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大幅な賃金カットで貯金も底をつきそう、こどもたちの高校進学も黄色信号です
山田 静江先生 (やまだ しずえ) プロフィール |
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山本 昇様(仮名 45歳 会社員)のご相談
昨今の企業の成果賃金制度により、賃金制度の変更以前より年間所得が5割近く減少しました。ボーナスを除くと、年間の可処分所得は私が226万円、妻はパートで70万円、合計で296万円です。実母は一人別居暮らしで、年金で生活しています。 妻はパート、長女は中1、次女は小4、三女は小1、実母は別居で年金生活ですが、5人が私の扶養家族となっています。体調を崩したこともあり、今後賃金が上昇する事は期待できず、貯金もあと半年ほどで底をつきます。
エンジェル係数やエンゲル係数が高いこともあって、毎月10万円弱のマイナスになります。足りない分は、定期預金等をくずしたり、ボーナスから穴埋めしたりしていますが、ギリギリの生活です。昨年の10月からこのような苦しい生活になっており、来年まで生活できるか不安な毎日です。
保険は、生命保険、年金保険、学資保険(長女と次女の二人)に加入しています。妻は、簡易保険とガン保険に加入しています。今後、ますます教育費の上昇と物価の上昇などが考えられますので、加入している保険を全てやめて子供たちの高校進学もあきらめる方がよいのではないかと考えています。しかし、子供たちの将来を考えると、それも可愛そうでなりません。
今後、どのように生活設計をしていけば良いのか分かりません。
どうか、良いアドバイスをお願いいたします。
年齢 : 45歳 |
手取り収入の約3割を占める保険の見直しだけで 年間約80万円の節約が可能に
1.家計の現状と保険の見直し
山本様は、扶養家族が多いにもかかわらず、突然の減収で生活設計が狂ってしまったことと思います。家族数から見て、生活費自体はそれほど多いというわけではなく、頑張っているご様子。さらなる節約は難しい状態かもしれません。
山本様年間家計簿(現状)<収入> | 月々 | 臨時 | 計 |
給与収入(夫) | 2,807,724 | 2,807,724 | |
パート収入(妻) | 999,996 | 999,996 | |
ボーナス(夫) | 649,470 | 649,470 | |
手取り収入計 | 3,807,720 | 649,470 | 4,457,190 |
<支出> | |||
家賃 | 654,420 | 654,420 | |
こども費 | 726,000 | 726,000 | |
医療費 | 300,000 | 300,000 | |
自動車費 | 264,000 | 150,000 | 414,000 |
光熱費 | 408,000 | 408,000 | |
食費 | 960,000 | 960,000 | |
通信費 | 276,000 | 276,000 | |
保険料 | 1,059,348 | 294,738 | 1,354,086 |
その他 | 180,000 | 180,000 | |
親への援助 | 120,000 | 120,000 | |
貯蓄 | 0 | ||
支出計 | 4,947,768 | 444,738 | 5,392,506 |
収支差額 | -1,140,048 | 204,732 | -935,316 |
貯蓄可能額 | -935,316 | (貯蓄+収支差額) |
貯蓄残高 | 200万円 |
こういうときには、家賃や保険、自動車など固定費を見直すと、家計を根本的に改善することができます。今の時代、せめて高校を卒業していないと就職先を見つけるのも難しくなります。そうならないためにも、少し頑張って見直しをしましょう。
山本様の場合、生命保険料の年間支払い額が手取り収入の約3割と多く、大きな負担になっています。貯蓄性が高いものもありますが、今は目の前の家計をどうにかすることが先決ですので、そういった観点で見直しを行います(●図表 [別ウィンドウで開きます])。
詳細はつぎに詳しく述べますが、かなり大きな見直しになります。これを行えれば、年間で約83万円保険料の負担を減らすことができます。ただし、老後資金準備のための個人年金や養老保険を解約することになるので、お子さんがもう少し大きくなったら、奥様がさらなる収入アップを目指した働き方をして貯蓄を増やしたり、独立したお子さんに家計を助けてもらったりするなど、老後資金対策を考えましょう。
保険料負担を年83万円減らし、このほか、食費を月5,000円、自動車費を3,000円程度節約すれば、赤字はほぼ解消します(節約するのは他の項目でも構いません)。解約した保険の解約返戻金が手に入るので、万一のときの貯蓄も確保できます。
