わが家の大黒柱が病気に!将来の不安にどう対処すればいい?
市田 雅良先生 (いちだ まさよし) プロフィール |
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浅間 愛子さん(仮名 36歳 専業主婦)のご相談
昨年夫が病気で入院しました。退院後、一応は仕事に復帰したのですが、完治には長期を要するということです。仕事は、会社側の無理がないようにとの配慮で主任から平社員へと異動があり、その変動に不況も加わって、給料やボーナスの査定が下がり収入が半減してしまいました。現在は貯蓄を取り崩しながらの生活で、小さい子を抱えていることもあり、このままでは将来が不安です。
とりあえず対策に、2台ある車を1台に減らす、住宅ローンの月額返済額の減額検討、私がパート勤めに出る、夫が給料アップのために転職する・・・などを考えてみたのですが、何かいい解決方法はないでしょうか?
浅間さんのプロフィール 36歳、主婦。会社員の夫(40歳)、公立小1年生の長男(7歳)、乳幼児の二男(2歳)と同居中。 家計の状況
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住宅ローンの割合が高いので荒療治も必要収入が減ったなりに切りつめ、パートも検討
キャッシュフロー表をつくり原因を見直しましょう
浅間さんの今後の収入と支出、そして貯蓄残高の推移を見るためにキャッシュフロー表を作成しましょう。
キャッシュフローから、将来的に貯蓄残高がマイナスになり家計破綻となります。その原因を探ってみましょう。
1.子供が大きくなるにつれ、教育関連費用は増えていきます。
補助的教育費である“習い事”は、子供の可能性を伸ばすためにどんどん行かせてやりたいものでしょう。しかし、収入が伸び悩む家計の現状を認識し、本人のやる気とのバランスをとりながらよく考えなければなりません。
2.住宅ローンの収入に占める割合は38.39%となっています。
収入における返済の割合は、25%以内が青信号で安全圏、30%以下では黄信号、30%を超えたら赤信号といわれています。収入をアップして割合を少なくする、もしくは返済額を少なくして割合を少なくするなどの対策が考えられます。 例えば、収入アップが可能で住宅ローンの返済割合を25%以内の青信号にしたい場合だと、 ローン返済124万円÷0.25なので収入の確保は496万円/年となり、今の収入との差額の496万円-323万円=173万円 が必要になります。
3.基本生活費の内容をチェックする必要がありそうです。
・車両関連費 | ・・・ | 2台保有の車を1台に集約した場合の節約額ですが、浅間さんにお聞きしたところ、約1万円のガソリン代が節約できるという回答でした。さらに、車通勤ではなく電車通勤にすれば通勤費は全額出るということですし、また車検費用と自動車税も1台の負担で済みますので、これは是非実行していきたいところです。 |
・ 食 費 | ・・・ | この中にある生協の支払い15,000円について考えて見ます。浅間さんが生協を利用されている理由は、食事の買い物にかける時間の節約ということです。この買い物にかける時間をどう考えるのかということですが、「こまめにセールを利用することで、経済的に節約する」のか「買い物にかける時間をお金で買う」のかということです。「こまめにかつ計画的に買い物することは、労働で得る収入に値する」と、自称プロの主婦というかたのお話を聞いたことがあります。個人の性格や状況によって違いがあるとは思うのですが、一度実践されてみてはいかがでしょうか・・・ |
・ 保 険 | ・・・ | 万が一の保障である保険ですが、必要保障額は満たされていないようです。保障の対策は必要です。家計が軌道に乗り始めたら、大黒柱である祐一さんには、万が一残された遺族が生活に困らない金額を見積もり、その保障額に見合う保険に加入することをおすすめします。 |
・収入の対策 | ・・・ | 妻の愛子さんはパートの経験がおありだということです。小さい子供を抱えてのパート勤めは大変ですが、子供に目を十分行き届かせることを念頭において、パートで収入アップをすることは家計改善に効果があります。ご夫婦で子育てと仕事の両立について十分に話し合い、家事の協力関係を作り上げてください。 また、祐一さんはもっと条件のいいところに転職をとお考えのようですが、ご自身の病気のことを考えると無理はできないということなので、転職はあまりおすすめできません。 |
