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妻名義のローン返済を夫が肩代わりできるでしょうか?
市田 雅良先生 (いちだ まさよし) プロフィール |
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飯田 博さん(仮名)のご相談
昨年、結婚と同時にマンションを購入したのですが、夫に事情があり妻の名義で単独ローンを組み購入しました。 でも貯金が少なく、出産で妻が退職すれば収入が減り、家計破綻になることが心配です。何より妻名義になっているローン返済をどうすればいいか悩んでいます。
現在、必要な時だけレンタカーを借りて実家に帰っています。できれば子供は二人欲しいと考えているので、マイカーがあればと思うのですが、出産育児、住宅ローンが優先なので、家計が苦しくなるようなら車はあきらめてもいいと考えています。
それから夫の職種(IT関連)は、収入に不安定な面がある他、退職金も期待できないと聞かされ、夫の定年時の60歳に1000万円程度は貯蓄しておきたいと思い、投資信託を始めたばかりです。 不安ばかりが先にたちますが、どのように考えていけばいいのかアドバイスをお願いいたします。
飯田 博さんのプロフィール
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貯蓄残高1000万円を意識したライフプラン
☆飯田家の現状と家計の特徴
1. 名義人と住宅ローン返済の関連性。贈与税に気をつけて!
金融機関の住宅ローンの名義人は妻の明子さんですから、妻が出産により仕事を休職又は退職した場合には、妻は収入からローンが払えなくなります。でも、妻の支払い義務がなくなるわけではありません。そのため、以後の返済は夫が肩代わりするという流れになりますが、これは贈与税を課される可能性があります。つまり、不動産の名義人である妻の返済を夫が返済するということは、夫から妻への贈与とみなされる可能性が出てきます。夫婦間における生活費の資金移動と考え、無意識に肩代わりしているケースが多いようですが、厳密には課税対象となるので注意が必要です。
○ 贈与税の問題
そこで、妻名義のローン返済を夫が払う場合の問題点の対策として、以下が考えられます。
- 贈与税をきちんと払う方法
- 名義を夫の名義に変更する方法、(譲渡所得となりますが、購入して間がないので、所得は出ないか、出ても大きな額ではないと思われます。専門家の税理士等などにご相談ください)
- 住宅ローンそのものを妻から夫へ借替るという方法。これは、夫の返済余力が十分にあり、かつ金融機関の承諾が必要になります。
以上の方法が考えられます。検証してみましょう。
1.の贈与税納付は、家計に余裕がなく大変なことになります。でも、贈与税には「基礎控除110万円」というのがあります。飯田さんの場合をこの贈与税計算に当てはめてみると、年間ローン返済が75万円なので基礎控除の範囲内となり、納付税額は発生しません。
ただし、明子さんがこの後職場に復帰せず専業主婦になった場合には、「毎年75万円贈与する」と約束したことになり、年間110万円控除以内だとしても「連年贈与契約」とみなされ、その時点で「全体の金額(この場合融資残額)」を受取る権利を受けたとみなされますので注意が必要です。
ちなみに1.の方法の場合は、繰り上げ返済のために妻が支出した金額は妻から夫の贈与又は貸付になりますので、簡単なものでよいですから贈与又は貸付の書類を作成しておいてください。
2.と3.は、返済人と名義人が同じとなる点ではスッキリします。でも、ともに税金面ではあまり気にしなくてもいいところですが登記手数料がかかるので、資金的余裕のない時期としてはあまりお勧めではありません。(専門家の税理士等などにご相談してみてください)
○ 妻の「住宅ローン控除」の適用は、妻から夫への付け替えは不可
妻から夫が持分を取得、つまり夫が妻の名義持分を売買で取得したということになる場合の「住宅ローン控除」の適用の付け替えも可能かという点についてですが、住宅ローン控除の適用要件で「住宅について生計を一にする配偶者などの特別な関係にある人から取得したものでないこと」となっています。つまり、夫が妻から買った住宅の持分は、生計を一にする配偶者から買ったものに該当します。したがって、夫が妻から持分を買ってそのローンを背負ったとしても、その分の住宅ローン控除は適用できないのです。
ただし、住宅購入時より妻が会社を辞める予定であった場合には、ローン残高全体に対して贈与とみなされ、贈与税が生じる可能性もあります。
もっとも、明子さんが申請していた「ローン控除」については、給与収入にかかる所得税が無くなればローン控除は使えなくなります。つまり、所得税納付額がない為、還付額が発生しないということです。
2.生活費と貯蓄のバランスと問題点とその解決
○ 問題点の整理
<現状のキャッシュフロー表>1.では、明子さんが産休に入る2008年~2018年を予定にいれると、その間は年間収支が赤字になり、貯蓄の取り崩しで底を付くと予想されます。働き出されても子どもの教育資金がかさみ、2033年には貯蓄残高が赤字となり家計破綻となることが予想されます。とても希望される60歳時1000万円の貯蓄はできないことになります。
飯田家の今のライフスタイルは「DINKS(ディンクス:ダブル・インカム・ノー・キッズ)」と呼ばれていて、子どもがいない分それなりに収入があり、それなりに消費生活を楽しむスタイルといわれています。でも、飯田家は次のステップで子供を持ちファミリーを形成していくことを希望されています。共働きファミリーでは、皆の責任が増すことにより今までとは違った消費支出が出てくるので、生活費と貯蓄のバランスをうまく取っていくことが必要になります。今後のライフイベントを予想し、うまくクリアしていきたいものです。
