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山下和之先生 プロフィール |
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高林 みゆさん(仮名)のご相談
いまは私の実家に住み、家賃は3万円で、年間400万円ぐらいは貯蓄できています。1年後にはこれまでの貯蓄と合わせて700万円ほどになるので、そのうち500万円を頭金に出せると思います。私の親が2000万円ほど援助してくれる予定なので、自己資金は合計2500万円です。この贈与税の対策はどうすればいいでしょうか。また、夫が以前買ったマンションがあって、いまは賃貸に出しています。ローンが1800万円ほど残っているのですが、家賃でローン返済ができる状態です。これはこのまま残しておいたほうがいいのでしょうか、それとも先に一括返済してしまったほうがいいでしょうか。こんな私たちの条件で、いくらぐらいの家を買えるものでしょうか。
高林 みゆさん(仮名)のプロフィール
31歳会社員。ディンクスで、ご主人(34歳)の年収は430万円、ご本人が410万円で合計年収は840万円。
高林さんの相談のポイント
- 親からの援助の税金対策はどうすればいいのか
- 夫のマンションはそのままでいいか、一括返済すべきか
- 結局、いくらの家が買えるのか
頑張れば8000万円台の物件も可能でしょうが、家計の安全性を重視するなら4000万円前後をメドに
ご両親からの援助は贈与税の特例をフル活用
まず、ご両親からの援助をどういう形で受ければいいのかを考えてみましょう。年間110万円以上の贈与を受けた場合には、贈与税の対象になります。通常の贈与だと、2000万円の贈与だと775万円の贈与税になります。このため高林さんは、「住宅取得資金贈与の特例」で税率が低くなる1500万円まで贈与を受け、残り500万円は借入の形にしようかと考えていらっしゃるようです。この場合には、贈与税は95万円ですみます。借入分に関しては、キチンと借用書を作成し、毎月銀行振込などの形で支払っていけば、410万円の年収がある高林さんならまず問題にはならないでしょう。
相続時精算課税制度を利用すれば贈与税はゼロに
いま一つの方法として、昨年から実施されている「相続時精算課税制度」を利用する方法もあります。これは一定の条件を満たす場合には、2500万円までは贈与税を非課税にし、相続発生時に精算するという制度です。この制度にも「住宅取得資金の贈与の特例」があり、3500万円までは贈与税が非課税になります。これを利用すれば、贈与税はゼロですむことになります。相続が発生したときには遺産総額にこの制度を利用して贈与した2000万円を加えた金額が相続税の対象になりますが、相続税には基礎控除があります。5000万円プラス法定相続人一人当たり1000万円です。仮に、お母さんと高林さんを含めたご兄弟3人で相続される場合には法定相続人が4人ですから合計9000万円の基礎控除になります。相続税の対象になる遺産総額と贈与額がこれ以下なら、相続税は発生しません。相続税の心配がいらないようなら、この制度を利用するのが得策です。相続税が発生するようなら、どちらを利用するのがトクなのか、税理士などの専門家のアドバイスを聞いたほうがいいでしょう。
ご主人のマンションはどうするのがいいのか
次に、ご主人のマンションの問題ですが、将来的にも自分たちが住むことが考えられない以上、売却損が出ても売却して身軽になるのが一番安心ですが、売却損を出すのは忍びないということなら、現在はローン返済額を家賃でまかなえるようになっているそうですから、所有を続けてローン返済が終わったときには家賃を私的年金にするという考え方もありでしょう。ただ、2.35%の変動金利型のローンのようですから、今後金利が上昇すれば返済額が増える可能性もあります。所有し続けるにしても、早めにローン残高をクリアするようにしたいものです。
頭金に回すよりは一括返済のほうが安心
ローンを残したまま新たにローンを組むと、万一賃貸に空室が発生したとき、たいへんな重荷になってしまいます。今後は金利上昇が予想されますから、変動金利型だと返済額増額の可能性もありますし、新たに住宅ローンを組むときには、別のローンの存在が障害になる可能性もあります。ですから、ご両親からの援助を一括返済に回すようにしてはどうでしょうか。高林さんがご両親から援助を受けるわけですから、それをそのまま一括返済に回すと高林さんからご主人への贈与と見なされかねないので、いったんご主人のマンションの一部を高林さんが購入して、共有にするなどの手続きが必要かもしれません。贈与税がかからないように、税理士や税務署などで相談してみるのがいいでしょう。いずれにしても、一括返済してスッキリするほうが、万一の空室リスクの心配もなくなり、ローンを組みやすくなるように思います。
将来の生活までにらんで資金計画を考える
以上の前提に立った場合、いくらぐらいの家を買うことができるのでしょうか。まず気をつけておきたいのは、将来の生活設計との関係です。現在は共働きですが、いつまでディンクスを続けるのでしょうか。ずっとディンクスを続けるのであれば、夫婦お二人の年収合計840万円を前提に資金計画を考えていいように思いますが、それにはややリスキーな面があります。いつ予定が変わって出産、子育てということになるかもしれませんし、共働きで二人分の収入をアテにするということは、一人分の収入に比べて、収入がダウンするリスクが2倍になるという考え方もできます。できれば、ご主人だけの収入で返済していけるような資金計画を立てたいところです。
4000万円前後の予算で探すのが無難
下の表は、金利3%、35年の元利均等返済で住宅ローンを組んだときに、返済負担率別にいくらまで借りられるのかをまとめたものです。夫婦二人分の収入を前提に、年収の35%をローン返済に当てるとすれば、6360万円まで借りられるということです。民間金融機関では35%まで融資は可能ですが、実際の生活を考えると35%は厳しいですし、安全のためには25%程度を目安にするのがいいでしょう。そうすると、4540万円ということです。仮に、ご主人の収入だけでみた場合には、35%で3250万円、25%で2320万円になります。これに用意できる頭金を加えれば、購入可能額になりますが、ご両親からの援助を頭金に回す場合には、これに2500万円を加えてください。また、ご主人の現在のローン1800万円を一括返済するとすれば、差し引き700万円の頭金になります。一番の安全策としては、ご主人の年収のみで返済負担率25%の2320万円+700万円で3020万円になりますが、実際には高林さんの収入もあるのですから、ご主人の年収で返済負担率35%までローンを組んでもさほどの問題はないでしょう。そうすると、3250万円+700万円で3950万円になります。無理をすれば8000万円台の家を買えなくはないのですが、できるだけ安全な資金計画を立てていただきたいものです。
ローン借入可能額の計算(金利3%、35年元利均等返済の場合)
返済負担率 | 収入合算(840万円) | 夫の年収のみ(430万円) |
---|---|---|
35% | 6360万円 | 3250万円 |
30% | 5450万円 | 2790万円 |
25% | 4540万円 | 2320万円 |
20% | 3630万円 | 1860万円 |
購入可能額の計算
返済負担率 | 収入合算(840万円) | 夫の年収のみ(430万円) |
---|---|---|
35% | 8860万円 | 5750万円 |
30% | 7950万円 | 5290万円 |
25% | 7040万円 | 4820万円 |
20% | 6130万円 | 4360万円 |
返済負担率 | 収入合算(840万円) | 夫の年収のみ(430万円) |
---|---|---|
35% | 7060万円 | 3950万円 |
30% | 6150万円 | 3490万円 |
25% | 5240万円 | 3020万円 |
20% | 4330万円 | 2560万円 |