住宅ローンが払えなくなったら、どうなるのでしょうか?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 延滞になると、延滞遅延金が発生し、優遇金利の適用がなくなります。
  • 3ヵ月後には一括返済を迫られ、6ヵ月後には競売へと進みます。
  • 事前に状況の変化や将来の資金状況をシミュレーションしておきましょう。

  川上 美月さん(仮名 37歳 契約社員)のご相談

夫婦二人とも在宅勤務が増え、今の間取りでは使いづらくなっています。自宅の購入を考えていますが、もし返済できなくなったらということを考えると心配です。返済できなくなったら、どのようになるのでしょうか?

川上 美月さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年齢 年間収入
ご相談者 川上 美月さん 37歳(契約社員) 年収200万円
配偶者 浩一さん 40歳(会社員) 年収450万円
長男 翔さん 7歳(小学校)
長女 美咲さん 5歳(保育園)
金融資産 普通預金 680万円

3ヵ月以上の滞納が続くと、残りを一括で返済するように迫られます。

1.今は、自宅の購入にとって悪いタイミングではありません

川上様、こんにちは。新型コロナの感染が落ち着いても、テレワークが広がっています。感染の第二波、第三波に備えるというだけでなく、働き方の変革が進んでいるようです。これからは、インターネットを活用して「自宅で仕事をする」のは珍しくない働き方になりそうですね。

自宅で仕事をするようになると、落ち着いて仕事ができる環境が欲しいものです。川上さんも、テレワークへの対応を考慮して、郊外に間取りの多い一戸建てを購入しようかと検討されているとのことです。今までは通勤のしやすさが自宅を選ぶ重要なポイントでしたが、これを機に、通勤よりも自宅での仕事を考慮して住み替えをする人も増えるのではないでしょうか。
購入のタイミングは収入が減少するようであれば難しいのですが、その点に心配がなければ、景気が悪くなることは、自宅の購入にはメリットがあります。まず、地価や建築費など、不動産の価格が低迷することが考えられます。特にこの数年は、人手不足の影響で建築費が高騰していましたが、今後は上昇が抑えられることが予想されます。さらに、住宅ローンを組む際の金利が低いまま継続されそうです。
さらには、景気対策として住宅取得をする場合の税制優遇策などが打ち出されることがあります。この点についてはまだ具体的な発表はありませんが、このところ優遇策の縮小が続いているだけに、新たな施策が期待されます。減税策をうまく活用するためにも、今後の景気対策には注目しておきたいものです。

2.延滞から3ヵ月目、6ヵ月目がポイント

もちろん、住宅の購入に踏み切るのは、ご夫婦の収入が減少しないことが前提です。一度ローンを組んだら、収入に変動があっても、毎月決まった額の返済が続きます。マンションであれば、管理費や修繕積立金の支払いも続きます。川上様も今のところは心配ないものの、もし将来に収入が下がった場合のことを心配されています。

実際に返済が行き詰まるようになったら、どのような事態になるのでしょうか。
通常、住宅ローンは指定の銀行口座から毎月引き落とされて返済していきます。口座残高が不足していると引き落としができず、滞納となります。最初は、郵送や電話などで連絡が来る程度で、すぐに入金すれば問題ありません。しかし、そこで対応をしないと延滞遅延金が発生します。その金利は14.6%にもなります。さらに、今までの優遇金利が適用されなくなり、ローンの金利が上昇することになります。それだけで金利が3~5倍にもなる場合があります。
さらに3ヵ月延滞が続くと、残りのローン残高を一括で返済するように迫る通知が来ます。この時点では、すでに債権者が銀行からローンの保証会社に移っており、保証会社に返済をするようになります。住宅ローンを組む際には、ほとんどの場合連帯保証人を立てず保証会社と契約して「ローン保証料」を払います。延滞した時に連帯保証人の代わりに保証会社が債務保証をしてくれるのですが、それで返済を免れるわけではなく、返済先が変わるだけです。
そして、6ヵ月の延滞になると、自宅が競売にかけられてしまいます。自宅は他人の手に渡り、出ていかなければなりません。競売の代金でローンが回収できなければ、その後も返済が続くことになります。

3.住宅ローンを組む前にシミュレーションで確認を

このような事態にならないように、住宅の購入にあたっては慎重に検討したいものです。返済に行き詰まる傾向が多いのが、次のようなパターンです。

  1. ① 今後、収入が増えていくことを前提に住宅ローンを組んでいる。
  2. ② 現在の家計状況だけで判断していまい、将来の支出の増加を考慮していない。
  3. ③ 借りられるだけ借りてしまい、少しの変化でも資金不足となる。

収入が増えることを前提にしていると、どうしても身の丈を超えた物件に手を出してしまいがちです。これからの時代は、年齢が上昇しても収入が増えるとは限りません。収入が増えたら、繰り上げ返済に充てるぐらいのつもりで考えておきたいものです。
それだけに、購入時の家計状況だけで返済額を決めていると、子どもの成長とともに教育費が増加し、家計の収支が厳しくなります。教育費については事前に予想ができますので、10年後、15年後の家計の状況をシミュレーションしておくとよいでしょう。

背伸びをして借りられる限度までローンを組むと、少しの収入減や支出増にも家計が耐えられなくなります。固定給が下がらなくても、ボーナスや残業代が減るだけで家計に与える影響は小さくありません。また、金利の上昇で毎月の返済額が増える可能性も考慮しておく必要があります。そのような変化があった時にどのような対応をするのか、事前に考えておく必要があります。繰り上げ返済や家計の見直しで対応できるかがポイントになります。

それでも返済が難しくなった場合は、早めに銀行に相談するとよいでしょう。返済期間を当初の予定より延ばして、毎月の返済額を少なくするという対応策が取れます。返済期間が延びることでトータルでの返済額は増えてしまいますが、返済に行き詰まる場合はやむをえません。延滞になってからよりも、早めに相談したほうが、銀行も前向きに対応してくれるはずです。


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