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山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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新郷 健さん(仮名)のご相談
現在、賃貸マンションに住んでおり、1~2年後に住宅の購入を検討しています。住宅は一戸建てを希望しています。2年後くらいに子どもをもう1人と考えています。また、子育てが一段落したら、パートなどで働くつもりです。
新郷 健さん(仮名)のプロフィール |
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<家計の状況>
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3500万円程度の家が買えますが、ローン返済以外に、税金・保険・修繕維持費など
30万円程度の覚悟を
30万円程度の覚悟を
しっかりコントロールされた家計で、住宅取得という目標に向けて貯蓄もばっちりできています。住宅ローン控除はいよいよ再来年(H20年)末までで終わるので、それまでに購入できるよう準備しましょう。
1.頭金・諸費用として使える額
教育費として、18歳時に400万円の満期金が受け取れる学資保険に加入されていること、まだお子さんが1歳で教育資金はこれから貯めても十分間に合うことから、貯蓄から頭金を多めに出して、その分住宅ローン借入額を抑えた方がいいと思います。年間150万円の貯蓄ペースということを考えると、一年後には貯蓄は約1700万円になります。このうち、万一に備える資金200万円、自動車買換え資金200万円(予算により変更可)を除いた、約1300万円を住宅購入資金とすることができます。
2.住宅ローン借入額と購入できる物件
無理のないローン返済額の目安は、年収の20%または手取り収入の25%以内が目安。新郷さんの年収から計算すると、年間返済額は120万円程度が理想です。60歳くらいまでに返済を終えたいとのことなので、返済期間を30年とします。奥様が働き始めて貯蓄残高が増えてきた時点で1~2回繰上返済すれば、60歳までの完済は可能です。
年間返済額から借入可能額を逆算すると、年間返済額120万円、返済期間30年の場合
金利 | 借入可能額 |
3.5% | 2200万円(年間118,5万円)~2300万円(年間124万円) |
3.0% | 2400万円(年間121.4万円)~2500万円(年間126.4万円) |
※現在は金利水準が低いので長期固定金利がお勧めです。フラット35などの長期固定金利ローンの利率は、現在3%前後です。
自己資金1300万円と合わせると、3500万~3800万円の資金準備ができます。住宅購入では、手数料や税金、耐久消費財購入などの諸費用が1割程度かかるのが一般的なので、準備できる資金額を1.1で割った額が、購入できる物件価格の目安となります。
3500万円/1.1≒3182万円 3800万円/1.1≒3455万円
購入できる物件価格の目安 3182万円~3455万円
3.マイホームを維持するコスト
家は買ったらそれで終わりではありません。固定資産税(+都市計画税)がかかりますし、万一に備えての保険加入も必要です。心地よく暮らしていくためには、修繕費やリフォーム代もかかります。
まず、固定資産税(+都市計画税)は、住宅や土地などの固定資産を所有している人が毎年払わなければならない税金です。広さや価格にもよりますが、一般的な住宅の場合、年間15~20万円程度です。新築住宅に関しては、3~5年(木造一戸建ては3年)、建物部分について一部減額されますので、減額期間終了後の負担増に気をつけてください。建物部分の固定資産税については、時間の経過とともに評価額が下がるので税額も減りますが、減額率はそれほど高くありません。また土地については定期的に評価替えが行われますので、値段が上がれば税金は高くなります。ですから所有している限りは、少なくとも年間10万円くらいはかかるものと考えておいたほうがいいでしょう。
住宅の保険については、建物と家財(家具や電気製品など)を別々に契約します。火災保険には、火災や落雷による損害をカバーする「住宅火災保険」と、台風などの水害や盗難などの被害までカバーする「住宅総合保険」がありますが、それほど保険料は変わらないので、住宅総合保険への加入をお勧めします。保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円の場合、住宅総合保険の保険料は約5万3000円(地域により多少異なる)ですが、複数年割引があり、3年契約では約12%、5年契約では約15%割引になります。
また、火災保険では地震による被害には見舞金程度しか支払われないので、別途地震保険へ加入しておいた方がいいでしょう。地震保険は地震による火災や建物の倒壊を補償する保険で、火災保険とセットでしか加入できず、保険金額は火災保険金額の半分まで(加入できる金額に上限あり)となっています。なお、地震保険の保険料は地域差が大きく、最大で3~4倍程度の差があります。目安としては、建物1,000万円、家財500万円の場合、東京都なら年間5万3000円、北海道なら1万8000円です。
修繕費用としては、大きなものとしては、壁や屋根の塗り替え費用、ボイラーなどの修理・買換え費用、風呂・トイレ・台所などの水周りの補修やリフォーム費用が、5~10年ごとに50万~100万円単位で発生すると考えておくといいでしょう。一戸建てにはマンションのような修繕積立金の支払い義務は発生しませんが、やはり手入れは必要となるので、月当たり1万円程度を住宅修繕積立金として準備しておけば万全です。住宅ローン終了時には建替えも視野に入りますが、同じ場所で建替える、大規模なリフォームをする、子ども世帯との二世帯住宅に建替える、夫婦で小さめのマンションなどに引っ越すなど、選択肢はいろいろあります。とりあえずは、老後資金の枠組みの中で大規模リフォームに備えた資金準備をしておくと考えておけばいいのではないでしょうか。
こういった費用を考えていった場合の資金計画はどうなるか、試算してみたのがこのキャッシュフロー表 [PDF]です。
収入は、ご主人については、いただいた今後の給与見込みから手取り給与の変遷を予想し、奥様については長男が中学生になった年から働き始め、年間100万円の手取り収入を得るという前提にしました。ご主人の退職金は1500万円、定年後も手取り250万円程度で働くと予想しています。
支出については、基本生活費は現在の金額を基本に、お子様が独立するまでは年2%、その後は年1%で増えていくと仮定。住宅費はローンと税金、保険で年間145万円、修繕費として5年毎に50万円、25年後に大規模リフォーム費用が1000万円かかるという前提です。生命保険は、第二子が産まれたら、18歳時保険金400万円、年間保険料20万円のこども保険に加入する前提。自動車は7年ごとに買換え予定で、そのための資金を各年200万円計上しました。また教育費は上昇率2%で計算し、幼稚園は私立、小学校中学校まで公立、高校は私立のときの平均的な費用を、大学学費としては、入学時に500万円(現在価格)を計上しています。
上記のような前提でキャッシュフロー表を作成してみたところ、貯蓄から1300万円を出して住宅を購入し、年間120万円のローン返済を行っていても、お子様の教育費負担が重くなる中学高校大学の時期も乗り切れ、老後費用も貯められます(この表では、貯蓄の運用利率を年0.5%で計算)。運用を工夫すれば老後資金はもっと潤沢になります。ただし、ご主人の収入が伸び悩むような場合には、奥様がもう少し早く働き始めたり収入を増やしたりといった対応が必要になります。