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山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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佐倉理香さん(仮名)のご相談
現在頭金が全く無い状態で、家を購入しようと考えています。
夫は年収約650万円、私は約200万円(共に税込)です。
貯金はありますが300万円しかなく、いざという時の備えといった状態です。
今後、最低でも5年は私も働けるとは思っているのですが、長男は障害児なのとこれから2人子供をもうけたいこともあり、果たして先々私が働けなくなった場合に生活していけるのかとても心配しています。
夫は趣味が多く月に3万円は充てています。その為にガレージ付の家が欲しいと夢を追いかけております。
定年迄の期間と子供の養育費等を考慮すると、購入すべきではないのでしょうが…。
佐倉理香さん(仮名)のプロフィール | |
30 歳 女性 、職業 会社員
会社員のご主人と4歳の息子さんと賃貸住宅にお住まい。 |
・家計状況
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これからの4年間をどう過ごすかが夢を叶えられるかどうかを決める
1.家計の現状と住宅購入について
毎月夫婦で手取り50万円近い収入があって、ボーナスも税込みで年間140万円。いただいた資料どおりの家計支出であるならば、かなり余裕があるはずです。ところが、親からの借入金55万円と年利18%もの高金利のローンを借りているのはどうしてでしょうか?ひょっとすると、何か欲しいものがあったときには、すぐに借金して買ってしまうことが習慣化しているのではないでしょうか?
夫婦2人合わせた収入は現在850万円と多いので、今なら銀行からは3,000万~4,000万円の住宅ローンを借りることができるでしょう。でも、借りられる額と返せる額は違います。今のお金の使い方を見直さないまま、マイホームを購入すれば、老後資金などの貯蓄ができないどころか、佐倉さんが仕事を辞めたり、夫の収入が下がったりしたら、すぐに家計はピンチになりそうです。今すぐ家を買うことは避けるべきで、家計の立て直しが先決です。
数千万円の住宅ローンを背負って数十年間返済し続けるのは大変なことで、それなりの覚悟が必要です。借金を重ねる生活パターンをやめられないようなら、家の購入はお勧めできません。
2.借金を整理して家計を見直し、住宅資金を貯める
もし、マイホーム購入のため、今後しばらくは大きな買い物は控えることができるなら、家計の見直しをして、住宅資金を貯める計画を立てましょう。
ステップ1:借金をなくす
ご主人のローンは6月のボーナス時には完済するとのことなので、これを機に親からの借入金(約50万円)も貯蓄から返済して、借金のない状態にします。こうすることで、7月からは毎月8万円の借金返済がなくなります。また、いただいた資料から計算すると、5万3,000円の使途不明金がありますが、これは必要な支出ではないとみなします(家計簿A参照)。
借金を整理して、必要以外の支出をしない(使途不明金をなくす)と、家計支出はほぼご主人の収入でまかなえます(家計簿B参照)。
ステップ2:家計支出を見直す
佐倉さん宅のように、家賃負担が軽い(月6,500円)場合、マイホームを購入してローン返済が始まると家計に大きな負担となります。負担増に慣れるためにも、貯蓄7万円は、「はじめから、ないお金」と考えて、必ず続けましょう。
貯蓄7万円を含めた借金返済後の家計(家計簿B)では、1万7000円の不足が生じています。家計支出の見直しが必要です。まずは、現在23,000円の酒代を回数を控えたり種類を変えたりすることで5,000円減らします。生命保険料の内訳はわかりませんが、見直せば5,000円程度減らせるのではないでしょうか。またタバコ代2万円も結構大きな支出です。一日2~3箱吸っている計算ですから、健康のためにも本数を減らして5,000円ダウンさせましょう。端数は佐倉さんのこづかいで調整を。こういった細かな見直しによって家計の不足を解消していきます(家計簿C参照)。
ステップ3:貯蓄の目標を立てる(「貯蓄計画2」参照)
ご主人の収入だけで生活するめどを付けたら、佐倉さんの手取り収入の全額(年間180万円)とボーナスのうち年間100万円を貯蓄にまわします。4年間頑張れば、1,120万円貯められます。
このほか、毎月の貯蓄7万円(4年間で336万円)、現在の貯蓄から親へ返済したあとの残高250万円を含めると、4年後には合計で約1,700万円が貯まる計算になります。4年間のうちに急な出費があったとしても、少なくとも1,500万円は貯められるはずです。ハンディキャップのあるお子さんのための資金と万一に備える資金として500万円は手元に置くとすれば、残り約1,000万円が住宅資金として使えることになります。
ステップ4:いくら借りられるか
4年後にはご主人は45歳になっていますから、返済期間は長くても25年(70歳まで)に設定します。お子さんの教育費や老後資金を貯めることを考えると、住宅にかけられるお金は年収の25%が限界。固定資産税や住宅の維持費もあるので、住宅ローンの年間返済額は年収の20%以内が楽に返せる目安です。ご主人の現在の年収は約640万円でその20%は128万円です。年間返済額から借りられる額を計算すると、25年4%という条件なら、約2,000万円が適正な借入額ということになります。
住宅資金として準備された資金が1,000万円。このうち800万円を頭金、200万円を諸費用と考えると、購入できるマイホームの金額は2,800万円です。新築や都心でこの価格は難しいかもしれませんが、郊外で築浅の中古住宅を探せば、十分見つけられる金額です。もっと高い物件を希望されるなら、ローン借入額を増やすのではなく、貯蓄額をできるだけ増やすよう頑張りましょう。
3.住宅購入後の家計
頭金800万円に住宅ローン2,000万円(4%、25年、内480万円はボーナス返済)を借りて、マイホームを購入した場合、ローン返済額は毎月8万円、ボーナス時15万円となります。
住宅購入後の家計は、住宅費はローン返済額で8万円にアップ、駐車場代は半減しますが、家が広くなるため光熱費は通常は増えます(家計簿D参照)。また出産後は衛生費などが増えますが、その分はレジャー費や佐倉さんのこづかいを減らすことで対応します。その結果、毎月の貯蓄額は1万円に減ってしまいますが、その分、ボーナスからしっかり貯めていくようにしましょう(「貯蓄計画2」参照)。住宅ローンのボーナス払い年間30万円、固定資産税など10万円、その他自動車関係の出費などを考慮しても、年間50~60万円は貯蓄できるはずです。
マイホーム購入前後には2人目以降のお子さんを出産予定とのことなので、数年間は佐倉さんは働くのは難しいと思いますが、いずれ仕事に復帰されれば、住宅ローンの繰上返済もできるし、貯蓄額も増やせるようになるはずです。働けない期間は、特に節約を心がけて、子育てに手がかかる数年間を乗り切ってください。
職場に育児休業制度があるようなので、出産後も仕事を続けるという選択肢も視野に入れておくといいでしょう。
これまで説明したように、今後4年間をどう過ごすかがマイホームを取得しても家計がピンチにならないかどうかを決めるポイントとなります。ご夫婦でよく話し合って、将来のプランを立ててみてください。