<収入> | 月々 | 臨時 | 計 |
給与収入(夫) | 2,807,724 | 2,807,724 | |
パート収入(妻) | 999,996 | 999,996 | |
ボーナス(夫) | 649,470 | 649,470 | |
手取り収入計 | 3,807,720 | 649,470 | 4,457,190 |
<支出> | |||
家賃 | 654,420 | 654,420 | |
こども費 | 726,000 | 726,000 | |
医療費 | 300,000 | 300,000 | |
自動車費 | 228,000 | 150,000 | 378,000 |
光熱費 | 408,000 | 408,000 | |
食費 | 900,000 | 900,000 | |
通信費 | 276,000 | 276,000 | |
保険料 | 222,000 | 294,738 | 516,738 |
その他 | 180,000 | 180,000 | |
親への援助 | 120,000 | 120,000 | |
貯蓄 | 0 | ||
支出計 | 4,014,420 | 444,738 | 4,459,158 |
収支差額 | -206,700 | 204,732 | -1,968 |
貯蓄可能額 | -1,968 | (貯蓄+収支差額) |
貯蓄残高 | 200万円+解約返戻金 |
自動車がなくても生活できる場所にお住まいであれば、自動車を手放すことで、さらに年間30万円程度の節約も可能です。お子さんはこれからますます教育費がかかるようになるので、できれば自動車をあきらめることをお勧めします。
2.保険の具体的見直しについて(●図表 [別ウィンドウで開きます])
貯蓄性の保険が多いこともあって、保険料負担が手取り収入の3割にも達しています。収入が多かったときにはいいけれど、家計をスリム化して現在の危機を乗り切ることを優先した見直しをします。
【6】と【7】のこども保険は、今後まとまった教育資金が必要な時期に保険金が受取るタイプであること、ご主人の死亡保障がついていることから、これらは残します。保険料はボーナスから準備してください。保険証券を見ていませんが、中学入学時に30万円、高校入学時に40万円、そして大学入学時には100万円の保険金が受取れるタイプの保険だと思います。その保険金を入学時の支払いなどに充てましょう。
【3】【4】【5】は奥様の保険です。【3】【5】は貯蓄性のある保険なので、通常は続けることをお勧めしますが、現在の家計状況では継続は無理です。【3】の終身共済は払い済みにして小額の死亡保障を残し、【5】の養老保険は解約します(解約返戻金が受け取れます)。医療保障がなくなってしまうので、別途終身医療保険(【10】)などに加入してください(新規加入してから解約します)。【4】のがん保険はせっかく加入されているのでこのまま継続しましょう。
【1】【2】はご主人の保険です。【2】の個人年金保険は家計に余裕があれば残しておきたいところですが、家計のピンチですから解約します。解約返戻金は万一の貯蓄として取っておきます。【1】の終身保険はいろいろな保障が付きすぎて保険料が高くなっている保険なので、この際、シンプルな定期保険(【8】死亡保障2500万円)と、終身医療保険(【9】入院保障5,000円)に加入します。この場合も新規加入してから、【1】を解約します。【8】と【9】あわせても13,000円くらいの保険料で済むはずです。死亡保障2500万円は少ないようですが、こども保険にもご主人の死亡保障がついているし、万一のときには遺族年金の給付もありますので、この程度の保障があれば、とりあえずは安心です。
もし健康上の理由で、生命保険の新規加入が難しいようなら、【1】の終身保険を減額して続けるようにしてください。保険料の高い終身保険はできる限り減らし、定期特約とあわせて、普通死亡時の保障2500万円程度まで減額します。また、病気・けが時の入院保障5,000円以外の特約はできる限りはずして、保険料負担を軽減しましょう。
3.お子さんにも家計の状況を話しておきましょう。
山本家は現在、大きな岐路に立たされています。とはいえ、定期的な収入があるわけですから、子どもの教育やふつうの生活をあきらめなければならないほどの、悲惨な状況にあるわけではありません。
塾や習いごとも、上記のような家計見直しをした上で、負担できるなら続ければいいし、難しいようならそのことをお子さんに率直に伝えてください。小学校高学年以上になれば、丁寧に話せばいろいろなことが理解できます。それでもお子さんたちのために頑張っている両親の姿を見せることは、お子さんたちの将来にも大きな財産になるはずです。
お金のやりくりがうまくいかないというのは、大変心が痛むことと思いますが、決してあきらめないでください。この危機を乗り越えて、ご家族が健康で楽しく過ごされることを願っています。