『マイナ保険証』に切り替えるためにはどのような手続きが必要ですか。またメリットはどのようなものか知りたいです。


今回、回答いただく先生は…
 
髙柳 万里先生(たかやなぎ まり) プロフィール
  • マイナ保険証への切り替えには経過措置期間があります
  • 高額療養費制度を適用するための手続きが不要となるなどのメリットがあります
  • 患者本人のみでなく、医療従事者の業務負担軽減につながります

田中 海斗さん(仮名 32歳)のご相談

2024年12月に現行の健康保険証が廃止されるとニュースで聞いたのですが、マイナ保険証に切り替えるにはどのような手続きが必要でしょうか。仕事で多忙の為手続きが間に合わない場合、現在の健康保険証が使えなくなるのでは、と不安です。普段はなるべくマイナンバーカードを持ち歩きたくないのですが、万が一紛失した場合の手続きなど教えていただけると助かります。また、従来の健康保険証と比較して、マイナ保険証になることでどのようなメリットがあるのか知りたいです。

ご相談者プロフィール

家族構成 状況
田中 海斗さん(32歳 会社員) 健康保険被保険者証あり
保険者名称:全国健康保険協会(協会けんぽ)埼玉支部
マイナンバーカード取得済み

医療機関窓口のカードリーダー等でマイナ保険証の利用登録ができます。医療情報の共有化により適切な医療がうけられる、高額療養費制度適用の手続きが不要となるなどのメリットがあります。

田中さん、この度はご相談ありがとうございます。

田中さんと同様に、12月から現行の健康保険証が使えなくなるのでは、と不安に感じていらっしゃる方が少なくありませんが、すぐに使えなくなるわけではありません。
2024年12月2日から、現行の健康保険証の新規発行が停止されることが決定していますが、現在使用している保険証は、その有効期限(最長2025年12月1日)まで使用可能となっています。

マイナ保険証とは

マイナンバーカードを健康保険証として使えるように利用登録したものを、『マイナ保険証』と言います。

利用登録はどうする?

マイナンバーカードの健康保険証利用登録手続きについては、いくつかの方法があります。ちなみに筆者は薬局のカードリーダーにて手続きしましたが、スタッフの方に確認しながら、5分程度で手続きが完了しました。

  1. ① 所定の医療機関や薬局等
    『マイナ受付』のステッカーやポスターが貼ってある医療機関・薬局で保険証利用登録が可能です
  2. ② セブン銀行ATM
  3. ③ マイナポータル

※マイナポータルとは

マイナポータルとは、政府が運営する行政手続きのオンライン窓口です。
子育てや介護などのオンライン申請や、行政機関等が保有するご自身の情報の確認や、行政機関等からのお知らせ通知の受信などのサービスを提供しているものです。

マイナ保険証のおもなメリット3つ

  1. ① 本人の同意のもと、医療機関や薬局で薬剤情報を確認できる

    マイナ保険証を利用して医療機関等に受診した際に、本人の薬の服用歴や過去の特定検診の情報などの提供に同意すると、医師や薬剤師からより多くの種類の正確な情報に基づいた総合的な診断や、重複する投薬を回避した適切な処方を受けることができます。
  2. ② 医療機関・薬局で限度額以上の高額な窓口負担が不要になる

    医療機関などで高額な医療費が発生する場合でも、マイナ保険証を利用することで、患者本人が事前に『限度額適用認定証※』の書類申請手続きをする必要がなくなります。筆者の経験ですが、数年前に左目の網膜剥離にて緊急手術となった際に、眼科で診察を受けて即日入院したため、事前の限度額適用認定証の申請手続きが間に合いませんでした。もちろん、限度額適用認定証の医療機関への提示が間に合わなかった場合、所定の自己負担限度額を超えた部分については、後日高額療養費の申請により払い戻されますが、通常3か月以上かかります。実際に筆者の場合、払い戻されるまでに約3か月半かかりました。体調が万全ではない時の書類手続き等の負担に加えて、高額な医療費を支払うことは、一時的とはいえ家計への負担となりますので、高額療養費制度の適用についてはマイナ保険証を利用するメリットはあるのではと感じます。

※限度額適用認定証とは

限度額適用認定証とは、医療機関等の窓口での支払いが高額になる場合に、自己負担限度額を超える支払いを免除するために医療機関へ提出するものです。医療費が高額になりそうな場合は、事前にご自身の健康保険の保険者に限度額適用認定証の発行を申請の上、入院前までに準備しておくことが望ましいとされています。

※2024年12月現在、日本全国の医療機関や調剤薬局でマイナ保険証が100%使用できる環境とは言えないため、マイナ保険証を登録後も限度額適用認定証等が必要なケースがありますのでご注意ください。

  1. ③ 確定申告書作成時に、医療費通知情報がデータで連携できる
    (令和3年分所得税の確定申告/令和3年9月以降の診療分から)

    マイナポータルから保険医療を受けた記録が参照できるため、領収証を保管・提出する必要がなく、医療費控除申請の手続きがスムーズになります。
    従来の手続きでは、医療費控除を受けるためには、医療費の領収書から『医療費控除の明細書』を作成し、確定申告時に添付する必要があった為、一年分の医療費の領収書を管理する必要がありました。しかしこれからは、マイナポータルからe-Taxに連携することで、確定申告時の医療費控除申請がスムーズになります。

マイナンバーカードを紛失したらどうする?

