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伊藤 美和先生 プロフィール |
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池谷 あゆみさん(仮名)のご相談
昨年秋に結婚したばかりの共働き夫婦です。現在の貯蓄は郵便局への預け入れを中心とした1270万円です。来年か再来年にマイホームを購入したいと思う一方で、老後費を貯めるために資金運用も始めたいと思っています。頭金にいくらぐらい使い、手元にいくらぐらい残したら良いでしょうか?また、どのように投資の勉強を始めたら良いでしょうか?独身時代に好き放題にお金を使っていたので、大きなお金を管理するのが不安ですし、疑問がいっぱいです。アドバイスをお願いします。
池谷 あゆみさん(仮名)のプロフィール
34歳、アルバイト。33歳のご主人(会社員)と賃貸アパートで2人暮らし。
・収支の状況
収入 | |||
月収(夫/手取り) | 250,000 円 | ボーナス(夫/手取り) | 200,000 円X年2回 |
月収(妻/手取り) | 55,000 円 | ||
毎月のおもな支出 | 残額 85,500 円 | ||
家賃 | 80,000 円 | 食費 | 35,000 円 |
水道・光熱費 | 19,000 円 | 通信費(携帯代を除く) | 7,000 円 |
携帯電話代 | 12,500 円 | 夫こづかい | 10,000 円 |
妻こづかい | 0 円 | 生命保険料 | 4,000 円 |
損害保険料 | 20,000 円 | 貯蓄 | 30,000 円 |
医療費用の積立 | 1,000 円 | 冠婚葬祭用の積立 | 1,000 円 |
ボーナスの支出(年額40万円の支出内訳) | 残額 0 円 | ||
貯蓄 | 400,000 円 | 円 |
・現在の貯蓄
毎月の積立額 | 貯蓄総額 | |
通常貯金(郵便局) | —- | 80万円 |
貯蓄貯金(郵便局) | —- | 430万円 |
定期貯金(郵便局) | 30,000 円 | 710万円 |
養老保険 | —- | 30万円 |
財形貯蓄(夫・会社) | 10,000 円 | 24万円 |
・毎月・ボーナスの支出について
- 被服費は毎月の家計の中でやり繰りしている。
- 交際費と医療費は毎月1000円ずつ積み立てて、その中から支出。
- 家電製品の買い替えなど大きな出費がない限りボーナスは全額貯蓄。
・マイホーム(マンション)ついて
- 購入予定時期 → 平成17~18年
- 物件価格 → 3000万円
- ローン → ボーナス払いはなしで25年くらいのローンを希望。毎月の支払額は5~6万円に抑えたい。
・今後の予定&ライフプラン
- 貯蓄のうち100万円で投資を始めたい(無いものと思って)。
- 出産予定→第1子(平成17年)、第2子(平成18~19年)。
- 子どもの教育プランは「公立中→公立高→国公立大学」の予定。
- 教育資金用にも貯金をとっておきたい。
現在の貯蓄のうち、マイホームの頭金に回せる金額は840万円ほど
現状について
池谷さんは手取り月収の約4割も貯金できているので、貯蓄は今のペースで十分です。現在の調子で貯蓄していけば年間に150~180万円貯めることができます。一方で池谷さんの貯蓄総額は1270万円ほど。今もし急に収入が途絶えたとしても丸5年以上は貯蓄を取り崩して生活を続けることができます。30代後半の貯蓄額としては、もしものための備えも含めて十分でしょう。
貯蓄額は申し分ない池谷さんですが、貯蓄内容には気になる点があります。現状では貯蓄のほとんどが郵便貯金など元本の安全な商品への預け入れに偏っているので、もし一転してインフレになった場合は、資産価値が急激に目減りする危険が大です。ですから「これから資産運用を始めたい」という池谷さんの姿勢には大賛成です。
毎月のやり繰りでも気になることがあります。携帯電話代を含めた通信費が多いように思います。逆におこづかい・教養娯楽費・レジャーなどは切り詰めすぎという印象を受けます。また(節約のため?か)新聞をとっていないとのことですが、これから投資を始める方の姿勢としては、気になります。
今後のやりくり&貯蓄プランの方針
毎月のお小遣いを「夫2万円・妻1万円(それぞれ携帯代込み)」としてはいかがでしょうか。携帯代のカットは難しいものですが、お小遣いに含めて予算管理をすると、節約に取り組みやすくなります。また「節約して頑張った分」は、ヘソクリに回したり、好きなことに使うなどして「楽しむ」ゆとりがあっても良いと思います。
