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子どもを3人生んで大学まで通わせるのが希望。
3人の教育費のために毎月の貯蓄はいくら必要ですか?
井上 信一先生 (いのうえ しんいち) プロフィール |
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桜井奈美さん(27歳 仮名)のご相談
長男が生まれ生活も落ちついてきました。子供は3人欲しいと思っています。
仕事は順調ですが、子育てにはお金がかかると聞いていますし、3人を大学までは卒業させたいと思っています。毎月の貯金はどれぐらい必要でしょうか?
ご相談者のプロフィール
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概算プランでも高めの貯蓄目標を立て早くから準備。
状況に応じて臨機応変に対応しましょう。
状況に応じて臨機応変に対応しましょう。
時間を味方につけるメリットを活かし、高めの目標設定を
桜井様、ご相談ありがとうございます。
お子様を3人ご希望とのこと、大変な面もあるとは思いますが、賑やかで楽しい家族を育めそうですね。応援いたします。
さて、子の教育費等にかかるお金は、まさにその進学コース次第です。これさえ決まれば、いつから、いくら位必要になるのか定まり、今から必要な貯蓄の概算額を逆算できます。「進学なんてまだまだ先のこと」と思いたくもなりますが、職場の仲間やお友達などに聞いたり、ネットで調べたりしてみて下さい。
ドラマのような幼稚園「お受験」とまではいかずとも、中学受験レベルは、多くの親が少なからず一度は検討されているとか。その分、準備開始時期も「前倒し、前倒し」になるのも頷けますよね。
大学までの進学率はもちろん、校風や教育方針、語学力や社会的スキルへの対応、設備、体験学習等の充実度など、学校ごとの情報が今では驚くほど溢れています。
それもそのはず。少子化が叫ばれて久しいわが国で、学校教育は最も熾烈な競争にさらされている事業の1つ。学校側の発信が盛んになると、これをキャッチする親の側も敏感にならざるをえません。
ところで、貯蓄にかける時間は長いほど労力も軽く済みます。
予定はあくまでも未定ではありますが、時間を味方につけるつもりで、思い立った時に始めてみてはいかがでしょうか。その際は金額的にも少し高めの目標設定をお勧めします。
高めの目標で始めておけば、後々いくらでも修正しやすくなるからです。
貯蓄の必要額は私立にかかる上乗せ分と大学時の費用
それでは、具体的な資金準備プランの考え方です。 下表は、学校教育費、学校給食費、学校外活動費を合計した学習費総額の抜粋です。
ご存知のとおり、義務教育の小学校・中学校は公立では授業料は不要。高校(私立を含む)は就学支援金の対象となり、教育費の軽減が図られています。反面、より有利な進学を希望する場合の、塾等の学校外活動費は高額化の傾向にあり、ピークは公立で中学3年、私立では小学6年のようです。
また、私立では入学時に多額の費用がかかるので、第1学年時は表中の金額(年平均額)の、それぞれ2割増とみておくのがよいと思われます。
一方、大学時の費用は短大か四年制か、文系か理系かでも異なり、さらに親元から通うか否かで大きく変わってきます。およその目安は以下の通りです。
・短大(2年間の合計):約381万円
・国公立(4年間の合計):約516万円
・私立文系(4年間の合計):約688万円
・私立理系(4年間の合計):約803万円
・自宅外通学者への年間仕送り額:年平均125万円(4年間で約500万円)
※日本政策金融公庫「平成27年度 教育費負担の実態調査結果」より
教育費の準備としては、大学進学時はもちろんですが、その以前に私立に進学する場合の、公立との差額を計画的に貯めていくのがポイント。例えば、根強い人気の中高一貫校の私立進学を希望する場合、公立校の教育費は通常の家計のやりくりの中で納める前提で、その上乗せ分を今から貯蓄していくわけです。ご長男の場合で計算してみましょう。
・中学:差額85.7万円×3年間=約257万円→11年間かけて貯める(約23.4万円/年)
・高校:差額58.6万円×3年間=約176万円→14年間かけて貯める(約12.6万円/年)
・大学:私立理系と仮定し約803万円→17年間かけて貯める(約47.2万円/年)
※貯蓄期間は各進学時までとする(実際は入学時に全額必要になるわけではない)
※預貯金等の利率は考慮していない
すると、中学から大学までの合計で、年平均83万円の貯蓄が必要であると計算できます。
実際には賞与からも貯蓄をすると思いますが、ざっくり月平均で6.9万円ですね。
貯蓄プランは臨機応変な修正を
先の計算は、預貯金や運用の利率を考慮しない単純計算です。将来の物価変動も考慮はしていません。また、お子様を3人お望みなら、この3倍の金額(年間で約250万円)が必要になります。ですが、現在の世帯収入の水準が続くとすれば、3人分の必要貯蓄額でも収入の3割強。家計管理をしっかりおこなえば、決して無理な数字ではないと思います。
大切なのは、目安に過ぎなくても、目標を高めに計画し、何より早くに始めることです。
中学から私立を前提に計算してみましたが、中学まで公立なら約5万円に納まります。15歳まで給付される児童手当※(1人5,000円~15,000円/月、所得や子どもの年齢・数で変動)ほか、自治体などからもさまざまな公的助成や給付金があるので、それを貯蓄にまわすだけでも随分楽になります。
実現可能な金額としてイメージできますでしょうか。
※厚生労働省 児童手当について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jidouteate/
最後に
人生の中で計画的な貯蓄が必要となるのは、子の教育費だけではありません。マイホームを希望する場合は、全額ローンで購入するわけにはいかないので、一定の自己資金を貯めねばなりません。老後生活資金も必ず計画しておく必要があります。
奈美さんも働かれているということは保育所に預けているのだと思いますが、都市部では待機児童問題が深刻です。2人目、3人目も保育所に希望通り入れるかどうかわからず、将来は就業に制約が生じるかもしれません。一方、教育費についても、親が全額準備するのでなく、奨学金を活用する方法もあります。
お子様の教育資金を考えるということは、同時に他のライフプランを考える機会であり、働き方を考える機会であり、人生の希望について夫婦で話し合うタイミングでもあります。
お子さんが公立中学、高校等と進学していけば、そのために貯めていた分は浮くはずです。長く、広い視野で、臨機応変に貯蓄プランやその使いみちを考えていってください。