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鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール |
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今宮美紀さん(仮名 30歳・会社員)のご相談
共働きの夫婦です。来年から夫の会社で「選択制確定拠出年金」が導入されることになりました。私の会社も確定拠出年金は導入されており全員が加入していますが、夫の場合は制度に加入してもしなくても良いとのことです。しくみがよくわかりません。加入したほうが良いでしょうか?
今宮美紀さん(仮名)のプロフィール
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これから長期の運用を考えるなら、選択型DCがオススメ
1.選択型DC(確定拠出年金)は企業型DCのひとつの形態です
今宮さん、こんにちは。ご主人様の会社で来年から選択制確定拠出年金が導入されるとのこと。多くの企業で企業年金の制度は変化しつつあり、確定拠出年金(Defined Contribution Plan以下、DC)の導入も着々と浸透しています。企業年金は将来の老後資金に直結する話ですので、会社の制度を知ることは非常に重要です。
美紀さんが会社で加入している確定拠出年金は「企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)」といって、従業員の方には加入するかしないかの選択肢はなく、全員強制加入のDCです。一方「選択制確定拠出年金(以下、選択制DC)」は企業としてDCの制度は導入しますが、加入するかしないかの選択肢が従業員にあります。企業型DCのひとつの形態と思っていただければ良いでしょう。この場合は、同じ会社の従業員でも加入している方もいれば加入していない方もいることになります。
では加入する場合としない場合の違いを見ていきましょう。
会社が設定した選択部分(下図、黄色い部分)につき、給与受け取りを選択した従業員は、黄色い部分はそのまま給与となり、「前払い退職金」という位置づけとなります。一方、DC掛金を選択した従業員は、黄色い部分を掛金として拠出するので給与とはみなされません。
【選択制DCのしくみ】
2.メリットとデメリットは表裏一体です
では、選択の違いにどのような影響があるか見ていきましょう。
給与の一部をDCの掛金として拠出する場合、この掛金は給与とみなされないため、給与として受け取るよりも給与が少なくなり、その結果、所得税や住民税が安くなります。
例)40歳未満、掛金2万円を拠出、課税される所得税率が10%の場合
所得税:2万円×10%=2,000円
住民税:2万円×10%=2,000円が、
合計、月に4,000円(年に48,000円)の節税となります。
また会社員であれば、毎月給与から社会保険料も天引きされています。これらは、給与額に応じて区分されている等級ごとの標準報酬に保険料率を掛けて算定されます。つまり給与が下がれば等級も下がり、社会保険料も安くなります。
上の例の場合、社会保険料負担率が14.4%(厚生年金保険料率:9.15%、健康保険料率:4.95%、雇用保険料率:0.3%)とすると、社会保険料:2万円×14.4%=2,880円(年に34,560円)の負担減となります。
DCは20年、30年という長期にわたる加入となるため、現役時代に税や社会保険料負担が数百万円単位で軽減されることは大きなメリットといえるでしょう。
さらに、DCで形成した資産を60歳以降70歳までの間に一時金として受け取れば、退職所得控除を適用して大きな税の優遇を受けることも可能ですが、前払い退職金の場合はそれがありません。税や社会保険料の軽減という点では掛金として選択するほうが有利と言えそうです。
しかし等級が下がるということは、一方で社会保険における給付も小さくなるということ。この場合の給付というのは、厚生年金からの給付である各種年金や、健康保険からの給付である出産手当金や傷病手当金、雇用保険からの給付である育児休業給付金や失業給付などさまざまな給付金です。とはいうものの、出産や育児、傷病などの給付金はすべての従業員が受け取るとは限りません。どなたにもかかわるところで影響が大きいのはやはり年金ということになるでしょう。
3.総合的な判断で選択。ただしDCを選択するなら運用してこそ意味が
給与受け取りか掛金拠出かは一長一短あります。往々にしてありがちなのが、給与受け取りで前払い退職金掛金の代わりに貯蓄するでもなく、何となく生活費に消えているというパターン。これは一番避けたいことです。やはり計画的に資産形成していくべきです。
そこでどちらを選択するかのもうひとつ重要な観点として運用があります。DCの場合、運用期間中の利益は非課税ですが、前払い退職金の分を通常の証券口座で運用したら、利益には原則課税されます。運用することを考えるのであれば、DCが有利です。
ただし選択制DCに限ったことではありませんが、DCに加入したものの「運用商品が良く分からないから」「元本確保は安心だから」といった理由で、100%元本確保型商品(定期預金、保険商品など)にしている方が見られます。これですと運用益といっても現在の金利情勢からすれば、せいぜい0.05%程度でしょう。これではDCのメリットを十分享受できず非常にもったいないことです。
もちろん、ハイリスクな運用をしろということではありません。たとえば3%程度の運用益であれば、それほどハイリスクな運用をしなくても実現可能な数字です。これが複利で運用されますから20年、30年にわたる運用では大きな差となります。運用益が1万円であっても10円であっても非課税ですから、DCの恩恵をより享受するためには運用して増やすことを前提としないと意味がありません。選択制DCは、所得控除による税・保険料負担軽減と、運用による資産増の合わせ技で効果はより大きなものとなります。
昨今、年金支給開始年齢繰下げや給付縮小の検討なども取りざたされています。したがって現在の負担や給付の水準で試算しても将来的に必ずしも予想通りにはならないかもしれません。ただ、その場合でも給付水準が現在より好転するとは考えにくいので、今の現役世代の方は給付に頼るだけではなく、自助努力が必須であることは間違いありません。
以上のような観点から、個人的には掛金を拠出し、運用して増やすことを選択したほうが良いのではと考えます。ただ、「60歳まで引き出せない資産よりも、今、現金がほしい」という方もいらっしゃるかもしれません。そこはライフプランも踏まえて検討すると良いでしょう。
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