購入のための住宅ローンを組んだ人
- 2021年までに入居すること。
- 50歳以上の場合は、住宅ローンがなくても対象となります。
- 給付額:10~30万円(1回限り。収入によって異なる。)
- 消費税10%に引き上げ後は10~50万円
- 対象となる収入基準:都道府県民税の所得割額が一定額以下
- 収入の目安(妻が専業主婦で、中学生以下の子供2人の夫の収入の場合):消費税8%では510万円以下、10%に引き上げ後は775万円以下
2.親から援助を受ける場合は、2つの制度の選択です。
マイホームを購入する際に、親から資金援助を受ける人も多いでしょう。親からお金をもらう場合も、非課税枠年間110万円を超える部分については贈与税の対象になります。優遇策を利用することで、節税ができます。2つの制度がありますが、どちらか選択となります。
- 適用対象:住宅取得のための資金を親や祖父母から贈与された場合
- 贈与の翌年の3月15日までに入居すること。
- マイホーム建築のための土地の取得資金も対象となります。
- 110万円の非課税枠との併用可。
【消費税8%の物件※の非課税枠】※個人が売り主など消費税がかからない物件も
契約時期 | 2020年3月まで | 2021年3月まで | 2021年12月まで |
優良住宅 | 1,200万円 | 1,000万円 | 800万円 |
一般住宅 | 700万円 | 500万円 | 300万円 |
【消費税10%の物件の非課税枠】
契約時期 | 2020年3月まで | 2021年3月まで | 2021年12月まで |
優良住宅 | 3,000万円 | 1,500万円 | 1,200万円 |
一般住宅 | 2,500万円 | 1,000万円 | 700万円 |
※「優良住宅」は一定の基準を満たした住宅です。
- 適用対象:20歳以上の人が、60歳以上の親や祖父母から贈与を受けた場合
- 住宅資金の場合は、親や祖父母の年齢条件はなし。
- 贈与時:2,500万円までは贈与税がかからず、それを超えた場合も一律20%
- 相続時:この制度で贈与された金額を、相続財産に組み入れて相続税を計算
- 110万円の非課税枠との併用不可
「相続時精算課税制度」は、課税を相続時(親や祖父母が亡くなった時)まで繰り延ばす制度です。ただ、相続税がかからない場合は、実質的に非課税となります。どちらを利用するかは、贈与の金額、相続税がかかるかどうか、などによって判断します。「相続時精算課税制度」は恒久的な制度ですが、「親や祖父母からの住宅資金等贈与の非課税制度」は期間限定で、非課税額がたびたび変わりますので、注意が必要です。どちらも、贈与を受けた翌年に申告をする必要があります。
住宅取得に関する優遇策は期間限定のものが多く、詳細にはいろいろな条件があります。優遇策を利用しないともったいないように感じますが、優遇策に合わせてマイホームを購入するのは本末転倒です。ご家族の資金プランをよく検討して、その上で利用できるものを活用しましょう。