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森田 和子先生 (もりた かずこ) プロフィール |
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野口博史さん(仮名 45歳 会社員)のご相談
同居している父が財産の全てを私に遺すと言い、遺言書を書いてくれるようです。母は既に他界していますが、私には姉と弟がいます。他の兄弟にも遺産をもらう権利があると知人から聞きました。遺言書があっても姉と弟に分けなければならないのでしょうか。どのようなことなのか教えてください。
野口博史さん(仮名)のプロフィール
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相続では有効な遺言書があれば、その内容が最優先されます。
ただし、ごきょうだいには法律で決められた遺留分があり、その分を請求することができます。
こんにちは、野口さん。ご相談ありがとうございます。お父様が全ての財産を野口さんに遺したいというお気持ちが嬉しいものの、他のごきょうだいには納得できない話かもしれず、複雑なお気持ちではないかと思います。日頃仲の良い家族でも相続が争いのもとになるケースは多々あるようです。円満に相続を進められるように対策を考えてみましょう。
相続できる割合の基準は法律で定められている
誰かが亡くなると、その人の財産は家族などの相続人に受け継がれます。財産を相続する権利がある人の優先順位や、受け取る割合の基準は法律で定められています。
亡くなった人の財産を相続できるのが「相続人」です。配偶者は必ず相続人になり、その他の親族は子(孫等)、父母(祖父母等)、兄弟姉妹の順に相続人となります。上の順位の人がいれば下の順位の人には権利がないので、子がいれば父母や兄弟姉妹は相続人にはなりません。
野口家では既にお母様が他界されており、お父様には配偶者がおりません。子であるご兄弟3人が相続人となります。子の法定相続分は等分なので、その通りに分けるならば、お父様の財産総額6,000万円(自宅3,500万円+預貯金等2,500万円=6,000万円)を3人それぞれが1/3にあたる2,000万円ずつを受け取ることになります。
遺言書は優先される
法律で定められた法定相続分があるとはいえ、亡くなった人が遺言を残している場合には、遺言の内容が優先されます。遺言の内容は自由に決めることができます。6,000万円の遺産を子の1人である野口さんに全て遺すこともできるわけです。ただし、定められた条件を満たしていなければ有効な遺言とは認められません。
お父様のように自分で作成する遺言は「自筆証書遺言」と呼ばれ、法律で認められる遺言の方法の一つです。今年から財産目録(財産の一覧)のパソコン作成等が可能になりましたが、自筆で書かなければならない部分や署名、日付、押印など定められた条件を満たさなければ有効な遺言とは認められないので注意が必要です。
姉と弟にも遺留分がある
有効な遺言があれば、野口さんが遺産の全てを相続することは可能です。ただし、ごきょうだいには遺留分があり、その分について野口さんに請求することができます。
遺留分とは相続人に遺すべき最小限度の範囲で、その割合は法律で定められています。
相続人が子のみの場合には、それぞれの遺留分は法定相続分の1/2となります。お父様の遺言によって野口さんが全ての財産6,000万円を相続しても、ごきょうだいの法定相続分は1/3の2,000万円ずつ、遺留分はその1/2の1,000万円となるので、ごきょうだいは野口さんに遺留分1,000万円ずつを請求することができます。自宅に住み続けて売却を考えないのであれば、結局は相続した預貯金から支払うことになる可能性があります。
トラブルを招かない遺言にする
どのような遺言を残すのも本人の自由ですが、相続をめぐって遺族が争うのはお父様も望んではいないことでしょう。そもそも全員が納得できるような内容にしておくのも相続対策になります。他のごきょうだいには遺留分にあたる財産を遺してもよいのです。
今回お伝えしたのは相続の基本的な内容です。生前に住宅資金を援助してもらった相続人や、家業を手伝って経済的に貢献した相続人などがいれば、別の計算も必要になるので、書籍等で知識を得ることも必要でしょう。自分で遺言を作成するのが難しい場合には、弁護士や司法書士などの専門家に相談することや公証役場で公証人に作成してもらうことも検討してください。
72歳でそろそろ相続のことを考える様になりました。 相続税があまりかからないようにする方法を教えてください。
ある程度の財産を子供に遺せそうですが、子どもの金遣いが荒く、相続をしたとたんに散財してしまわないか心配しています。