国民年金の付加保険料が気になっています。


今回、回答いただく先生は…
森田 和子先生(もりた かずこ) プロフィール
  • 国民年金+付加保険料で老後の年金が増えます。
  • 国民年金に上乗せできる国民年金基金。
  • イデコなら運用して老後資金作りができます。
  • 国が作った退職金制度もあります。

  田所 快さん(仮名 32歳 自営業)のご相談

会社を辞めて独立したので国民年金に加入しています。会社員よりも年金が少ないと聞いているので、老後のためにお金を貯めていかなければと考えています。
国民年金の案内に書かれていた「付加保険料」が気にはなっているのですが、数百円払っても大した違いにならないだろうと思い、払っていません。払った方がいいでしょうか。

田所 快さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 職業
本人(32歳)自営業
妻(33歳)自営業

付加保険料は2年で元が取れる有利な制度ですが、上乗せできる額は大きくありません。老後資金作りができる他の制度も併せて検討しましょう。

こんにちは、田所さん。ご相談ありがとうございます。忙しい毎日の中で老後の貯蓄は後回しになりがちなので、この機会にしっかりと考えておきたいですね。毎月数百円では頼りなく思えるかもしれませんが、付加保険料は「2年で元が取れる」と言われる有利な制度です。自営業の方が老後資金を増やす方法は他にもあるので、一つずつ確認していきましょう。

国民年金+付加保険料で老後の基礎年金が増えます

田所さんは自営業者として国民年金に加入していますね。国民年金には20歳から60歳まで40年間加入して保険料を納める義務があり、会社員時代に加入していた厚生年金保険にも国民年金の部分が含まれています
40年間全て保険料を納めると65歳から受け取る老齢基礎年金の金額は満額になり、令和2年度の金額では781,700円です。保険料を納めない等の月があれば、その月数の割合に応じて年金額は減額されます。
付加保険料400円を毎月の保険料に上乗せして納めると、老齢基礎年金には以下で計算される付加年金が上乗せされます。

付加年金額=200円×付加保険料納付月数

例えば、付加保険料を10年間納めると、納めた付加保険料の合計は400円×120月=48,000円になります。65歳から老齢基礎年金を受給するときには、200円×120月=24,000円の付加年金が上乗せされます。納めた付加保険料と受け取る付加年金が2年目には同じになるので、「2年で元が取れる」と言われるのがわかりますね。

国民年金に上乗せできる国民年金基金

田所さんは60歳になるまでに28年あります。この期間の全てで付加保険料を納めたとしても年金にプラスされるのは67,200円です。もっと大きく年金を増やしたいのであれば、国民年金基金を検討してみましょう。

国民年金基金は、国民年金に加入する自営業者の方などが、上乗せの年金作りをできる制度です。加入すると付加保険料を納めることはできなくなりますが、これは、国民年金基金のベースとなる部分には付加年金相当が含まれているためです。

いくつかの種類の年金を複数組み合わせることができますが、一口目は必ず65歳開始の終身年金になります。現在32歳の田所さんであれば、この1口目の掛金は月10,540円(保障期間なしB型の場合)となり、60歳まで掛金を支払えば65歳から毎年24万円の年金を一生涯受け取ります。終身年金の他に、一定期間受け取る確定年金があり、受け取り開始年齢や受取期間などが異なる複数のタイプの年金を組み合わせることができます。
掛金は月68,000円が上限となり、全額が社会保険料控除の対象になるので、所得税が軽減されるメリットがあります。

イデコなら運用して老後資金作りができます

60歳までは長い期間があるので、運用して増やしたいと考えるのであれば、国民年金基金ではなく、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)の利用を検討してもよいでしょう。

イデコでは、自分で運用商品を決めることによって運用するので、運用によって受け取る金額が変わります。資産を大きく増やせる可能性もあれば、反対に、資産を減らす可能性もあるので、投資について学ぶ必要があります。
自営業の方がイデコを利用する場合の掛金は、月5,000円~68,000円で、加入後の増額・減額が可能です。掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、やはり税金面で優遇されています。
イデコは付加保険料、国民年金基金と併用することができますが、これら3つの掛金を合わせて月額68,000円までが上限となります。

国が作った退職金制度もあります

国民年金基金や確定拠出年金は、老後の年金の上乗せを目的としているため、基本的には60歳、65歳などの決められた年齢よりも前に資金を引き出すことはできません。収入が不安定になる可能性のある自営業にとって、この点が不安に感じられますね。

老後の資金作りはしたいけれど、60歳前にお金が必要になる場合にも備えたいのであれば、小規模企業共済も検討してみましょう。小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度であり、国が作った退職金制度と言えます。
掛金は月1,000~70,000円で、加入後の増額・減額ができ、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となるので、税金面で優遇されています。付加保険料、国民年金基金、イデコとの併用の制限がないので、それらとは別に加入することもできます。
満期はなく、退職した時や廃業した時に解約手当金(共済金)を受け取ります。また、事業資金で困った時や災害で困った時には、低金利の貸付制度を利用できるメリットがあります。

今回ご紹介した国民年金基金・イデコ・小規模企業共済は、いずれも掛金を支払っている時、老後資金を受け取るときのどちらも税金面で優遇されています。組み合わせて利用することも、後から増やすこともできるので、まずは無理のない範囲で始めてみるとよいのではないでしょうか。

国民年金基金
付加保険料との併用 不可
年齢 20歳以上60歳未満
掛金 ~68,000円
※下限はプラン・年齢による
※社会保険料控除の対象
受け取り 65歳以降の年金
※他の年齢開始も組合せ可能
※公的年金等控除の対象
確定拠出年金
付加保険料との併用
年齢 60歳未満
※一部65歳未満に引き上げの予定
掛金 5,000円~68,000円
※小規模企業共済等掛金控除の対象
受け取り 原則60歳以降、年金または一時金
※年金は公的年金等控除、一時金は退職所得控除の対象
小規模企業共済
付加保険料との併用
年齢 条件なし
掛金 1,000円~70,000円
※小規模企業共済等掛金控除の対象
受け取り 退職・廃業時等
※請求事由・年齢により、公的年金等控除、退職所得控除等の対象

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