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臼井 悦子先生 (うすい えつこ) プロフィール |
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中川 雅夫さん(仮名)のご相談
既に退職し、夫婦2人で年金暮らしです。自宅の水周り設備が老朽化してきたのと、これからの暮らしを考え、自宅のリフォームを検討しています。費用は1,000万円程度を考えていますが、老後の生活に支障はないでしょうか。
普段の生活は無駄遣いをしないようにしていますが、できれば2年に1回程度は国内や海外にゆっくり旅行をしたいと思っています。可能でしょうか。子どもは既に結婚して独立しています。貯金は2,200万円です。
中川雅夫さん(仮名)のプロフィール 62歳。現在は退職し、62歳の妻と2人暮らし。 |
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<家計の状況>
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リフォームは可能
ただし、預貯金を減らさない工夫は必要。
1.支出は収入の範囲内、リフォームは可能
働き盛りの30代、40代で購入したマイホームは、ちょうど退職を迎える頃にリフォームや建て替えを検討することが多いものです。定年退職の時期と重なるため、費用をどの程度かけていいものか考えてしまいますね。中川さんはご自宅のリフォームを予定されていますが、老後資金が不足しないかご心配とのこと。現時点での情報をもとにシミュレーションをして、問題点を確認していきましょう。
中川さんの一年間の収入は、ご夫婦おふたりの年金で320万円。それに対して支出は308万円と収入の範囲内に抑えられています。日常生活だけなら赤字にならず、まずは安心です。これに、一年おきに旅行費用として30万円を見積もります。ご希望のリフォームは1,000万円を預貯金から取り崩して今年行うとします。さらに住宅のメンテナンス費用として5年ごとに50万円を見積もります。中川家の老後資金、つまり預貯金額はどうなるか見てみましょう(グラフA 旅行30万円)。
リフォームの出費で資産額が大きく下がるものの、それ以降はほとんど取り崩さずに済み、88歳(参考:平均寿命 男性83歳、女性88歳)では資産残高は約920万円です。1,000万円のリフォームを行い、旅行を楽しむことはできそうです。
では、旅行を50万円にグレードアップするとどうなるでしょう。すると、一年あたりわずか10万円の出費増が資産の取り崩しを少しずつ進め(グラフA 旅行50万円)、88歳時点での資産額は660万円と減少してしまいます。
今回は旅行費用で試算しましたが、それ以外の費用でも同じことが言えます。わずかな出費増でも、それが続くと資産の取り崩しを進めてしまうことに注意が必要です。老後は数十年に渡る長い期間でもあり、何が起こるかを全て予測するのは不可能です。ですから、老後資金が絶対に底をつかない金額を準備しなければ、とは考えず、一時的な出費があっても何かを減らせばいい、というように考えて、生活を楽しまれてはいかがでしょう。
2.今後、物価の上昇が起こることを考えて、預貯金の一部を投資型の商品で運用
年金での暮らしで気をつけなくてはならないのが、物価の上昇です。バブル崩壊後、デフレが長く続いてきましたが、今後はインフレの可能性を考えておくのが安心です。インフレが起こる時は、給料も上昇していくのが一般的ですが、年金は物価の上昇に負けてしまいます。以前は、物価が上がれば受け取る年金の額もそれに連動して上がりました。ところが2004年より、年金財政のアンバランスを解消するために、物価の上昇率ほどは年金額は上がらない仕組みになりました。当面は、物価の上昇率より0.9%程度下回る伸び率にしかならない見込みです。たとえば、物価が3%上がって100万円のものが103万円になっても、100万円の年金は102万円にしかならないのです。今まで買えたものに手が出なくなってしまうかもしれません。
仮に物価が1%上昇し続けたときの中川家への影響を試算してみます。支出額は増えるのに年金額はそれほど上がらないため、資産を取り崩すことになり、88歳では40万円の赤字(総資産額が-40万円)です。これを防ぐためには、預貯金の一部を投資商品で運用することを考えてはいかがでしょう。資産全体を0%、1%、3%で継続的に運用したと仮定したときの資産額がグラフBです。3%で運用できれば88歳で1,000万円、1%では200万円の資産が確保できます。
物価上昇時の資産推移(グラフB)
投資商品としては、景気が良くなると値上がりする傾向にある株式、日本より高めの金利が享受できる国外の債券などが考えられます。これらはいずれも元本保証はありませんが、長く保有することで値下がりする可能性を低くできる傾向にあります。いずれも一万円程度から購入できる投資信託が利用しやすいでしょう。他に個人向け国債は預貯金よりやや高めの金利で、元本は国が保証しています。これらの商品を複数組み合わせることで、より安定した資産運用も可能です。
投資商品を初めて購入する時は、1万円、10万円などの少額から始めましょう。いちどに多額のお金を投資して損をすると、年金収入だけでは取り返しがつきません。少額を一年間など一定期間保有して、値段が上がったり下がったりするのに慣れるとともに、その理由を考えるようにしましょう。勉強も大切です。セミナーに参加する、関連本を読むなどもいいでしょう。投資は自己責任で行うものです。十分に勉強して理解した上で、少しずつ取り組むようにしましょう。
3.無駄のないリフォームを実現して
リフォームは、これからの生活を住み良くするためのもの。十分な効果が得られるようにしたいですね。中川さんのリフォームのきっかけは、住宅の老朽化とこれからの住みやすさを希望されてのこと。住宅の傷んだところ、修繕・改善すべきところは目に見えるため、どのようにリフォームしたら良いかわかりやすいと思います。ですが、身体機能の衰えに合わせた改修はまだ具体的にイメージできないのではないでしょうか。
バリアフリーとひと口に言っても、その人それぞれの状況に合わせたものでなければ十分な効果が得られません。手すりひとつをつけるにしても、その位置が適切でないと助けにはならないのです。
ご夫婦ともまだ十分にお元気でしたら、まずは住宅の修繕をメインにリフォームを行い、身体機能が衰えてきたら小規模なリフォームをする、と2回に分けることも考えられます。その場合、費用は合わせて1,000万円におさめます。高齢者向けリフォームの実績がある業者に相談するなどして、より良いリフォームが実現できるといいですね。
なお、2007年4月から2010年3月までにバリアフリー改修工事をすると、その翌年度の固定資産税(家屋100平方メートルまで)が3分の2に軽減されることが決まりました。30万円以上の工事が対象です。利用には一定の条件が設けられるようです、利用の際は確認してください。減税を受けるには、工事完了後3ヶ月以内に工事利用明細書と工事前後の変化がわかる写真などを市町村に出す必要があります。