金利の低い固定金利選択型と、やや金利が高い二段階固定金利型、どちらを利用するのがいいでしょうか?


山下 和之先生 プロフィール
長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

白石 由紀さん(仮名)のご相談

住宅メーカーの土地付き一戸建ての購入を計画しています。諸費用を含めた総額で2770万円。870万円は自己資金で用意して、1900万円のローンを組む予定です。そのローンなのですが、住宅メーカーの担当者から
1.固定金利選択型5年もの、年利1.80%で、6年目以降金利を0.3%優遇
2.二段階固定金利型で当初10年が2.5%、11年目以降3.4%(事務手数料無料)
の二つを紹介されています。金利上昇リスクや総返済額を考えたとき、どちらを利用するのがいいいでしょうか。

白石 由紀さん(仮名)のプロフィール

26歳、主婦。ご主人は会社員(26歳、年収500万円)。0歳のお子さんとの3人家族

白石さんの相談のポイント

  • 担当者から二種類のローンを紹介されている
  • 金利変動によるリスクをどう考えればいいか
  • 総返済額ではどちらを選ぶのが得策か

当初の返済に無理がないのなら、完済までの金利が決まっている二段階固定金利型のほうが安心です

どちらでも返済負担率は20%を切る

まず、両方のローンの返済額がどうなるのかをみておきましょう。年利1.80%の固定金利選択型5年ものだと、35年の元利均等返済(ボーナス返済なし)の場合、毎月返済額は6万1007円です。これに対して、二段階固定金利型の2.50%は月6万7924円になります。年収に占める年間返済額の割合である返済負担率は、固定金利選択型5年ものが14.6%、二段階固定金利型が16.3%になります。一般的に返済負担率が25%程度の範囲におさまっていれば、まず安心といわれますから、どちらを利用するにしても、白石さんの年収ならほぼ問題はないといえるでしょう。

将来の金利上昇リスクをどうみるか

当初の毎月返済額をみれば、金利の低い固定金利選択型が有利であるのは当然ですが、問題は将来の金利上昇リスクをどうみるかということです。二段階固定金利型の場合には、当初から完済までの金利がフィックスされています。当初10年間の返済額は毎月6万7924円で、11年目以降は7万4988円と確定しています。将来金利がいくら上がったとしても、この金額は変わりません。繰り上げ返済などを考慮しなければ、35年間の総返済額は3064万7280円です。これ対して、固定金利選択型5年ものは、6年目以降の返済額がどうなるか、そのときになってみないと分からないというリスクがあります。6年目以降の金利は0.3%優遇されるということですが、その時点の適用金利が仮に2.00%とすれば、毎月返済額は6万2690円、2.50%で6万7015円、3.00%で7万1506円、3.50%で7万6161円、4.00%で8万092円になります。当初5年間の返済額が月々7000円ほど安くなる分、金利上昇による返済額アップのリスクがあることを十分に認識しておく必要があるわけです。

6年目以降の平均金利が3.37%未満なら固定金利型がトク

総返済額でみると二段階金利型の場合には3064万7280円に決まっているわけですが、固定金利選択型5年ものを利用したときに、完済までの総返済額がどうなるのかは未定です。固定金利選択型5年ものを利用したときに、二段階固定金利型の総返済額を上回るのは、残り30年間の金利が3.37%以上になったケースです。逆に3.37%未満におさまれば固定金利選択型5年ものを利用したほうが、総返済額が少なくてすみます。近年の金利水準をみると、固定金利選択型の固定期間5年以下のローン金利が3%を超えたことはありませんでしたし、変動金利型に切り換える場合でも、ここ数年は年利2.375%で推移しています。その上、0.3%金利が優遇されるのですから、固定金利選択型のほうが総返済額でトクする可能性が高いようにみえます。

過去には民間ローン金利が8%台になったこともある

しかし、この低金利の状態がいつまでも続くとは考えられません。景気が本格的に立ち直ってくれば、金利上昇の可能性が高いと思います。専門家の見方でも、2004年3月現在、年利2.60%の住宅金融公庫の基準金利も、2004年内に3%台に達するのではないかといわれています。金利が上がれば、当然民間融資の金利も高くなります。バブル時には銀行ローン金利は固定金利型で7%台、変動金利型は8%台まで上がりました。現在の経済環境からみれば、そこまで上昇することはないにしても、5年、10年のタームで考えると、固定金利選択型5年ものの金利が3%台後半から4%台に達する可能性もあり得ると思います。

返済額が決まっている二段階金利型が安心

実際のところ、将来の金利がどうなるのか、予測を的中させるのは簡単なことではありません。しかし、損得のボーダーラインである3.37%を上回る可能性が十分にあることを考慮すれば、借入当初から金利と返済額がフィックスされている二段階固定金利型を利用するほうが安心という気がします。もしも金利が予想より低いレベルで推移したとしても、それを悔しがる必要はないと思います。ある程度の期間が経過すれば、より金利の低いローンに借り換えることもできます。そうした対策も十分に可能なのですから、多少金利が高くても、月々7000円の増額で35年間の安心感を買うほうがいいのではないでしょうか。

白石さんの住宅ローンの試算

購入価格 2770万円
自己資金 870万円
住宅ローン 1900万円

年利1.80%の固定金利選択型5年ものを利用した場合
融資の種類 借入額 金利 返済期間 毎月返済額 5年後残高
 銀行ローン 1900万円 1.80% 35年 6万1007円 1696万0693円
年利1.80%の固定金利選択型5年ものを利用した場合
5年後の金利 返済額の変化 6年目以降金利が
変わらないときの総返済額
2.00% 6万2690円
(2.80%アップ)
2622万8820円
2.50% 6万7015円
(9.8%アップ)
2778万5820円
3.00% 7万1506円
(17.2%アップ)
2940万2580円
3.50% 7万6161円
(24.8%アップ)
3107万8380円
4.00% 8万0972円
(32.7%アップ)
3281万0340円

※変動金利型は増額幅25%までという縛りがあるが、固定金利選択型にはないので25%以上の増額の可能性もある

年利2.50%の二段階金利型を利用した場合
融資の種類 借入額 金利 返済期間 毎月返済額 11年目以降返済額
 銀行ローン 1900万円 2.50% 35年 6万7924円 7万4988円
完済までの総返済額
当初10年間 11年目以降 合計
6万7924円×12カ月×10年=
815万0880円
7万4988円×12カ月×25年=
2249万6400円
3064万7280円

固定金利選択型5年ものを利用してこの金額より少なくなるのは、6年目以降の金利が3.37%以下の場合