教養娯楽費(新聞代も含めて)・レジャー費などは無理をして支出するという費目ではありませんが、このまま「ず~とゼロ」というのも、寂しいような気がします。「使わなかったら次年度に繰り越し」ということでもいいと思いますので、年間予算を立てて、取り分けて(貯蓄して)いってはいかがでしょうか。積立を続けて「10年後に家族4人でハワイに行くぞ!」というプランでも◎です!またこれから投資を行っていくなら、情報収集&勉強という意味での自己投資の方法や予算についても一度ご夫婦で相談してみることをお勧めします。
住宅の購入は1~2年以内とのこと。1~2年以内に使うお金はリスクのある商品で運用することはできません。ですから住宅の頭金のお金は、現状通り元本の安全な商品に預けておきましょう。
一方で老後までは35~40年あります。まだ若い池谷さんご夫婦が老後資金を貯めていくにはインフレ対策を考えることが大切です。今後は運用の勉強を始め、少しずつ利用商品のバリエーションを増やしていきましょう。ただし運用はバクチとは違うので「投資に回すお金は‘全額なかったもの’として運用していきたい」というところまで覚悟する必要はないですよ。
住宅取得の資金計画について
- 物件価格を考える
マイホームを購入する時には「物件価格+諸費用(物件価格の5~10%)分のお金」を用意する必要があります。諸費用とは、ローンの事務手数料や生命保険料、引越代、新居のインテリア代などです。3000万円のマイホームを購入するには、諸費用を含めると3150~3300万円かかります。諸費用を含めた予算を3000万円と考えるなら、2700~2800万円の物件を探すこととなります。「諸費用込みでいくら用意するのか」を考えて、物件探しをしていきましょう。
- 「毎月のローン返済額は5~6万円」と考えるなら、計画変更が必要
池谷さんの住宅ローンの返済予定(希望)額は「毎月5~6万円」です。でも25年ローンで毎月の支払額を5~6万円にするには、借入れできる金額は1200~1300万円ほどです(金利2.7%で計算)。現在のペースで貯めていくと2年後の貯蓄総額は約1600万円となります。諸費用込みで3000万円の予算とすると、貯金を全部はたいても100~200万円足りない計算です(貯金1600万円+ローン1300万円なら100万円の不足)。毎月の支払額は現在の家賃(8万円)程度を目安に考えないと大幅な計画変更(物件価格を400~500万円引き下げるor購入を4~5年延ばすetc)が必要になりそうです。
もしものためのお金を確保する
ローンを組んで住宅を購入するなら、病気やケガ、突然の失業などで収入が途絶えた時への備えを確保しておくことが大切です。最低でも「毎月の生活費×1年分」の金額をもしもの時のためのお金として「元本保証&すぐ解約できる預貯金」でキープしておきましょう。池谷さんの場合なら180~200万円ほど用意しておけば、ひとまず安心です。
教育費の準備
教育費の準備は、お子さんが生まれてから始めれば十分間に合います。出産後、毎月1万円ずつ貯めていけば、18歳までに約216万円貯まります。お子さんが生まれると毎月5000円ずつ児童手当がもらえるので(小学校入学まで)、5000円ずつプラスして貯めていきましょう。それ以上の備えは奥様が再就職するなどして収入が増えてからの課題とします。
老後資金
少子高齢化が進む中、現在20~30代の方が「経済的に困らないよう老後生活を送りたい」と考えるなら、老後資金を貯めながら住宅・教育費をやり繰りしていくことが必要です。まずは100万円で運用の勉強を始めてみましょう。運用プランについては<投資資金(100万円)をどう運用する-その1&2->をご参照下さい。投資商品の選択にあたっては<投資商品の用語解説>の商品説明も参考になるかと思います。お子さんが生まれて、住宅ローンの返済も始まると、老後資金を積み立てていく余裕はなくなると思います。まずは100万円の運用に専念しましょう。
奥様が再就職するなどして収入が増えたら、毎月の貯蓄もはじめていきます。100万円貯まるごとに5~15万円ほどを投資し、残りを元本の安全な商品に預け入れる、という繰り返しで運用していきましょう。ご主人が45歳になった時から20年間、毎年20万円ずつ貯めていけば65歳には「780万円+退職金」を老後資金として用意できます(3%複利で計算)。
まとめ
以上をふまえて現在の貯蓄(1270万円)の預け分け案を考えてみました。ご参照いただき、これからのプラン作りに役立てていただければ幸いです。