独身一人暮らしでもうすぐ50歳、 両親の介護や自分自身の老後の生活が心配です。


独身一人暮らしでもうすぐ50歳、
両親の介護や自分自身の老後の生活が心配です。

宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール
  • 将来の資産を予測しましょう
  • ポートフォリオを考えましょう
  • 終の棲家のことを考えましょう

萬田 佐智子さん(仮名 49歳 公務員)のご相談

独身で一人暮らしをしています。両親とも高齢で年金生活です。
この先、両親の介護の問題や私自身の老後の生活についてどうなるのか不安な気持ちでいます。できるだけ働きたいと思っていますが、病気などで働けなくなる可能性もあると思います。
今のうちできる限りのことをして老後に備えたいと思うので、アドバイスをお願いします。

萬田 佐智子さん(仮名 49歳 公務員)のプロフィール

本人 : 萬田 佐智子 49歳
職業 : 公務員
年収 : 賃貸住宅
住居 : 650万円(毎月手取額 30万円)
貯蓄 : 1,000万円
年金予想額 : 月15万円
就労予定 : 60歳定年で65歳までは働ける
現在の生活費 : 20万円(月10万円貯蓄)
老後の希望生活費 : 25~30万円(家賃含む)
加入の生命保険 : 終身保険×2、養老保険、ガン保険
父 : 90歳
母 : 79歳
ご両親の住まい : 持ち家(北海道で資産価値は不明)
ご両親の貯蓄 : 1,000万円
※今後、同居の予定はなし。

現状を把握して計画的な貯蓄と資産運用を介護の備えは、施設の下調べを十分行うこと。

まずは将来の資産状況を予測してみましょう

誰でも老後生活は不安なものです。金銭的な問題や健康面での問題など、お一人なら尚更です。しかし、ただ漠然と不安を抱えていても、精神衛生上いいことは何にもありません。健康のことを予測することは難しいと思いますが、金銭的な状況はある程度予測することが可能です。
まずは萬田さんの老後が、どのような経済状況になるのか考えてみましょう。
萬田さんは現在毎月10万円の貯蓄をされています。仮に65歳まで雇用延長するとしても、収入は減るでしょうから、60歳まで今のペースで貯蓄を続けたとします。10万円×12ヶ月×11年=1,320万円貯蓄できることになります。現在の貯蓄1,000万円と合わせて、2,320万円の貯蓄はできていることになります。

一方、65歳以降の収入は年金15万円に対して、生活費を25万円とすると毎月10万円の赤字になってしまいます。このケースで90歳までに必要なお金は、10万円×12ヶ月×25年=3,000万円です。
貯蓄の金額よりも大きい金額だと思うかも知れませんが、心配は要りません。
萬田様は毎月の貯蓄の他にもボーナスでも貯蓄していませんか?年収と手取りを比べると、ボーナスも結構あると思われるからです。また、退職金、さらには終身保険の解約返戻金、養老保険の満期金だってあります。ひょっとすると相続による財産だってあるのです。

つまり、萬田さんは金銭的にあまり心配する必要はなさそうなのです。ここで大切なことは、萬田さんがご自身で退職金の額や保険の金額等を具体的に当てはめてみて、リタイヤ時点での大まかな資産状況を予測し、老後生活をイメージしてみることです。少しは不安が軽くなるのではないでしょうか。

ポートフォリオを考えましょう

現在の貯蓄の構成はどうなっているのでしょうか?すべて普通預金ということはないと思いますが、これからは少しでも利殖性の良い商品で資産を運用していきましょう。
同じ銀行預金でも、少しの金利の違いが将来思いがけない金額差になるからです。下記の表を見てください。0.02%と0.3%の預金に1,000万円を預けた場合の税引き後の受取り利息の額の違いです。0.02%は一般的な普通預金の金利で、0.3%は実際にある銀行の定期預金の金利です。

金利 10年後の受取り利息 20年後の受取り利息
0.02% 16,015円 32,062円
0.3% 243,450円 494,310円

なんと20年後では45万円以上受取り利息が違ってくるのです。このように長期間運用する場合、少しでも高金利の商品にお金を預けておくべきなのです。
ではどうやって高金利な定期預金を見つければいいのでしょうか?簡単な方法は、インターネットの金利比較サイトを検索することです。また、ボーナス時期になるとキャンペーンを打つ銀行が多く、思わぬ高金利商品に出会えるかも知れません。

