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鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール |
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福田 真由さん(仮名・30歳・会社員)のご相談
共働きの夫婦です。子どもを授かり、コロナ禍で不安はあるものの、夫婦でしっかり子どもを育てていこうと思います。今後も共働きを続けていくつもりなので、その分育休はできるだけ長く取って、子どもと向き合いたいと思っています。その場合、減収によってどれくらい家計に影響するのか不安です。
福田 真由さん(仮名)のプロフィール
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助成金や手当、一時金で出産費用のほとんどを、育休期間中は給付金などで減収分のかなりの額は賄えます。パパも育休を取得してご夫婦で子育てに取り組みましょう。
1.出産前から助成があるので、確認しましょう。
福田さん、お子様を授かったとのこと。おめでとうございます。
最近は育休を取得後、職場に復帰して共働きを継続するご夫婦はとても多いです。確かに一時的に減収にはなるかもしれませんが、様々な支援制度もあります。
まず、出産前の支援を見ていきましょう。
妊娠期間中、何よりも大事なのが母体と胎児の健康ですが、そのために妊婦健診があります。妊婦検診は、母親の健康状態の確認のほか、胎児の健康状態や成長具合を確認します。
妊娠24週までの初期は4週間に1回、24週から35週の中期は2週間に1回、36週までの後期は毎週の計14回が一般的です。
実はこの検診、保険外診療のため、原則全額自己負担になります。なぜなら、妊娠自体は病気ではないからです(特に異常が見られない限り、単なる検査扱い)。したがって検診の費用も検査内容によって5,000円程度~15,000円くらいまで幅があり、全額自己負担であれば15万円くらいかかるでしょう。
しかし「妊婦健診助成金」という自治体からの支援があり、多くの自治体では「妊婦健診受診票」といって、会話の中ではよく「補助券」と言われるものを交付してもらえるので、実際の自己負担はもう少し少なくて済みます。たとえば東京都世田谷区の場合、助成金額は初回検診の10,850円を上限に、2~14回は1回あたり5,070円、別途、超音波検査(1回)に1,300円、子宮頸がん検診(1回)に3,400円となっています(世田谷区HPより)。助成の内容や費用は自治体によって異なるので、福田さんもお住まいの自治体に問い合わせてみると良いでしょう。
自己負担も発生しますが、母体や胎児の健康状態や、胎児の病気の早期発見にもつながります。ぜひ受診していただきたいです。
2.出産前後は健康保険の制度が役立ちます。
真由さんが心配をされている休業中の減収ですが、出産前後に休んで給与が支給されない場合、「出産手当金」が支給されます。働く女性が産休で休業中の減収をサポートしてくれるもので、出産日以前の42日間(多胎妊娠の場合は98日間)から出産日翌日以降56日間の間で会社を休業した期間が給付対象です。なお、出産日は出産日以前の期間に含まれ、出産が予定日より遅れた場合は、その分も支給対象になりますから心配しないでくださいね。一方、予定日より早く生まれた場合はその分は支給対象になりません。
支給額は、「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額÷30日×2/3」です。標準報酬月額は給与明細に記載されていると思いますが、概ね月給というイメージでけっこうです。会社から給与が支払われている場合でも、出産手当金より少なければ差額を支給してもらえます。申請が必要ですので、産休前に勤務先から書類を入手しておきましょう。出産後、医師などの証明を受けて健保組合に提出します。
また、妊娠すると受け取れるのが「出産育児一時金」で、1児につき42万円(多胎妊娠の場合は胎児の人数分)を受け取ることができます。また、妊娠したばかりの福田さんに申し上げるのは失礼かと思うのですが、情報という意味で、もし死産や流産、事情により人工中絶などの場合でも、妊娠から85日以上経過していれば支給の対象となります。
受取り方法としては、次の3つがあります。
- 1)直接支払制度
健保組合から直接病院へ支払われます。42万円以上かかった場合は、窓口でその差額分を支払います。42万円未満だった場合は、窓口負担はゼロで、さらに申請により差額分が支給されます。 - 2)受取代理制度
