目次
3学年違い3姉弟の教育費など、
老後に向けて漠然と不安を感じています。
宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール |
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竹下 陽子さん(仮名 41歳 専業主婦)のご相談
夫婦と子供3人のサラリーマン家庭です。
来年一番上の子供が私立中学を受験する予定ですが、子供が3学年差ということもあり、今後の生活が不安です。
保険の見直しも含めてアドバイスをお願いします。
竹下 陽子さん(仮名 41歳 専業主婦)のプロフィール
現在の家計の状況 <貯蓄・収入>
<毎月の出費>
<ボーナスからの出費>
<1年間の出費>
<年金予想額>
<住居>
<加入している生命保険>
<直近の特別出費予定>
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現状の収支が継続すれば心配有りません。
しかし、絶対はないと思って常にライフプランの見直しを。
しかし、絶対はないと思って常にライフプランの見直しを。
キャッシュフロー表を作成しましょう
今後3人のお子様の進学を控え、竹下さんが将来の家計を不安に思われるお気持ちはよく解ります。ましてや3学年差ということもあり、入学の時期が重なってしまうので、なおさらのことでしょう。
しかし、ただ漠然と不安を抱えていても解決の糸口は見つかりません。実際に竹下さんの家計がどのように推移していくのか予測し、分析してみましょう。そのためには、キャッシュフロー表を作成することが不可欠です。
キャッシュフロー表とは、現在の収支状況や今後のライフプランをもとに、将来の収支状況や貯蓄残高を予想し、表でまとめたものです。
家計簿は毎月の収支が黒字なのか赤字なのかを把握し、毎月の支出の削減を促す、いわゆる節約効果がありますが、キャッシュフロー表を作成して長期的なお金の流れを把握することによって、現時点でできることを考えて、なおかつ実行することが可能となります。
その上で、余裕があると判れば旅行回数を増やすなどレジャー費を増やすことだって考えていいでしょうし、反対にこのままだと貯蓄がゼロになってしまうと判った場合は、何らかの対策を講じなければいけません。しかし、もしこのままだと貯蓄がゼロになってしまうと判った場合でも、前もって予測しておくことによって、必ず何らかの対策を見つけることが可能になるのです。
竹下さんのプロフィールを元にキャッシュフロー表を作成してみました。
下記仮定の元に作成したので、実際の金額とは違うと感じることもあるかと思いますが、気付いた点はご自身で修正してみてください。
陽子さんはご主人様退職時までパート就労し、年間収入120万円としました。
生活費はお子様が大学を卒業するごとに20万円ずつ減額し、以降同じ金額にしました。
教育費に関しては、お子様3人とも公立小学校→私立中高一貫校→私立文系大学のコースを進むものと仮定し、公立小学校私立中学校に関しては文部科学省「子供の学習費調査」平成22年の数値を引用し、小学校6年時は受験費用を上乗せしました。
また、私立高校に関する同調査では中学より高校の費用の方が低いのですが、中高一貫校の場合、中学より高校の方が安いというのは一般的ではないので、中学と同額としました。大学の費用に関しては、セールス手帳社保険FPS研究所「ライフプランデータ集2012年版」の数値を引用しました。
貯蓄残高に関して、実際は運用益が発生しますが、今回は金利ゼロと仮定しました。
このキャッシュフロー表で特に着目していただきたいのは下記の数字です。
チェックポイント 1: 一郎さんの100歳時点での貯蓄残高は2,278万円です。
つまり、余程のアクシデントがない限り、今後の竹下さんの家計は何とかなるのです。それほど心配することはありません。
但しここで重要なことは、キャッシュフロー表はあくまで将来の予測でしかないので、収支やライフプランを定期的に修正する必要があるということです。
この表に出てこない出費だってたくさんあります。