投資も検討してみましょう

なぜ投資なのかというと、アベノミクスが順調に推移した場合、物価が上昇していくことになり、銀行金利では物価上昇に追い付かない可能性があるからです。しかし、あくまでも投資なので、上述した定期預金とは違い、元本割れする可能性があります。萬田さんがほんの少しでも元本割れするのは嫌だと思うなら、止めておいた方が無難ですが、少しでも投資に興味がある場合は、NISAを利用して少額から投資を勉強してみたらいかがでしょうか。

NISAとは2014年1月から始まる日本版少額投資非課税制度のことで、年100万円までの投資について配当や譲渡益が5年間非課税となる仕組みです。NISA口座は1人1口座しか作ることができないので、早く口座を開かせてしまおうとばかりに銀行や証券会社が現在積極的に勧誘しています。口座を開設すればキャッシュバックいくらであるとか、定期預金の金利を優遇するなどさまざまなキャンペーンが打たれています。NISAの口座を開設するだけで損をすることはありませんが、金融機関にとっては顧客を囲い込む狙いがあるので、口座開設後さまざまな勧誘が待っている可能性があります。また一旦口座を開設すると4年間は金融機関を変えることはできず、金融機関によって取り扱う商品も違うので、口座開設する場合は慎重に金融機関を選んでください。

なお、仮に投資をするにしても、目的は大切な老後資産の形成なのですから、資産の内の最大でも3割程度にとどめておくことが大切です。

年8万円の保険料で個人年金保険に加入しましょう

保険というよりは、コツコツ保険料を払って将来年金として受け取る貯金の一種だと思ってください。ただし、低金利の現在、払込保険料に対する年金総額がかなり増えるのかというとそうでもありません。それでもお勧めする理由は、税金が戻ってくるからなのです。
ある一定の条件を満たす「個人年金保険料税制適格特約」がついていれば、年間8万円の保険料を払った場合、所得税4万円、住民税2万8千円の所得控除を受けることができるのです。

【萬田さんの年収の場合】
所得税 : 40,000×20%=8,000円
住民税 : 28,000円×10%=2,800円
合計 10,800円税金が安くなるのです。

年間8万円を投資して10,800円のリターンがあると考えると、何と13.5%の利回り商品という見方もできるのです。小さなことではありますが、是非活用していただきたいものです。ちなみに所得控除は所得税4万円、住民税2万8千円が最大限で、年間保険料が8万円以上の場合どんなに多く保険料を払っても控除の枠は変わらないので、利回りという点から考えると年間保険料8万円の保険がベストであることになります。 但し、貯金と違って一定期間で解約してしまうと、払い込んだ保険料を下回ることがあるので、注意してください。

終身保険解約の時期を考えましょう

終身保険は、文字通り一生涯いつお亡くなりになっても、保険金が貰えます。しかし、一人身の萬田さんにとって、死後のお金は何の役にも立ちません。周りの人に迷惑をかけないように、死後の整理資金程度を残しておけば十分です。年齢と資産状況に応じてこんな多額の保険金は要らないと思ったら、解約して返戻金を受け取りましょう。生活費の足しにしてもいいでしょうし、旅行に行ったりするのもいいでしょう。

自宅介護か施設介護か?

ご両親が一人になった時や、萬田さんご自身にとって、介護は身近な問題です。いつ介護が必要になるかわからないからです。その場合、住みなれた自宅で介護を受けるのか、あるいは施設に入居するのか迷うところだと思いますが、萬田さんへは施設介護をお勧めします。なぜなら、身近にお世話をしてくれる人がいれば別ですが、すべてを他人の介護で賄おうとすると、介護保険の枠を超え、費用負担が青天井になってしまうからです。
その点、施設介護なら、定額負担で安心です。できれば毎月の利用料を年金で賄いたいところですが、年金の額を上回った場合は、入居一時金を支払った残りの資産を取り崩せばいいので、萬田さんの場合、経済的に十分可能な方法だと思われます。

なお、有料老人ホームを選ぶ際には、必ず体験入居されることをお勧めします。外から見るととても良い施設に見えても、実際に入居すると人間関係が悪く、いじめがある施設なども結構あるからです。前もって複数の施設を下調べしておくといいでしょう。

さいごに

現在49歳の萬田さんが、今から老後生活を見据えて計画的に資産を増やしていけば、経済的には問題なさそうです。ただそのためには、常に資産・収入と支出をチェックしておく必要があります。そして、余裕がある場合は美味しい食事に行ったり趣味を充実させたりして、豊かな人生を過ごしていただきたいものです。