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子どもの教育費負担が大きいので、
教育ローンや奨学金などを活用したいと思っています。
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール |
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牧原 徹さん(仮名 46歳・会社員)のご相談
46歳の会社員です。子ども2人の教育費負担が心配です。現在は公立高、公立中に在学中ですが、地元は選択肢がほとんどないため、東京へ行かせる可能性が高いと思っています。学費以外に仕送りも必要になるので、大学の分は教育ローンか奨学金を利用しようかと検討していますが、制度や注意点などがあれば教えてください。
牧原 徹さん(仮名 46歳・会社員)のプロフィール
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奨学金も教育ローンも返済義務がある借入金です。
利用に当たっては、理解した上で覚悟を持って。
利用に当たっては、理解した上で覚悟を持って。
1.奨学金制度もさまざまあるので情報収集をしっかりと
牧原さん、こんにちは。受験シーズンもまもなく終盤。受験に合格しても次は学費の心配ですね。たとえ親の給与が上がらなくても授業料は上がる、というように親御さんにとっては切実な問題です。また子どもが希望する学校に「家計が厳しいから諦めて」とは言えませんよね。しっかりと検討していきましょう。
私立大学文系で自宅外通学となると、目安として4年間で1,100万円以上かかります。2人分となると相当な負担であることは間違いありません。
【大学の教育費負担】(単位:万円)
入学費用 | 在学費用 | |
私立大学(文系) | 94 | 149.2 |
自宅外通学者への仕送り | 92 | |
自宅外通学を始めるための費用 | 48.3 |
※(株)日本政策金融公庫平成25年度「教育費負担の実態調査結果」を基に算出。千円単位は四捨五入。
※入学費用:受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※在学費用:年間の学校教育費(授業料、通学費、その他)、家庭教育費(補修教育費、けいこごとなど)
※自宅外通学者への仕送り:在学費用を除く年間仕送り
※自宅外通学開始のための費用:敷金、家財購入など
さて、大学での奨学金貸与を希望する場合は、独立行政法人日本学生支援機構の「第一種奨学金」と「第二種奨学金」があります。第二種では3%を上限とする利息負担がありますが、在学中の利息は免除されます。この利率は固定型と見直し型(いわゆる変動型)の選択となり、直近の利率は固定型は0.89%、見直し型は0.30%でした。
両者の大きな差異は「利息」、「学力基準」と「家計基準」です。
【独立行政法人 日本学生支援機構の奨学金制度】
第一種奨学金 | 第二種奨学金 | |
利息 | 無利息 | 有利息 |
学力基準 |
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家計基準 (世帯人数と所得上限額目安) | 3人:752万円 4人:846万円 5人:904万円 |
3人:1,080万円 4人:1,171万円 5人:1,313万円 |
貸与金額 | 3万円または6万4千円 | 3万円/5万円/8万円/10万円/12万円 |
第一種奨学金は無利息で良い分、学力基準や家計基準が第二種より厳しくなっています。
牧原家の場合、家計基準は家計基準は満たしているので、あとは学力基準を確認してください。
留意点として、申込みの際に(1)機関保証に加入する(2)連帯保証人と保証人 を選任のいずれかを選択する必要があります。
【保証制度】
機関保証に加入 | 連帯保証人+ 保証人選任 | |
保証の方法 |
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連帯保証人・保証人 | 不要 | 要 |
提出書類 |
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返還を滞納した場合 | 機構から本人に対して請求 |
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保証人の引受け手探しや、必要書類などは早めの準備が必要です。また、機関保証利用の場合は、保証料が奨学金から差し引かれるため、奨学金が目減りしてしまうことになります。
また、この他に国の教育ローンというものもあり、こちらは2.35%(H26.2.13現在)の金利となっています。
【日本政策金融公庫の「国の教育ローン」】
利息 |
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家計基準 (子どもの人数と所得上限額目安) | 2人:890万円 |
その他要件 |
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貸与金額 | 300万円以内 |
保証 |
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その他要件 |
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その他 |
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2.聞こえは良いですが、所詮は借入金です
昔は、奨学金というと所得の低い世帯が利用するイメージがありました。現在ではごく普通に利用する世帯が増えているため、利用することにあまり抵抗がなくなっているようです。
制度自体がリスクのあるものではありませんが、奨学金、教育という言葉であっても、所詮は借入金であり、いずれ返済するべきお金です。住宅ローンの返済や、老後資金の準備ももちろん始めなければなりませんが、目先の負担軽減のために安易に借り入れをするのは危険です。
返済は卒業してから本人が行っていくと思いますが、実はこれがお子さんにとっては大変な負担となります。就職も自宅外通勤となった場合、それだけでもお子さん自身が貯蓄をすることが厳しい状況なのです。そこへ借入金返済が続くわけです。本来、独身~結婚して子供が小さい時は「第一の貯め時」と言われる時期。この時期にしっかり貯蓄を増やせるかが、将来お子さんの家計を左右します。
あまり貯蓄ができないうちにお子さんが結婚、子どもが生まれたとなると、場合によっては住宅ローン返済、奨学金返済、教育費負担となるのですから、今度はお子さんの子ども(牧原さんにとってはお孫さんです)の教育費負担が重くなるのです。そうなるとまた奨学金を借りるのでしょうか?
このように借り入れの連鎖が続く可能性もあるので、借入れは最後の手段とお考えください。
3.子どもの金銭的自立を促すチャンスと考えましょう
子どもの教育費負担により、牧原さんご夫婦の老後資金が準備できず、将来子どもに金銭的な負担をかけるのも悲劇です。親に経済的な心配がないだけでも子どもにとっては大きな安心となります。
最近では、大学独自の奨学金制度なども増え、地方出身者のためのサポートなどにも力をいれているようです。しっかり情報収集してください。また新聞社の奨学金制度の活用も検討してはいかがでしょう?
新聞社の奨学金制度ですと、新聞配達の苦労はありますが貸与ではなく返済免除の上、給与も出ます。また寮もありますから仕送りも激減します。ほとんどがお子さん本人の力でまかなっていけます。下のお子さんは女の子ですから難しいかもしれませんが、大学生になれば、旅行代や自分のお小遣いなどはアルバイトなどでまかなってもらっても良いのではないでしょうか。
お金のことを家族で話し合える家庭は、将来お子さん自身が世帯を持ち、家計管理をしていく上で、生きた金銭教育になるはずです。子どもの経済的自立を促す良いチャンスと考えてみませんか?