・ 今後十年も経たずに貯蓄がマイナスになり家計破綻します。「収入が減ったなら減ったなりの支出に合わす」を実行してください。 |
現在の住宅ローン負担をどうする
この超低金利時代が続き、貯蓄をしていても利子の変動にはそれほど気を使わなくなりました。でもローン金利は融資元本が高額なだけに、わずかの金利の変動でも返済額に影響が出ますので、住宅ローンを抱えている身であれば金利の動向はとても気になります。金利上昇がまもなくあるのでは?といった不安が増しています。
ここで、少し金利のことを簡単に学んでおきましょう。住宅ローンの金利、つまり「長期金利」は日銀の金融政策会合で決定する「短期金利」の影響を受けます。その為、日銀が短期金利を上げると、長期金利も連動して上がるというのが、基本的な仕組みです。現在の金融市場では、日銀が短期金利を下げるだろうという意見はみあたりません。むしろ上昇はいつでどれぐらいの幅で上げるかが焦点になってきており、物価の上昇や日本の経済力の力強さなどで決まります。しかし金利上昇がいつあるのかは08年07月時点では不透明です。以上を踏まえて、金利のことに敏感になりましょう。
金利の変動リスクを理解し、安全かつ有利な返済をしたいものです。住宅ローン返済3年目を迎えて、変動または固定の選択時期に来ます。現在の金利水準において長期的に固定で返済していけるようなローンを選ぶのがベストです。そうなると変動型よりも完全固定型か、10年固定あたりの比較的長期のタイプが安全といえるでしょう。
● 家計における今後の住宅ローン返済負担解決に向けて、難易度順で考える。
<難易度 低い>
・月額返済額が負担であれば、返済額軽減を検討する。
多くの銀行では、返済期間の最長を35年としています。浅間さんは当初25年を選択されていましたので、35年に延ばすことを検討してもらえる可能性は高いと思います。その場合、月々の返済額は7.2万円が5.3万円程度に減り、ボーナス月では26.6万円が20万円程度に減ると見積もれます。年間返済額は124万円が93万円程度になり年間にして30万円程度の負担が軽くなります。
ただしデメリットとして、返済年齢が60歳から73歳までとなります。ただでさえ年金だけで生活ができなくなってきている時代に、ローン負担が覆いかぶさるのは、決していい話しではありません。
<難易度 高い>
・持ち家をあきらめ、賃貸に移り住む。
浅間さんのご近所では、賃貸マンションのファミリータイプのお家賃はいくらくらいでしょうか? 今のローン返済である124万円/年間程度を目安に探せばありますか? 共益費込みで不可能な額とはいえないと思います。
今の家の処分方法は、
ア.賃貸に出す場合。賃貸に出して10万円強の家賃収入を得る。デメリットとして借り手が見つからなければ家賃収入ゼロとなります。
イ.居住して3年が経つので当然中古物件扱いとなりますが、売却する場合は売却代金でローン残高がどこまで相殺できるかがポイントとなります。
以上は極端な例を出してみましが、どちらもライフスタイルの大幅な変更で痛みを伴います。また、これ以外に親に同居してもらい親にもローン負担をしてもらう方法などもあります。いずれにしても家計の健全化に向けて、収入に対する住宅ローンの割合が高いということがネックになっています。浅間さんに合った条件はどれでしょうか? ともかく今の現状を分析し、子供さんが小さいうちに対策を実行しておきたいものです。
ライフプランで最も優先すべきことはなにか
住宅を購入したからには、ローン破綻しないように、状況変化があるごとに家計の見直しが大事です。
一般論として、60歳又はリタイアしようと思う年齢までに返済が終わるように心掛けること。緊急事態に対応できる貯蓄をもっておくこと、子供の教育や老後などのための準備も平行して考えておくことが大切となります。
浅間家では、難しいことにご夫婦ともに持病をかかえておられます。3年前の住宅取得時には考えられないような状況が、今起こっているのですから、最優先課題を箇条書きにし、ライフプランの全体像を見渡しながら、いくつかのシミュレーションをして実行に移されるのがいいと思われます。