○ 解決への道
ライフプランを考える上でポイントが3つあります。
これから述べる飯田さんのライフプランを変更するポイントは、あくまでも数字上の定量的分析から解決策を述べるもので、心の問題である定性的分析を十分吟味した結果ではないことをご了解ください。
子どもは2人希望ではなく1人希望に変更できますか? 2人では家計破綻が懸念されます。
○解決策2
車は現在のように必要なときにレンタカーを借りるというのを続けるか、維持費が少ない軽自動車に抑えておくことなどをご検討ください。
解決策を実行した場合の効果として、60歳時の貯蓄残高が1000万円を超える予測が出来ます。また車関連費用は0としました。それから、第一子の子育てに5年間の休職は必要と考えました。生まれて間もない内の親子のスキンシップは、その子の人生に大きな影響を与えるといわれています。休職復帰後の収入予測は3割程度落ちるものとして入力しました。その後はご夫婦二人で力を合わせて、自分たちの幸せ、家族の幸せに向かってライフプランを充実させてください。
3. 保障額の検討
収 入 | 支 出 | 差し引き不足額 | |||
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遺族年金 | 1,357万円 | 基本生活費 | 8,568万円 | ||
妻の収入 | 4,248万円 | 住宅関連費 | 969万円 | 不足額 1.-2. | 2,188万円 |
公的年金 | 2,877万円 | 子供関連費 | 葬儀費用等 | 600万円 | |
個人年金 | — | その他費用 | 1,133万円 | ||
合 計1. | 8,482万円 | 合 計2. | 10,670万円 | 不足額合計 | 2,788万円 |
ご加入の生命保険(ご夫婦分) | ||||||||
(1) | (2) | (3) | (4) | (5) | (6) | |||
加入保険会社 | TKA生命 | SO生命 | AIU生命 | SEC損保 | ZR共済 | ZR共済 | ||
被保険者 | 博 | 博 | 博 | 博 | 明子 | 明子 | ||
契約.者 | 博 | 博 | 博 | 博 | 明子 | 明子 | ||
契約目 | H18.7.1 | H18.7.1 | H18.6.1 | H18.6.1 | H16.12.29 | H16.12.30 | ||
契約年齢 | 28歳 | 28歳 | 28歳 | 28歳 | 23歳 | 33歳 | ||
満期・満了年齢 | 60歳 | 60歳 | 38歳 | 終身 | 58歳 | 43歳 | ||
更新期間 | なし | なし | なし | なし | なし | 10年 | ||
入院特約期間 | 終身 | 43歳 | ||||||
保険種類 | 定期保険 | 変額終身 | 医療保険 | がん保険 | 終身共済 | 医療共済 | ||
死亡保険金 | 定期保険 | 300万円 | 10万円 | |||||
年金 | 15万円 | |||||||
養老保険 | ||||||||
終身保険 | 300万円 | |||||||
合計保険金 | 15万円 | 300万円 | 300万円 | 10万円 | ||||
満期保険 | ||||||||
個人年金 | ||||||||
医療/日/災害入院 | 3,000円 | 5,000円 | ||||||
医療/日/病気人院 | 5,000円 | |||||||
医療/日/ガン入院 | 10,000円 | |||||||
医療/ガン/一時金 | 50万円 | |||||||
払込方法 | 月払 | 月払 | 月払 | 月払 | 月払 | 月払 | ||
払込期間 | 28歳~58歳 | 28歳~60歳 | 28歳~38歳 | 28歳~39歳 | 28歳~58歳 | 33歳~43歳 | ||
保険料 | 4,635円 | 4,323円 | 2,210円 | 1,390円 | 6,615円 | 1,556円 |
一般的に見れば、お互いに死亡保険加入の保障は少ないといえます。そこで表のように万が一の差し引き不足額を計算してみると、2,788万円となります。実際にそれほど不足するのかといえば、共働きなので、残された配偶者は働いて何とか暮らしていけるので、この不足額に見合う保障に入らなければならないということはないと思いますが・・・、今見直す必要はないと考えられますがどうでしょうか。
ただし、家族が増えれば責任が増えます。今の死亡保障では責任が果たせるものではありません。かといって、どのような保険に加入すればいいのかというアドバイスについてですが、今すぐ実行されるべき対策ではなく、家族が増えたとき(3人家族?4人家族?)に考えればいいと思われます。保障額の対策は、子供が誕生し収支バランスが取れるまで見直しは「お預け」にしてもいいのではないでしょうか。
4. まとめ
飯田さんは、ローンの返済方法で誰が払うのかという問題に直面されていますが、贈与にならないように筋道を立てて問題を切り抜けてみてください。そんなに難しいことではないと思いますよ。
また、キャッシュフローの数字から問題点を見てアドバイスしていますが、それはあくまでも数字の問題だけです。飯田家のバランスのいいライフプランのためには、数字から見るだけではなく、気持ちの問題を組み入れることも重要です。今回のアドバイスを参考に、ご夫婦でじっくり将来のライフプランを話し合ってみてください。