車の買い替え費用や、自宅の修繕費だって必要なはずです。また、お子様の中学高校が公立になった場合や、大学が私立理系となった場合なども、相当金額が違ってきます。老後の生活費だってもっと必要かも知れません。
チェックポイント 2: 2021年から2024年の年間収支が連続してマイナス200万円以上です。
お子様3人の学費が重複する期間なので仕方のないことですが、これ以上のマイナスは抑えたいものです。
竹下さんの場合、ご主人の退職金が2020年に支給された影響で、年間収支の減少が目立つどころか、貯蓄残高が大きく増えているので、年間収支のマイナスは見過ごされてしまいがちです。
しかし、貯蓄がどんどん減って気持ちのいい人はまずいませんし、長期間の複利効果を考えると、少しでも多くの残高をキープしておきたいものです。今回作成したキャッシュフロー表はゼロ金利で計算していますが、現実の貯蓄には多少なりとも金利が発生し、長い年月を経ると結構な金額になるものであり、当然その効果も元本の金額次第であるからです。
この期間には車の買い替えなど、学費以外の大きな出費は組み込まないようにするのが賢明です。
チェックポイント 3: 個人年金保険が老後生活に大きな安心を与えています。
2026年から2035年までの10年間に受け取る毎年170万円の個人年金保険がとても有効です。年金生活に入ると、年間収支がマイナスになることが多いのですが、竹下さんの場合、一郎様が70歳になるまでプラスです。
多くの場合、このマイナス期間を短くするために、少しでも長く就業することをお勧めしていますが、一郎様の場合その必要はないかも知れません。
保険の途中解約だけは極力避けたいものです。
保険の見直しをしましょう
見直し 1: 一郎さんの死亡保険
現在、一郎さんが加入している死亡保険は2契約で合計保険金額240万円です。万が一の場合、遺族年金は支給されますが、残されたご家族が元の生活水準を維持するには少ないのではないでしょうか。もっとも一部上場企業では、大きな保障が付保されている場合があるので、まずは福利厚生制度を確認してみてください。それでも足りない場合は、やはり死亡保障の追加を検討した方がいいでしょう。
保障を追加する場合ですが、現在の年齢から終身保険に加入する場合、かなり高額な保険料になってしまいます。そうするとかえって家計を圧迫してしまうので、掛け捨て定期保険を検討した方がいいと思われます。
掛け捨て定期保険には大きく分けて、保険期間中保険金額が変わらない保険と、低減していくいわゆる収入保障保険がありますが、保険会社の支払う保険金が保険期間の経過とともに少なくなる収入保障保険の方が、保険料を安くすることができます。
保険金額を決定する際にもキャッシュフロー表の活用が有効です。アクシデントを考慮せずに作成したキャッシュフロー表にある生活費の金額を残されたご家族に必要な生活費の金額に変更し、収入を遺族年金の金額に変更した上で、死亡保険その他複利厚生の金額を特別収入で計算するなどすれば、必要な保険金額が導かれるはずです。
見直し 2: 医療保険の給付内容を確認しましょう。
医療保険に関しては、入院給付金が何日目から支払われるか、通院などは保障されるか、ガンになった場合の保障はどの程度なのかを確認する必要があります。
現在医学の格段の進歩とともに、入院日数も減少傾向にあり、手術も日帰りで済んでしまうケースが増えてきました。またガン治療においても、入院しないで放射線治療を通院で受けるといった治療法も一般的になってきています。
困ったときのために保険料を払っているのに、いざという時に保険金が貰えないという事態だけは避けたいものです。
まとめ
竹下さんの場合、一郎さんの収入も高いレベルにあり、陽子さんの家計管理もしっかりされていると思われますので、今後の生活に大きな不安要素はなさそうです。ご自身で作成したキャッシュフロー表をご覧になるとよく判ると思います。
しかしながら、備えあれば憂いなしです。人生を思う存分楽しむライフプランを考えつつも、無駄な出費は洗い出して節約してください。資産の運用方法についてもご自身でじっくり勉強したり、専門家に相談したりして、竹下さんにピッタリの方法を見つけていただければと思います。
竹下さん一家には、幸せな未来が待っているはずです。