マイナンバーカードを紛失した場合、次の手順で手続きをしましょう。

  1. 1.マイナンバーカードの機能停止を行う

    マイナンバー総合フリーダイヤル0120-95-0178に電話し、音声ガイダンス2番を選択し、紛失の為一時停止依頼をしましょう。
    ※24時間365日対応で通話料無料、おもな外国語にも対応。
  2. 2.警察に遺失届を提出する

    ※遺失物届の受理番号を控えておきましょう。
  3. 3.市区町村窓口で再発行の手続きを行う

    ※再発行の手数料がかかりますが、盗難などの際は手数料がかからないケースもあります。

なお、機能停止後にマイナンバーカードが見つかった場合、機能停止解除の手続きも可能です。その際はマイナンバーカード持参のうえ、お住まいの地域の市区町村窓口にてお手続きください。

紛失したら悪用されるのでは?と田中さんが心配されるお気持ちはわかりますが、そもそもマイナンバーカードに搭載されているICチップには、税や年金などのプライバシー性の高い情報は記録されていません。健康保険証として利用する際も、ご自身の特定検診結果や薬剤情報がICチップに入る事はありません。また、マイナンバー制度では、情報を『一元管理』することはありません。今まで各機関で管理していた個人情報は、引き続きその機関が管理する『分散管理』というしくみが採用されているため、まとめて情報が洩れるリスクは低いとされています。その他にも、不正に情報を盗みだそうとするとICチップが壊れるしくみなど、様々なセキュリティ対策が施されています。

令和6年12月2日以降の受診方法は?

現在お持ちの健康保険証については、令和7年12月1日まで使用可能です。
令和7年12月2日以降の受診方法につきましては、医療機関がオンライン資格確認等システム※を導入しているかどうかにより提示する内容が異なりますのでご注意ください。

オンライン資格確認等システムとは?

医療機関等では、患者が加入している医療保険を確認する必要があり、この作業を『資格確認』といいます。従来の方法では、患者の健康保険証を参照しながら記号・番号・氏名等を所定のシステムに手入力するものでしたが、手間も時間もかかる点が指摘されていました。オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができることをいいます。

【オンライン資格確認等システム導入済医療機関等の場合】
  • ・『マイナ保険証』または『資格確認書』で受診可能
【オンライン資格確認等システムを導入していない医療機関等の場合】
  • ・『マイナ保険証』+マイナポータルの資格情報画面(スマートフォン)
  • ・『マイナ保険証』+『資格情報のお知らせ』
  • ・『資格確認書※』

上記いずれかを持参いただくことで、医療機関を受診することができます。

※資格確認書とは

オンライン資格確認を受けることができない方のためのものです。
記載内容は、氏名・生年月日・被保険者記号・番号・保険者情報等です。資格確認書は、医療機関で保険診療を受ける際に健康保険の資格を確認することができますが、医療機関や薬局に過去の薬剤情報の提供を行うことはできません。原則として、必要な方には申請不要で資格確認書が医療保険者から交付されますが、高齢の方や障害のある方等、一部申請が必要なケースもあります。

利用可能期間のイメージ

持続可能な医療保険制度のために

マイナ保険証によるオンライン資格確認により、迅速な本人確認が可能となり、保険証の不正利用やなりすましを防止することが可能となります。医療機関等の業務効率化を図る事で、医療従事者の事務手続きの負担を軽減することが期待されています。数年前のコロナ禍では、医療従事者の方々の負担が重すぎる点がしばしば話題になりましたが、医療従事者の方々の負担を軽減することは、私たちの大切な医療保険制度を守ることにつながります。

健康保険証に引き続き、2025年3月以降は運転免許証と一体化されるマイナンバーカード。新たなシステムが次々に導入され、一般的にそのしくみが認知されるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。今のところ運転免許証については、現行のものがなくなる予定はありませんが、私たちの生活に密接に関わってくるマイナンバーカードに関するニュースには、引き続き注目したいものですね。

(※2024年12月時点の情報です。)

マイナンバー導入で、私たちに影響はあるのでしょうか?
『患者申出療養』とはなんでしょうか。いわゆる『先進医療』とはどう違うのでしょうか。
いわゆる「おひとり様」で、老後が心配です。