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子供がおらず、貯蓄も充分ではありません。
この先、老老介護が心配です。
森田 和子先生 (もりた かずこ) プロフィール |
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渡辺優子さん(仮名 53歳 専業主婦)のご相談
最近になって定年後の生活を意識し始めました。子どもがいないと言っても貯蓄は潤沢ではなく、老老介護のニュースを見ていると、とても不安になります。現在の貯蓄で経済的には問題ないのでしょうか? 少しでも老老介護の不安を取り除くヒントになればと考えて、ご相談させていただきました。
ご相談者のプロフィール
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不足分を見積もって、10年間でさらに貯蓄を増やしましょう。
有料老人ホームへの入居も想定しておく必要があります。
有料老人ホームへの入居も想定しておく必要があります。
こんにちは、渡辺さん。「老老介護」に「老後破産」などの言葉が流行り、不安な気持ちになりますね。毎日の生活は大丈夫なのか、介護が必要になったらどうするのかなどを一度に考えるのは大変なことです。老後の資金準備をどのようにすればよいのか、順を追って考えてみましょう。
定年後の生活費には不足分がある
介護のお金について考える前に、公的年金が主な収入になる定年後の生活費を確認しておきましょう。どれだけ必要になるかはご家庭によって違いますが、現在の平均額は以下のようになっています。
(総務省 「家計調査報告 家計収支編 平成 27 年(2015 年)平均速報結果の概況(要約)」をもとに作成) http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gk00.pdf
夫婦世帯では公的年金等の社会保険給付がおよそ19万円、その他の収入も約2万円あり、合計収入は約21万円です。それに対して合計支出は27万円以上あるため、およそ6万円の赤字となっています。この不足分6万円は貯蓄等を取り崩して補っていると考えられます。
同様に単身世帯を見ていくと、こちらも毎月の家計収支は約4万円の赤字です。一人暮らしでは月4万円を貯蓄の取り崩し等で補っていると考えられます。
このような家計で老後の生活を送るならば、夫婦2人の生活では毎月約6万円、一人暮らしでは約4万円を補えるように蓄えておく必要があることがわかります。寿命は人それぞれで予測することはできないので、平均寿命をもとに試算してみましょう。 平成 27 年簡易生命表によると、男性の平均寿命は 80.79 年、女性の平均寿命は 87.05 年です。65歳以降に必要となるこの生活費の不足分について、平均寿命をもとに計算すると以下のようになります。
- 純一さん65歳以降のご夫婦で生活する期間17年の生活費不足額 -A
月6万2,326円の17年分 1,271万4,504円 - 優子さん85歳以降の一人で生活する期間3年の生活費不足額 -B
月4万1,195円の3年分 148万3,020円 - 生活費不足額の合計(A+B) 1,419万7,524円
この計算では、定年後の生活費の不足分は約1,420万円となります。
介護の平均費用は月8万円
もう一つ心配されている老老介護についても想定しなければなりません。
生命保険文化センターの調べによると、介護期間の平均は4年11ヵ月、一時的な費用の合計は平均80万円、月額7.9万円となっております。この数字をもとに試算すると以下のようになります。
- 介護の一時的な費用80万円 +毎月の費用7.9万円の4年11ヵ月分 =約546万円
これだけの金額をまとめて支払うわけではありませんが、お子様がいないぶん介護サービスを積極的に利用するかもしれないので、ご夫婦それぞれに500万円ずつ準備したいところです。
(厚生労働省「平成27年簡易生命表」) (生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査/平成27年度」)
ゆとりある老後のためにプラスの貯蓄
生活費の不足分が1,420万円、介護の準備としてご夫婦それぞれ500万円ずつとすれば、合計で2,420万円となります。現在は1,300万円を準備できているのですから、あと1,120万円が必要になります。退職金がこれ以上の金額になれば、ここまでの計算で不足はありませんが、さらにプラスして考えておきたい費用があります。
自宅の補修費用やもしもの場合の予備資金、また、有料老人ホームへの入居も考えるなら、その資金も必要です。費用は施設によって大きく違うので一概には言えませんが、85歳、要介護3の方が入居する場合の費用は下記のようになります。
85歳、要介護3の方が5年間入居する場合の費用
(公益社団法人全国有料老人ホーム協会「平成25年度有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅に関する実態調査研究事業報告書」のデータをもとに試算) http://www.yurokyo.or.jp/investigate/pdf/report_h25_01_02.pdf
※全額前払い方式の前払金はほぼ家賃に充てられ、月払い方式の前払金は敷金・保証金等に充てられます。全額前払い方式は毎月の管理費等が高い傾向にあるため、月額利用料は月払い方式と大差ない金額になっています。
現在50歳のご主人が60歳になるまでに貯められる金額を考えてみましょう。
毎月5万円を10年間貯めれば利息なしでも600万円に、毎月8万4千円貯めることができれば1000万円を超えます。家計を見直すことや優子さんがパートタイムで日中働くことなどをすれば随分違いますね。
いずれにしろ、これからの10年で貯めた金額がそのまま定年後のゆとりにつながります。
これだけでは有料老人ホームの費用としては不足するかもしれません。そういう時には自宅を担保にして老後資金を借りるリバースモーゲージを使う方法も考えられます。また、お子様がいらっしゃらなくて相続するあてがなければ、どちらかお一人になられた時点でご自宅を売却することも考えられるでしょう。いずれにしてもそれはずっと先のことですので、その時にいろいろな選択肢を用意しておくことは安心に繋がります。
家計を見直してみようと考えたせっかくの機会ですから、これからの10年でしっかり貯めて、ゆとりのあるセカンドライフを迎えて下さい。