直接支払い制度を導入していない医療機関で出産した場合、手続きは本人が行いますが、受取りは医療機関です。この場合も直接支払い制度同様、42万円未満であれば申請により差額が支給されます。この制度を利用する場合は、出産日の1カ月程度前に健保組合に申請をする必要があります。
また、この制度に対応していない医療機関もあるので、福田さんがかかりつける病院について確認しておきましょう。 - 3)事後申請
出産にかかった費用を窓口で支払い、退院後に健保組合に申請して支給してもらいます。したがって、一旦まとまった金額が必要になります。
厚生労働省によると、令和元年度の出産費用平均値として、公的病院は約44万円、私的病院は約48万円、(助産所を含む)診療所は約46万円となっていますので、特段高額な医療機関でなければ自己負担は概ね10万円程度を見ておくと良いのではないでしょうか。
また、出産にかかった費用は医療費控除の対象とできるものもあります。
対象としては
- 妊婦健診費用
- 通院のための公共交通機関利用の交通費
(公共交通機関の利用が困難でタクシーを使った場合はタクシー代も可) - 入院費、分娩費
- 出産時のタクシー代
などの費用の合計から出産育児一時金の42万円、および医療費控除を算定する際の自己負担分10万円を差し引いた金額に所得税率を掛けた分が、所得税の還付として戻ってくる可能性がありますので、しっかり領収書を保管しておき、確定申告をすると良いでしょう。
3.新設制度も含めて雇用保険からの支援も充実。
産前産後休業の際は健康保険から出産手当金の支給がありましたが、産後休業終了日の翌日からを対象として、原則1歳(保育園に入所できないなどの場合は、特例により最長2歳)未満の子どもを育てるために育児休業を取得した場合は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。利用のためには休業開始前の雇用保険被保険者期間や、育休中に給与が支払われていた場合はその金額が休業前の80%未満であること、育休終了後に仕事に復帰するなどの条件があります。ちなみに計画的に入園しないというのはダメですよ。入園の申込をしたけれど入れないという場合です。
給付額は180日までは休業前の賃金日額×67%×支給日数、181日目以降は休業前の賃金日額×50%×支給日数となりますが、2カ月ごとに申請が必要です。なお、育休中は申請によって健康保険料、厚生年金保険料は免除してもらえます。この場合、免除による将来の年金減額はありませんので安心してください。
また「パパ・ママ育休プラス」という制度もあり、父親も育休を取得すれば1歳2カ月になるまで育休を延長することもでき、夫婦それぞれに育児休業給付金が支給されます。
【パパ・ママ育休プラス】
例:パパも長めの育休がとれる場合は、できるだけ長く夫婦で育児がしたいケース
例:夫婦で切れ目なく、できるだけ長く育休を取得したい場合
出典:厚生労働省リーフレット「両親で育児休業を取得しましょう!」(2022年4月15日)
さらに従来の育児休業とは別に、2022年10月1日から「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が施行されます。出生時育児休業給付金の給付以外に、次のような特徴があります。
- ①パパが赤ちゃんの出生日から8週間以内に4週間の育児休業を取得できる(出産後間もないママのサポートができる)。
- ②2回に分割して取得できる(最初に時期を申請する必要あり)。
- ③(労使協定が締結されていれば)休業中も一定量就業して収入を得られる。
このような制度の新設や、今後、大企業の育休取得状況の公表を義務化するなど、国としても男性の育児参加を後押しする環境を整えつつありますし、企業イメージ向上のために理解を示す企業も増えています。ご主人様の勤務先での対応なども確認しておきましょう。なお、今回ご紹介した制度などは基本的にすべて申請ベースですので、手続きは確実に行ってください。
一時的に多少の減収はあるものの、上手に活用できればかなりの金額を公費でまかなってもらえるので、工夫して、ぜひ育児と仕事の両立を頑張ってください。応援しています。
子どもの大学進学で貯蓄がほとんど残っていません。急な出費が不安です。 これから生まれてくる子に教育費はいくら貯めればよいでしょうか?公立と私立ではどれくらい違いますか? 子どもの可能性のために、できる限り教育資金はカットしたくないのですが、自分たちの老後資金も心配です。