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社宅の退去期限を機に、住宅購入を検討しています。
もう一人子どもも欲しいのですが大丈夫でしょうか?
山根 克規先生 (やまね かつのり) プロフィール |
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村本 真由美さん (仮称 33 歳 女性 主婦)
子どもが1歳半になり、2人目を作るか作らないか、作るとしたら何歳差にするべきか、考えています。2人目を作りたい気持ちはすごくありますが、不景気により夫の昇給幅も少なくなり、自分たちの老後の資金・住宅購入を考えると2人目は作れないのではないか?と不安になり相談させていただきました。
子どもの学校は、中学までは公立。高校からはできれば公立を希望していますが、やむを得ない場合は私立。大学は私立理系(下宿あり)を考えています。金銭的に無理なようなら自宅からで我慢してもらう。奨学金を使ってもいいと思っています。
両方の親が遠いので、子供を簡単に預けられません。2人目が小学校3年生ぐらいから働き始めるのが、希望です。金銭的に苦しいようだったら、最悪、保育園に入れて働くことも、考えています。
社宅の期限が今年度で切れるため、来年からは賃貸に住みます。家賃は駐車場込みで9万円を予定しています。その際、会社から27,000円の補助があります。住宅は4年後(子供の小学校入学までに)に3,500万程度の住宅を検討しています。
住宅購入理由は、老後、賃貸だと貸してくれないことがあると聞き、不安だから。ただ夫が出世した場合、今後1、2回ぐらいは転勤の可能性もあります。転勤になれば、借り上げ社宅に住めます。借り上げ社宅の自己負担は6万円ぐらい。なので、住宅は絶対購入とも思ってはいません。最悪ずっと賃貸で、老後に一括購入してもいいとも思っています。
主人の昇給が、ここ数年、3,000円ぐらいしか上がっていません(将来役職などがつけば、もう少し上がる可能性はあり)。残業が減っているので、手取り収入が去年と比べたら減っています。老後は月々29万円程度の生活を考えています。
親の介護が必要になるであろう10年後以降は、仕事をやめたりしなければならなくなるかも?
村本さんのプロフィール 世帯年収 : 440万円 家計収支
※車検代は2年に1回なので、1年に負担する金額分を計上 貯蓄残高
加入保険
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今のままなら余裕の老後、現状で住宅購入はオススメしません
経済環境の悪化で、ライフプランの変更や、見直しが必要になってきています。
特にお子さんの人数、住宅購入はライフプランに大きな影響があるため、慎重に考えないといけません。ただどちらも、ご本人の価値観に基づく部分ですので、他人の意見を参考にしながら、ご夫婦でしっかり話し合う必要があります。
では私なりにアドバイスさせていただきます。
住宅購入はライフプランそのもの
まずは先に住宅購入に関して。
住宅購入は人生で一番高い買い物といわれています。それゆえ絶対に失敗できない支出です。と同時に住宅購入は人生そのものを決定付けるといっても過言ではありません。住宅を購入すると、基本的にそこが一生の棲家となります。高度経済成長下と違って、家を売って新しい家に住むというのは、現実的に難しいといえます。
つまり、この先の人生設計がある程度決まっている場合、また資金的に余裕がある場合の購入は大きな問題はないと思います。
しかし村本さんのように、この後転勤があるかもしれない、新たにお子さんが欲しい、また遠方にお住まいのご両親の介護問題も抱えているような方には、住宅購入は不向きと言えます。住宅を購入してしまうと、資金的なこと以外に、様々な環境変化があっても、身動きが取れなくなってしまうリスクが発生するからです。老後に賃貸で借りることができないかもしれない、ということでしたら、村本さんもお考えのように、老後に現金一括で購入することも一考すべきです。特に福利厚生がしっかりした会社にお勤めですので、賃貸の方が経済的にも、精神的にも良いと思います。
現状のままでのライフプランなら余裕の老後
ではお子さんが一人の場合の、今後のライフプランを考えてみましょう。
現状の家計では月々84,000円ほどの黒字です。年間では約100万円。
ボーナスが100万円で、年の支出が約45万円、黒字が約55万円。
合計で年間155万円ほどの黒字です。
今年度までで社宅を出て9万円ほどの家賃をお考えで、会社からの補助が27,000円とすれば、今の家賃に比べ38,000円増えます。これは年間で456,000円。
今後お子さんが幼稚園に通うようになると年間で30万円以上は必要でしょう。家賃とあわせて年間約80万円の負担増となります。そうなると現在年間155万円の貯蓄は半分以下の75万円ほどになります。公立小学校であれば、学費も下がりますが、その分習い事やお小遣いなどが増えるので、支出は変わらないと思っておいた方が良いでしょう。
仮にお子さんが小学校3年生位からパートで働いて、年間60万円の収入と考えると、お子さんが大学入学時には今の貯蓄とあわせて4,500万円ほどの蓄えと考えられます。私立理系の自宅外からの必要資金は約1,200万円といわれていますので、貯蓄は残り3,300万円です。
その時のご主人の年齢は48歳くらいですのでそれから仮に60歳までお仕事をしたなら、12年間お金を貯める事ができます。
村本さんはお仕事しないとして、年間150万円は貯蓄できるとするなら、さらに1,800万円の貯蓄が増え、貯蓄残高は5,000万円を超えます。
60歳以降リタイアしたとして、ご希望通りの月々29万円の生活であれば、年金受給開始までは貯蓄を取り崩し、年金受給後も不足分を貯蓄から取り崩したとしても、85歳までに必要な額は約4,200万円です。
と考えれば、どうにか余裕を持って生活することができると思います。
今後のライフプランの優先順位を決める
現状でのライフプランを考えた上で、希望を含め、今後のライフプランを検討しましょう。
お子さんをもう一人と考えると、教育費、養育費で最低でも今より2,000万円は多く必要です。となると、先ほど考えたライフプランより、余分に働くか、支出を下げなければいけません。またはお考えのように、奨学金制度の活用です。これはまさに価値観ですので、現状のライフプランに基づき、しっかりお考え下さい。
また住宅購入に関しても、現状ではご希望のレベルの住宅購入は簡単ではありません。そのためにも同様に、より収入を上げるか、支出を下げる努力が必要になります。
また年金制度も現状の金額で考えていますので、注意が必要です。ただ退職金を考慮に入れていませんので、もし加算できるなら、それは大きな味方です。経済環境の悪化は確かに厳しいですが、今後もそんなに大きく改善しない前提で計画する方が良いでしょう。最悪の状態でも大丈夫なように資金計画する事をお勧めいたします。
人は現状に合わせて生きていけるものです。お子さんが欲しいということがご自身の価値観であれば、それを優先することも大事です。村本さんご夫婦にとって、何が大切なのか、何は妥協できるのか、今が一番の考え時でしょう。
一度きりの人生、とにかく後悔の無い人生設計を考えてみましょう。