目次
子供の教育費を貯める自信がありません。
もしも奨学金を使った場合、返済していけるでしょうか?
森田 和子先生 (もりた かずこ) プロフィール |
|
伊藤真美さん(仮名 32歳 専業主婦)のご相談
来月子供が生まれる予定です。教育費について考え始めましたが現在は毎月2万円ほどしか貯金できていません。このままでは18歳になるまでに500万円にするのが精一杯です。
しかしもう一人子供が欲しいと思っています。
奨学金を利用しても良いと思うのですが、その時50歳になる私たち夫婦が返済していくことは難しいでしょうか?
ご相談者のプロフィール
|
十分な時間が有るので計画的に準備すれば大丈夫。
それでも不足するようなら、親は教育ローンで。
それでも不足するようなら、親は教育ローンで。
お子様の誕生前後は支出も多く、家計を把握するのが難しくなりがちです。思うように貯金ができないかもしれないと不安を感じるかもしれませんが、生まれたお子様が大学を受験するまでには18年もあります。まずはお子様の成長に合わせて計画的に貯蓄することを考えてみましょう。
児童手当を貯めるだけで200万円以上に
「児童手当」をご存じでしょうか。0歳から中学を卒業するまで給付金を受け取ることができる制度で、出生届と同時に申請する方が多いようです(申請しないと支給されません)。 伊藤さんの場合、お子様が3歳未満のうちは毎月15,000円、3歳からは中学を卒業するまで10,000円を受け取ることができます。これを全て貯めれば213万円(※)にもなります。児童手当が振り込まれる専用の口座を作れば他の家計と混ざることもなく確実に貯められると思います。(※誕生日によって違います。)
児童手当 | |
0~2歳 | 15,000円/月 |
3歳~小学生 | 10,000円/月 (第3子以降15,000円/月) |
中学生 | 10,000円/月 |
※所得制限(例:夫婦と子供2人の家庭で年収960万円)以上は5,000円/月
※2016年6月現在
目標にすべき金額は?
では、どれくらいの金額を準備すれば大学の学費がまかなえるのでしょうか。 現在の平均額では下記のようになります。
学部ごとの卒業までの学費の目安 | ||
学部 | 修業年限 | 卒業までの学費合計 |
私立大 法・商・経学部 | 4年制 | 407万円 |
私立大 理・工学部 | 4年制 | 551万円 |
私立大 薬学部 | 6年制 | 1,127万円 |
私立大 医学部 | 6年制 | 3,453万円 |
国公立大 | 4年制 | 243万円※ |
文部科学省 「平成26年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果」より試算。
※国公立は標準額
学部によってかなり違いのあることがわかりますが、最も負担の軽い国公立大学ですら250万円近くになります。私立大学なら卒業するまでに500万円程度かかることは珍しくありません。不足する場合は借りることもやむを得ないでしょう。
とはいえ、全額を一度に納めるわけではないので、大学入学までに準備できた資金で不足する部分を家計から支払うと考えればよいでしょう。例えば私立大法・商・経学部に進学する場合では、準備できた教育資金が300万円なら毎月の家計の負担は約2万2,000円ですが、400万円準備できれば1,500円にもなりません。私立文系なら400万円あれば家計への負担はほぼないと考えてよいでしょう。
(私立法・商・経学部4年間の学費合計 -準備できた資金)÷ 48ヵ月=毎月の家計負担
〔300万円準備できた場合の毎月の家計負担〕
407万円 - 300万円 ÷ 48 =22,292円/月
〔400万円準備できた場合の毎月の家計負担〕
407万円 - 400万円 ÷ 48 =1,458円/月
ちなみに、私立理・工学部では400万円資金があっても毎月の家計の負担は31,458円になります。将来の進路はわかりませんが、まずはお子様それぞれに400万円ずつを目標にするとよいのではないでしょうか。児童手当を全て積み立てると213万円ですから、それにプラスして児童手当と同額を積み立てると倍額の426万円になります。中学を卒業するまでには大学の進学資金作りができてしまうというメリットもあります。
積み立ての一部に学資保険を利用することを考えてもよいでしょう。確実に貯めることができますし、契約者(ご主人)が万一の場合にはそれ以降の保険料が不要になる等の保障もあります。現在は10年間で保険料の払い込みが終了するタイプもあります。
現在の貯蓄は毎月2万円とのこと。家族が増えると出費も増えるので、2人分の教育資金の準備は今のままの生活スタイルでは厳しいと思われます。これを機会に家計を見直しましょう。旅行や外食などの娯楽費を節約するだけでも、あと2万円貯蓄を増やせそうです。
また、今すぐにではなく小学校に入学してからでもよいので、再就職を考えてみてはいかがでしょうか。伊藤さんも働いて収入を得ることができれば無理なく貯蓄を増やしていくことができるはずです。
注意したいのは遠くの大学に入学して仕送りが必要になる場合です。下宿にかかる生活費は年間約100万円。4年間では400万円になります。これも含めて全て準備するとなればかなり負担が大きくなります。できる限り貯蓄して不足する分は奨学金などで補うのもやむを得ないでしょう。
奨学金は学生本人が借りて返すもの
貯蓄では不足してしまう場合にそなえて、進学資金を借りる方法について確認しておきましょう。まず思い浮かぶのは奨学金ですが、これには、返済する必要のない給付型と、返済が必要な貸与型があります。ほとんどの給付型奨学金は経済的に困難であるか、学業やスポーツ等優秀な学生に向けられているので、誰もが利用できるものではありません。ここでは返済が必要な貸与型についてご説明します。ちなみに、最も多くの学生が利用している日本学生支援機構の奨学金も貸与型です。
伊藤さんが考えているように、保護者が奨学金の返済をするご家庭もあります。しかし、奨学金は学生本人が借りて、返済するものです。親が返済するとしてもお子様名義の借金であることに変わりありません。借入金があれば住宅ローンを利用する時等に不利になる場合もあります。親が無理なく返済できるなら、教育ローンを検討するとよいでしょう。18年後の金利がどのようになっているかは予想できませんが、返済期間と金利が同じであれば、返済額にほとんど違いはありません。
奨学金と教育ローンの違い | ||
---|---|---|
日本学生支援機構の奨学金 (貸与額5万円/月×4年間=240万円 金利3%の場合) | 民間金融機関の教育ローン (借入額240万円 金利3%の場合) | |
契約者 (借りて、返済する人) | 学生本人 | 保護者 |
返済期間 | 15年 | 10年 |
返済額の目安 | 16,769円/月 | 23,175円/月 (15年返済は16,574円/月) |
(※保証料等は含まずに試算)
受験シーズンに入る前にライフプランを再確認
これからしっかり貯蓄ができたとしても、進路次第で学費は違う上、18年後の学費がどの程度になっているのかも不明なので、不足するのか、余るのかはその時にならなければわかりません。また、上の子の学費は親が出したけれど、下の子の学費は全て奨学金、というのでは将来に禍根を残してしまうので避けたいところ。第一子が17歳になった時に、子供たちの教育資金を再確認するべきでしょう。奨学金やローンを使う場合には、親と子それぞれの人生設計に支障をきたさないよう、借りる時から返す時を意識してください。教育ローンを使うなら定年前には返済を終えるようにしたいものです。
時間は有るのですから、今からしっかり計画をたてて準備にとりかかりましょう。